18・おやっ?俺の心臓の様子が…(アッシュ視点)
俺の名前はレオナルド・アッシュ。
しかし本当の名はロマネスク・ナバス・アシュガルド 隣国ナバス帝国の第2王子だ。いや、第2王子だったが正しいか… 今は訳あって祖母の旧姓を名乗っている。私は死んだはずの王子だから生きていてはいけないのだ。
少し私の幼少の話をしよう。
私は帝国の第2妃から生まれた王子だ。ナバス帝国は昔、疫病が蔓延し、それを聖女様に助けられた歴史がある。その為今でも聖女信仰が根強い。黒眼黒髪で生まれた私は父や母から大変可愛がられ育ってきた。誰もが私が次の皇帝に選ばれるものだと思っていた。勿論私もだ。しかし、それは10才までの話。
ナバス帝国では王族のみ十を過ぎると魔力開放の儀式が行われる。
私も誕生の日と共に儀式を行なった。当時の私は期待と希望に満ちていてその日がとても楽しみだった。
しかし、儀式を行うと私を覆うオーラは黒。
皆の憎悪に満ちた視線。今も夢に出てくるほど悍ましい記憶だ。
そう、黒のオーラは魔族を意味しナバス帝国では忌み嫌われている。そんなはず無いのに、私は父と母から生まれたれっきとした人間だ…
そこからの私の人生は言うまでもなく恐ろしいものだった。父からも母からも見放され、最終的に王妃と第1王子に命を狙われ、この国に逃げてきたのである。だから私は世間では死んだ事になっている。病死だ。
今は母方の祖母の実家で世話になっている。最後まで私の味方をしてくれたのは隣国から嫁にきた祖母だけだった。だから私はこの聖王国に骨を埋めるつもりでいる。
誰も信じられず、毎日引き籠もっていた私に優しい叔父が聖王立魔剣学園の入学を勧めてきた。私は叔父の養子となり、学園に入学した。
このまま優しい叔父に寄生虫の様にたかりにはなりたくない、ただそれだけだった。
入学式の日、桃色の髪を靡かせた美しい女性が私の前を通り過ぎた。遅刻ギリギリのはずなのに急ぎもせず凛としている姿が愛らしく目が離せなくなった。
しかし、儀式の日。
既に魔力開放が済んでいる私は人目を盗んで彼女を見ていた。他の人よりとても時間を要した彼女は白いオーラを纏わせていた。
美しい程に光輝く彼女を目にすると、反対に自分はなんて汚く悍ましいオーラを纏わせているのかと自己嫌悪に陥ってしまった。その日から彼女を視界に入れない様努力した。気を抜くと直に視線を送ってしまいそうで自分が気持ち悪かった。
野外授業の日、まさか彼女と同じ班になるとは思ってもいなかった。彼女が近づくととてもいい香りがしてもっと近づきたくなる自分が怖かった。だからなるべく離れて過ごしたが、気がつくと天真爛漫な彼女を見てしまっている自分が居た。この胸を締め付けるような感情が怖くて仕方がない。
彼女の名前はマリアと言うらしい。可愛らしい名前だ。
くそっしくじってしまったか…
だが、噛まれたのが私で良かった。所詮私は死ぬはずの人間。いらない存在なのだ… あぁ、このまま死んでいくのだな… 叔父上すまない。
死とはこんなにも穏やかなものなのだな…
温かくいい匂いがする。先程から唇に柔らかなものを感じる。ずっとくっついていたい程心地良い…天上とはどんな所だろうか?少し目があきそうだ。
目を開けると目の前には美しい女神が居た。メーティス様?いや彼女は…
「――――――マリア嬢?」
私は生きているのか?あの猛毒をくらって?
「良かった… アッシュ君 無茶し過ぎ!」
彼女の頬を流れる雫。私の為に泣いているのか?
眩し過ぎる笑顔が私を光導くようだ。あぁ、勿体ない…ぽたぽた落ちる雫を全て舐め取りたい…
私から逃げないで、置いて行かないで、私を見て。
私を支配するこの感情… あぁ、分かってしまった。これが恋だ。私の初めての恋…
こんなにも激しく私の全てを支配する。
心臓が痛い、マリア…マリア…
君にだったら殺されても構わない。
喜んでこの汚い心臓を君に捧ぐよ。
好きだよ マリア…
どうかこの思いだけは許してほしい…
誰も評価してくれない…
もしかしてつまらないのではいかと悩み始めた今日この頃…




