44・どうやら食べられないようです
うーん、どんな調理方法にしようか…
シンプルにゆで卵?目玉焼きも捨て難い。本当は卵がけご飯が一番だが何の卵か分からないのに生は危ないだろう…
迷う…
突然「駄目よ、食べちゃあ」そんな声が頭に響く。「誰だ」と声を出そうとしたが声が出ない。まさか、これは…
「久しぶりね、私よ。メーティスよ。その卵はわたくしからの贈り物なの。実はね、あの後お父様に貴女の事がバレちゃって怒られちゃったの…それでね、力をすこーし制御されちゃって…なかなか貴女の様子が見れない状態なのよ。でも、気になるじゃない?貴女がどんな選択をするか、楽しみなのよ。だからねぇ〜わたくしの眷属が産んだ卵を貴女に託すわ。その子を通して、貴女をたまに見せて頂戴。卵に貴女の魔力を注げば、生まれてくるわよ〜勿論貴女が母親よ。では、その子をよろしくねぇ〜」
言いたい事だけ言って女神様の声は聞こえなくなってしまった。
なんだよ、食えないのかよ…
しょうがないから食べずに、魔力を卵に注ぐ事にした。
はぁ…
私の鶉の卵ちゃん…
――――
【聖王国視点 ダンジョン攻略報告会】
「やはり、魔の穢れだったか」
第5騎士団長の報告を聞き終えた国王は深刻な面持ちで皆を見渡す。
ここ何ヶ月かで魔の穢れがこうも頻繁に発生する事は魔王討伐後、一度も無かったことだ。何か異変が起きている事はここにいる全員が気付いているはずだ…
「して、デイビス。お主のその実験とやらはどの様な事だったのだ?成功したと聞いたが?」
待ってましたと言う面持ちで勢い良く立ち上がったデイビスは興奮冷めぬまま、この場に来てしまっていた。
「体液です!聖女の体液なのです。穢れを癒やしたのは彼女の体液だった!」
「き、貴様!?教師のくせに彼女に何をした!」
怒り狂ったサイラスがデイビスの胸ぐらに掴み掛かる。リヒャルドが後ろから王子を抑え、どうにか離そうとするが上手くいかない。
「落ち着け、サイラス。デイビスよ、体液とはどの部分のだ?」
国王に制され、ゆっくりと襟ぐちを離すサイラスの瞳はまだ怒りに燃えていた。
「ゲホッ…涙です。今の所は」
「今の所?」
デイビスの言葉1つ1つにこうもサイラスが反論してては会議が長引く事は間違いないだろう。しかし、いつも冷静なサイラスが聖女の事となるとここまで取り乱すとは…
少し対策が必要だな…
みなも驚いているぞ…
国王は溜息を1つ落とすとまた話し始める。
「聖女の涙は穢れを癒すか… それならわざわざ試行錯誤して聖女を連れ出さなくても我々だけで魔の穢れを対処できると言うことになるな。良くやったぞ、デイビス」
「はいっ!これより他の部分の体液でも穢れを癒せるか実験を重ねていこうと思っております。彼女にはこの先も協力してもらわないと」
「他の部分とはどの部分の事を言っているのだ?」
「言葉の通り色々ですが?」
「彼女が承諾するわけがない!嫌がる彼女に無体をするつもりじゃああるまいな」
「私は教師ですよ?そんな事するわけ無いでしょう?なんと卑猥なお考えだ。だが、そうだな…彼女といい関係に慣れれば、可能性はあるか」
「貴様!!貴様の様な者に彼女は渡さん」
「どうでしょう?選ぶのは彼女だ。大人の魅力をおみせしましょう…」
やれやれ、この2人は当分放っておくとしよう。「解散」そう宣言すると、みな、ホッとした面持ちで帰っていく。
本当にやれやれだ…




