21・どうやら上手く誤魔化せたようです
またまた呼び出しです。
どうしても私に見せたいものがあるとの事で蛍のケツと王族専用馬車で王宮に向かってます。
断れないのをいい事に頻繁な呼び出し止めてほしいよね。くだらない物だったらどうしてくれよう。
王宮に着くと早速国王の元に行かされた。
着くなり見せられた1冊の古い本。
随分古そうだけど日記だ。表紙にでかでかと日記と書いてあるから誰でもすぐ分かる。これをどうしろと?
国王をちらっと見ると顎でクイッと読んでみろ みたいな仕草をされた。
日記を手に取ると1枚めくってみた。へぇーっ。
これは聖女の日記だ。読み続けると魔王討伐の詳細や聖女があみだした聖魔法、穢れの浄化方法や勇者と魔道士との三角関係についてなどが書かれていた。
これは面白い。あまり娯楽のない世界だから恋愛小説とかほとんど無い。是非とも持って帰ってゆっくり読みたいものだ。
それにこれを読めば1から光魔法や四大属性の魔法を自分で考えなくて済む。勉強の苦手だった私でも解るように事細かく書かれていて読みやすいし解りやすかった。
「どうだ?」
夢中になってて忘れていたが目の前に国王いたんだった。どう?と言われてもなんて答えれば?
「これは聖女様の日記ですか?」
「ほぅ、何が書いてある?」
何が書いてある?っておかしな質問じゃないか?だってこの本の持ち主は国王の訳で当然先に読んでるはずだよね?なのにそこを確認するなんて…それじゃあまるで……………
「分かりません。」
「うむっ、儂にはそなたがその本を楽しそうに読んでいたように見えたが儂の見間違えか?この国の者には読めないその文字がそなたには読めるのでないか?」
嵌められた!!こっちに来てから勝手に文字が読めるからそこまで警戒してなかった。まさか日本語で書いてあるとは。どう切り抜ける?もし読めることがバレたら私が聖女と同じ世界から来たことがバレる。一番厄介なのは聖女だと担がれたら最悪だ!
仕方ない…
「実は皆様に黙っていた事があります。儀式の日、わたくしは女神様よりギフトを頂きました。そのギフトが関係しております」
「やはりギフトを貰っていたか。マリア嬢それはなにのスキルなんだい?もう誤魔化すのは無しだよ」
「はいっ。サイラス様、あの時は嘘を付いて申し訳ありませんでした。わたくしにも色々と事情があるのです」
「それはおいおい聞くとするよ。それでどんなギフト?」
「鑑定スキルです。ですので聖女の日記だと分かったのです。ページ事に鑑定を使うとおおまかな内容が出てきます。詳しい内容はわたくしにも分かりません。以上です」
「なるほどな、鑑定スキルか、素晴らしいギフトだ。そうか… 読めんか残念だ」
「申し訳ございません」
良かった。この対応は正解だ。スキル持ちで国から何かしらの役職を言い渡される可能性はあるが、聖女になって魔物退治や王族と結婚なんてことになるよりマシだ。
「全く君は… 目が離せないなぁ」
極上の笑みとはこの事を言うのだろう。漏れ出す色気がハンパない。背中がゾクッとしちゃったよ。でもこれって遠回しに監視宣言されたって事だよね… 気を付けよう。
帰りも王族専用の馬車で女子寮まで送ってもらったんだけど、到着して早々アンジェリカさんに遭遇してしまった。すんごい睨まれてたけど誤解だよ?と言いたい。なんか最近ついてない… 少し自粛しよう。
それにしてもあの本欲しかったなぁ~。
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「アーノルド嬢は帰ったか?」
「はい、父上」
部屋には国王を始めとする国のトップが集められていた。勿論私も王子の立場として同席を許された。それにしてもマリア嬢やってくれるな…
「先に言っておく。これは極秘事項だ。この後皆には魔法契約を交わしてもらう。それ程の案件だ、心して聞くがいい」
魔法契約… この契約を破ると死が訪れると言う恐ろしいものだ。それを国のトップに強いると言う事は前代未聞の事態だと言える。
「この間、儂が話した事は覚えているな?今日アーノルド嬢に聖女の遺品を見せた。あの魔法研究所で何十年も解読出来ずにいたあの本だ。彼女はやすやすと読んで見せてくれたよ」
「まさか!そんな!」
「儂も信じ難かったが事実だ。本人は気付いていなかったようだが声に出して読んでおったよ。余程面白い内容だったのだろうな」
そう彼女は本人も気付かない内に小さな声で読んでしまっていた。しかも「うわぁ空飛べるんだ」とか「私モテるんです自慢かよ」とかいつもと違う話し方で本に相槌をうっていた。あのアーノルド夫人の娘があんな言葉遣いをするだなんて違和感を覚えたのだ。
「アーノルド嬢は聖女で間違いないであろう。しかも初代聖女様と同郷の可能性が出て来た。もしくは女神様より何らかのギフトを頂いたか神託を受けたか。すでに鑑定スキルを頂いた事は本人の口から聞いている」
「ほぉーう、鑑定スキル珍しい」
「うむ。そしてこれが一番の最重要点だ。彼女は頑なに聖女であることを隠している。何処か怯えているようにも儂には見えた。もしかすると彼女にはただならぬ事情があるのやもしれん。無理維持を強いてこの国から出ていかれても困る。何としてでも彼女をこの国にどどめなくてはならん。彼女が自ら名告るまで決して悟られるな。極秘に守り、監視するのだ。よいな」
「「「はっ!」」」
「サイラス、お主も分かっておるな?」
「勿論です」
マリア嬢を落とせ そういう事だろう。言われなくても分かっている。寧ろ…
マリア嬢 私を本気にさせるとは…覚悟していてくれ。久しぶりの高揚感に顔がニヤけるのが抑えきれない。この気持ちどうしてくれよう…




