20・どうやらデートを邪魔されたようです
「マリアちゃんこっち」
校門の前で大きく手を振っているエマさんを見つけ駆け寄ってはみたがどうみても邪魔な奴らが2人いるではないか。
「あらっ?ごきげんよう。先輩もエドワードとお出かけですか?仲が宜しいことで大変結構ですわ」
「いや?お前達に同行するためだが?エマ嬢には了承を得ている。さあ、行くぞ」
「マリア… そのワンピース良く似合っている。か、か、かわ、カワウソのワッペンか?」
「いえ、犬です」
「そ、そうか…」
何が言いたいんだビビリ。
校門野郎は だらしねぇなぁ とかいいながらどんどん先を歩いていく。
「ちょっとエマさんこっち来て」
耳打ちするようにエマさんに話しかける。
「これはどうゆうこと?」
「あのねぇ、聖女様が護衛もつけないで街に買い物なんて駄目だって〜。だから2人はナイト役」
「まだ、そのジョーク続いてたの?男子の悪ノリって手が付けられないから嫌なのよね。まったく…」
あーあ、折角エマさんと2人だけのデートだったのにこれじゃ台無し。まだビビリじゃなくアッシュ君だったら良かったのに…
しょうがない。
「うわぁ~」
さすが王都!都会だ。東京の中央区を映画とかで見た昔のヨーロッパ風にした感じかな。お洒落なカフェも捨てがたいが今は…
「おじさん。その肉串2本ちょうだい」
「あいよ!」
旨そう〜。焼き鳥より2倍はある肉に滴り落ちる肉汁。タレが香ばしい。
「はいっ、エマさん」
「ありがとう」
「「いただきまーす」」
旨い!弾力のあるお肉が噛むたびに甘汁がでて口の中に広がる。にんにくの効いたタレがまた最高だ。
次は…ってな感じで甘い物としょっぱい物を交互に食べてたらお腹いっぱい。校門野郎が俺達には無いのか?とか言ってたけど女にたかるなんて最低だ。ビビリも食べたそうにこっち見てるし、この2人が居ると落ち着けない… よしっ!
「エマさん。次は下着を見に行きましょう」
どうだ?付いてこれないだろう。
何故かビビリは鼻を押さえて何処かへ行ってしまった。残すは校門…
恥ずかしがってるエマさんを無理矢理お店に連れ込む事に成功。俺はここで待ってるからと校門野郎が近くのベンチに座ったのを確認してお店のお姉さんにしつこいナンパに困っていると伝える。お姉さんは従業員用の裏口から私達を逃がしてくれた。
作戦成功!って思っていたんだけどなんと逃走のため入った路地裏でガラの悪いおじさん達に絡まれてしまいました。とほほっ…
「おいっ、こっちのピンクのねぇーちゃんが例の女か?」
「そうだ。こいつを捕まえれば俺達当分遊んで暮らせるぜ」
「もう1人はどうする?」
「勿論、俺達が頂くに決まってるだろ」
「グヘヘッ、楽しみだ」
狙われているのは私?なんで?魔法で撃退する?街中での攻撃魔法は禁止されてるけど仕方ないよね。パパッと片付けちゃいましょう。
「影縛」
突然男達の足元からロープの様な物が伸びてぐるぐると縛りつけていった。
何がおきている?だけどこの魔法は闇属性…って事はもしかして
「アッシュ君?」
「何?」
「「ギャーーーッ! 」」
私達の真後ろの壁からアッシュ君の顔だけがにょきっと現れた。もうホラーよ。心臓止まるかと思った。
なんか聞いちゃいけない気がするが聞いてみよう。
「そこで何しているの?」
「ーーー別に何も」
何もな理由ねぇーだろ。壁の中で何してるんだよ。つかなんでここにいるんだよ!心無しか顔が赤い。ははぁーんさてはこやつエマさんを付けてたな?惚れちゃたか?エマさん可愛いもんなぁ〜。よし、ここであったがなんとやら2人をくっつけよう作戦開始。
「アッシュ君 危ない所を助けて頂きありがとうございます。お礼も兼ねてこの後お茶でも一緒にどう?ねぇエマさん?」
「う、うん。そうだね。お茶しちゃう?」
アッシュ君は顔を真っ赤にして小さく こくんと頷いた。やはりすでにエマさんにメロメロとみたぞ。
あれっ?おかしいな…
只今お洒落なカフェの椅子に座り2人で向き合っている。お相手はアッシュ君。なんも喋ることないからもう20分くらい沈黙が続いてる…帰りたい。
あの後騒ぎを聞きつけたビビリと校門野郎にこってり絞られた後、2人は捕まえたチンピラを近くの騎士団兵舎に連れて行く事になった。「事情を聞きたいから付いて来い」って言われたけどエマさんが「マリアちゃんはアッシュ君にお礼しなきゃだから私が行きます」ってついて行っちゃったし、校門野郎は 「アッシュが一緒なら問題ねぇーな」とか言って了承しちゃうし、ビビリには何故だが睨まれるし最悪だったよ。
はぁー、2杯目のメロンソーダが飲み終わりそうなのにアッシュ君は全く飲み物に手を付けないからいつになっても帰れない。いいから早よ飲めーっ!
飲み終わってしまった…
次は何を頼もうかな。
「――――あの時は―――ありがとう。お礼を言うのが遅くなってすまない」
私の目を真っ直ぐ見つめるアッシュ君の瞳は真っ黒でなんだか懐かしくて気が緩んだんだと思う。上手く笑ったつもりだったけど後から後から勝手に流れてくる涙が止められなかった。
「お家に帰りたい…」
お母さんやお父さん、兄妹のいるあのうちへ…
「帰ろう…」
学園までの道のり、ずっとアッシュ君と手を繋いでいた。そういえば昔、虐められて泣いてる私を兄貴が手を引いて連れ帰ってくれたっけ…
私が家に帰る方法はただ1つ。TURE ENDを迎える事。妹が攻略したルートには無かった END。だとすると残るは隠れキャラのアッシュ君のルートしかない。私はこの人とこれから関わっていかなきゃいけないんだ。
「着いた」
考え事してたからあっと言う間に着いてしまった。
ありがとうって言って手を離そうとしたけど凄い力で握られてて離せなかった。
何だこいつ またこのパターンか?もしかしてちょこちょこ痛みをくらわす嫌がらせか?いや、これはチャンスだ!ピンチをチャンスに変える女それが私よ!
握られている手をもう片方の手で優しく包み、ちょっとの上目遣い、完璧だ。
「わたくし達お友達になりましょう?」
アッシュ君は慌ててバッと手を離し、無言でコクコク頷いている。そんなに激しく動かすと首が折れるぞ?
「では、また明日」
「―――――明日」
なんかずっと見られてるような気がしたけど振り返らず女子寮に戻りました。だって疲れてたんだもん。




