34・どうやら怒らせてしまったようです
どんな顔をして会えばいいのだろう…
私はアッシュ君の事どう思っているのか…って悩んだ時期もありました。
あれ以来、私達は顔を会わせていない。
近くに気配を感じる時もあるのだが、一向に姿を表さないのだ。
「はぁ〜」
「どうしたの、マリアちゃん。大きな溜息ね~ 薬… 見たことのない色になっちゃってるけど平気かな?」
今は薬学の授業中で、私はエマさんと同じ班。中級回復薬を作る練習中なんだけど、なんだか集中力が散漫になってしまっている。
ここ最近、ずっとこうだ。自分でも分かっている、原因はアッシュ君だ… 私は多分彼を怒らせてしまったのだろう。
「はぁ~」
手に持っている試験管に目を移すと中の液体がキラキラと光り輝いている。
エマさんがそれを私の手から取り上げると何処かに持って行ってしまった。
どうにかアッシュ君に会えないだろうか、会って謝ろう。とにかく謝ってしまえば優しいアッシュ君は私を許してくれるはず。
そうと決まればを手っ取り早く確実に会う方法は騎士科の授業に潜入するのが一番だと思う!確か…騎士科の次の授業は…
善は急げだ。
「エマさん、私、次の授業は休むから先生に伝えておいて!」
「あのねぇ〜、薬学のシュチュワート先生がマリアちゃんに…」
「ごめん、今は急いでるの!!話は後で聞くわ」
「ちがっ… 薬が… 万能… 」
私はチャイムと共に席を立ち、急いで更衣室へと向かった。
だって、潜入と言えば、変装でしょ?
ちょっとワクワクする気持ちを抑えながら私は早足で騎士科の女子更衣室へと向かった…
「ここが騎士科の女子更衣室か〜アンジェリカさんの更衣室は…っと」
見つけた!!ちょっとお邪魔しますね~ んっ〜いい香り。流石女子力高し、アンジェリカさん。ロッカーの中まで薔薇の香りだなんて。
おっ!足音が…
来たな…
「次の授業は演習よ、皆さん今日はヘルム着用ですので忘れずお持ちしてくださいな」
「「はいっ、アンジェリカ様」」
アンジェリカ上手く取り巻き達とやってるみたいで安心した。少しだけ心配してたんだよね~
「アンジェリカ様、早くお着替え致しませんと遅刻してしまいますわ」
「そうね、急ぎましょう」
アンジェリカがロッカーを開けた…
「よっ!」(小さな声)
「あなっ!」バタンッ
あれっ?勢い良く閉められてしまった。もうちょっと歓迎するなり、驚くなりしてくれてもいいのに…
「アンジェリカ様、どうなさいましたか?」
「皆様、先に行ってて下さる?わたくし、急用を思い出しましたわっ」
「「お任せ下さい!先生には伝えておきますわ」」
ドタバタとした足音が消え去った後、ゆっくりとロッカーのドアが開いた。眼の前には怒り顔のアンジェリカ。美人が怒ると怖いなぁ〜
「貴女! そこで何をやってますの!」
「アンジェリカさんを待ってたの」
「おかしいとは思ってましたが、ここまでとは…」
「お願い!次の授業代わって?」
唐突に何を…と戸惑うアンジェリカさんにアッシュ君と喧嘩してもう何日も会っていない事、謝りたいけど会えないから授業に潜入したい!協力してくれと率直に伝えた。
「分かりましたわ、貴女の気持ち…やはり、レオナルドさんの事、本気でしたのね… ええっ代わって差し上げますわ。その代わり、これで貸し借り無しよ」
「? ありがとう、アンジェリカさん」
アンジェリカさんと制服を取替え、私は最初からヘルムを着用した状態で授業に出ることにした。剣や防具も借りていざ出陣。
「わたくしはここで待機していますわ。用が済んだら直ぐに戻ってきてちょうだいよ」
ガッツポーズでアンジェリカさんにアピールして、さぁ潜入開始です!




