43・ダンジョン攻略 パート4(火の穴編)
「また来るぞ!」
防護魔法を覆うように黒い炎が放たれる。これで何回目になるだろう…
「近寄る事も出来ないじゃないか」
「くそっ、どうしたら」
折角作戦を立てたのに近付く事も出来ないんじゃ、話にならない。
ダンジョンボスのエリアに全員が侵入した途端、通路が塞がれ、外に出れなくなってしまった。狼狽える私達に眼鏡先生は「ダンジョンボスを倒すまでは外には出れんぞ?」そんな事も知らんのか?的な呆れ顔。こいつだけ防護魔法の外に放りだしてやるか…
ダンジョンボスのレッドドラゴン?はアッシュ君の言っていた通り、真っ黒な色をしていてこれまた真っ黒な溶岩の池から顔を出し、攻撃を仕掛けてくる。
【ブレス】と呼ばれるレッドドラゴンの攻撃は通常ならこんなに連続して使ってくる技ではないのだが、やはり魔の穢れが何らかの影響を与えているようだ。
また、厄介なのは黒い溶岩から生み出される中級の魔物達で行く手を阻んでくる。
当初の作戦では、騎士団の方がレッドドラゴンの気を引いている隙に私がレッドドラゴンを覆うように防護魔法を張り、弱点とされている水属性の魔法で一気に叩く作戦だったが、今のままでは私達を覆う防護魔法を解除する事は出来ない。
俗に言う、ピンチだ…
直に皆の体力が限界に達してしまうだろう。どうしたら…
「埒が明かないな、ちょっと試したい事があるんだが付き合ってくれるか?レオナルド」
ずっと黙って考え事をしていた最も使えない男、眼鏡先生がアッシュ君に声を掛けてきた。
魔物を影縛で拘束し、攻撃を命中しやすくしていたアッシュ君が抜けるのはここに来て痛手だ。
「勝算はあるのか?」
蛍のケツが渋面で問う。
「勝算?分からんな、これはあくまで実験に過ぎん。しかし、成功すれば大きな進展になるだろう」
「先生がそこまで言うなら、やる価値はあるのだろうな、アッシュ頼めるか?」
アッシュ君は大きく頷く。
「レオナルド、私をあの黒い溶岩まで連れて行ってくれ」
「分かった」
アッシュ君の手がすっと離れていく。
なんだか、少し泣きたくなってしまった…
寂しいような名残り惜しい様な…
「気を付けて」小さく放ったその言葉をアッシュ君は拾ってくれたようで「行ってくる」と帰ってきた。
そのまま、詠唱を始めると眼鏡先生とアッシュ君の姿が地面へと呑み込まれてゆく。
これは流石に不味い状況だ…
魔力限界に達した人達に回復薬を飲ませる。だけど、次から次に魔力切れを起こす人が増え、回復薬ももう底をつきかけている。
生徒の皆も体力魔力共に限界で、既にギブアップ。日頃から鍛えている騎士団員の人達だってそろそろ疲労の限界だろう。
仕方がない…
私もそろそろ本気で魔法を行使するか…
もしもこの事で聖女だと持ち上げられたとしても皆を死なせるよりはマシだろう。
よし!グッバイ私の平凡な日々…
そう思って詠唱を唱えようとしたら…
いきなりレッドドラゴンのいる溶岩が眩い光を放ち始めた。
「何が起きている!?」
「どうした?何が起きた?」
どうやらこの状況を理解している者はこちら側には居なそうだ。
目を凝らして溶岩の方を見ると、ぴょんぴょん跳ね回っている眼鏡先生とそれを落ち着かせようと頑張っているアッシュ君の姿が目に入った。
光が完全に治まると一回り小さくなった赤色のレッドドラゴンが姿を表した。
レッドドラゴンは溶岩の周りで騒いでいる眼鏡先生に気付くと攻撃を仕掛ける。それをアッシュ君が1人で防いでいる。やはり使えない男だ、眼鏡よ…
「通常のレッドドラゴンなら我々だけで十分だ。第5騎士団意地を見せろ!行くぞ」
「「「おーーっ」」」
「聖女様はこちらでお待ち下さい」
そう言って騎士団長さんは駆けていってしまった。
あれっ?私、何か魔法を使ったっけ?
あっ、もしかして生徒様って言ったのかも…
聞き間違えか!びっくりした。
その後、合流した眼鏡先生がやたら興奮していて気持ち悪かったのでなるべく近づかないようにした。
こうして私達の初めてのダンジョン攻略が無事に終了した。
そういえば、ダンジョン攻略後に握り拳位の卵を見つけたので、後で食べようと思って持ち帰って来ちゃった。
1つしかなかったからみんなには内緒で。
卵の柄が私の大好きな鶉の卵の柄に似ていたので多分美味しいと思う…多分…




