35・どうやら仲直り出来たようです
「今日の演習では、模擬戦を行う。各自ペアを組み始めなさい」
騎士科の先生の合図で各々にペアを組み始めた。早くアッシュ君を探さなくちゃ。
「アンジェリカ様?何故ヘルムを最初から被ってますの?どうかなさいましたか?」
アンジェリカ取り巻きAが、心配そうにこちらを伺っている。私は首を横に大袈裟に振ってみせた。
確かに遅れて授業に参加した私を皆が好奇な目で見ていたのは分かっていた。アンジェリカには本当に申し訳ない事をしたと思う…
「アンジェリカ様、わたくしとペアを組んで頂けますか?」
「ずるいですわっ!わたくしが先に誘おうとしてましたのよ」
女子が隣でガヤガヤしているのを横目に、アッシュ君を探す。何処にいるかな…
居た!
「アンジェリカ様、聞いていますか?わたくしとペアを組んで頂けますか?」
私は首を横に振ると、アッシュ君の方を指差した。
「まぁ!レオナルド様と組むだなんて流石ですわっ。彼は騎士科の中でも一二を争う逸材ですもの。とってもお強い方で、アンジェリカ様のお相手にピッタリですわ」
さささっと背中を押され、アッシュ君の元へ連れて来られてしまった。
まだ、心の準備が…
「レオナルド様、アンジェリカ様が貴方とペアを組んで下さるそうよ。光栄に思いなさい」
取り巻き達は捨て台詞を吐き終えると颯爽と何処かへ行ってしまった。
「――― マリア」
どんな姿でも、アッシュ君は私を見つけてくれるんだ…だけど…ヘルムの隙間からアッシュ君の歪んだ顔が見えた。もしかしたら、彼は私に会いたくなかったのかもしれない…
だけど… 私は…
「ごめんなさい!私… 」
「謝るのは俺の方だ… すまない。マリアを… 欲が出てしまったんだ…そんな立場ではないのに…」
「怒ってない?」
「マリアに怒る理由はないだろう?しかし、何故ここに?」
「それは…」
「そこの2人何をコソコソ話をしている!早く模擬戦を始めないか!」
先生に怒られ、お互い渋々剣を抜いて構える。
アッシュ君が走り出し、剣と剣が音を立て交差する。
「ハーベスト嬢は火属性が得意だ。マリアなら出来るだろう?」
挑撥するかのように、アッシュ君が軽い攻撃を仕掛けてくる。
「ちょっ…至近攻撃は苦手… そうくるなら…ファイヤーボール!」
「流石だな、威力と精密さが違うな、ならこれは?影縛」
「ファイヤーウォール!」
「やるな」
「そっちもね」
騎士科の模擬戦だったけどお互いに魔法の応戦になってしまった。
気付けば、授業の終わりの鐘が鳴るまで楽しんでしまった。アンジェリカさんを待たせている事をすっかりと忘れて…
「不味い!楽しすぎてもうこんな時間になってしまった!ごめん、アッシュ君、私行くね」
帰ろうとしたら、遠巻きに皆の視線を感じた。
なんでみんなこっちを見ているんだろう?まさか…私がアンジェリカさんじゃないことがバレた?
こうなったら逃げるが勝ちだ。
後ろの方で先生が何やら叫んでいるが、今は女子更衣室に急ごう…アンジェリカさん…怒っているかな?
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