26・おやっ?息子の様子が…(国王視点)
「聖女護衛の為、すぐに部隊編成をしろ。全部隊から優れている者、尚且口の堅い者を集め、聖女騎士団改め、第5騎士団を作るのだ。」
「はっ!」
「では解散」
はぁー、疲れた。やっと終わったか。
深々と玉座に座り直すと疲れがどっと押し寄せて来た。まさか儂の代でこのような事態が起きるとはな。
「サイラス待ちなさい」
「何でしょう父上」
この優れた息子に儂から教えることは何一つないだろうが、たまには親らしい事もしたいではないか。
「分かっているとは思うが、決してお前が本気にならぬようにな。聖女とは一線を置くように」
「勿論分かっています」
「ならよい」
つまらんな… 国のためには素晴らしい子に恵まれたが親としては実につまらん。もう時期に儂を抜かし、賢王となるのだろうなこやつは。
つまらんから下の息子の所にでも行くか。あやつは王にはなれぬ器だがちょっと抜けてて可愛いからのぉ。
どうしたことか、学園に協力を命じた遠征から帰ってきた息子の様子がちとおかしい。
一通り騎士団長からの報告は受けたが、今回の遠征は失敗だったかも知れぬ。まだ聖女を疑っている騎士団員達が聖女より王子の護衛を優先させおってからに、聖女は不信感を抱いたに違いない。
だが、今回の件で解ったであろう。
宙を舞い、金の粉を振り撒いたあの姿を多くの者が目にしたのだからな。
「サイラス、ちょっと来なさい」
「父上…」
「どうした?お前らしくないな、遠征で何かあったのか?」
「―――――彼女は聖女では無かった…」
「何を言っている?聖女でなければなんだというのだ?」
「彼女は… マリア嬢は天使だったのです!背に美しい羽を羽ばたかせ天より金粉を降らせた。光り輝く湖はとても神秘的だった」
なんてことだ、あの息子がまるで聖女に心酔しきっているような顔ではないか。困ったことになったぞ!これは早々に王妃の元へ行き、相談せねばならんな。
しかし、儂にも困ったもんじゃ。少しワクワクしてしまっているではないか。今まで手の掛からなかったサイラスがなぁ〜。
「儂は王妃の元へ行く」
足取りがちょっとスキップになってしまったのは見なかったことにして欲しいものだ。
あぁ、サイラスの婚約候補の娘、どうしよう…
――――――――――――――――――――――
(リヒャルト視点)
「今回の遠征ではリヒャルトにアッシュの監視を頼みたいのだ。どうやら彼もマリア嬢に好意があるようなのだ」
「おう。任しとけ!」
彼も、か… ってことはお前もだよなサイラス。
昔から何でも卒なくこなすサイラスは女にも男にもモテたが、自分から好意を示すなんて初めてじゃないか?嬉しい反面、何故だが胸のあたりがモヤッとするのは何故だ?
サイラスに言われた通り、アッシュの行動を監視したが奴は闇魔法を使ってちょくちょく居なくなるから厄介だ。だが、必ずアーノルド嬢を監視していれば奴が現れた。
たまにこちらを睨んでいるような気がするが、気のせいだと思いたい。しかしなぁ〜アッシュよ、これってストーカーと言うやつなんじゃないだろうか。いくら好意があるからってここまで普通するか?
アッシュの行動は全てアーノルド嬢のため、彼女が過ごしやすいように色々と先回りしこなしている。健気だ。逆にここまでやってもらって気付かない彼女もなかなかの者だ。
アッシュを監視していると彼女も自然と目に入ってしまう。彼女は人を引きつける魅力があるのだろうな…
驚いた… アーノルド嬢は空を飛び、見事湖を浄化してみせた。
魅入られてしまった。アッシュの監視を頼まれていたのに彼女から目が離せなくなってしまっていた。
不味いな… この湧き上がる感情に蓋をしよう。何重にも鍵を閉めて二度と開かないように…
サイラスと女の事で揉めるなんてちょっとな…
うん、絶対に有り得ない… だが、彼女がもしもだか俺を選んでくれたなら… まぁそれはねぇーだろうな。何考えてるんだ俺は…
「おう、サイラスどうした?」
ここにも彼女に魅入られた奴が居たか…




