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神魔覆滅剣とホーリーランスの威力

「おっ、ゴブリンが1匹いるぞ!」

「女の敵ね! 早速駆除しなきゃ!」

「あっ!? ルーナお姉ちゃん、洞窟の上に弓を持ったゴブリンがいるよ!」


「ほんとだわ!? ナユくん偉い!」

「よく気が付いたな、ナユタ!」

「えへへ〜♪ あのね、なんか上の方でキランって光ったから上を見たらね、ゴブリンがいたの!」


 大好きなお姉ちゃんとお兄ちゃんに褒められて照れるナユタ。


「じゃあ、ナユくんが見つけてくれたゴブリン達はお姉ちゃんが倒してあげるから、ナユくんはそこでお姉ちゃんのカッコいい勇姿を見ててね!」

「うん! ルーナお姉ちゃん頑張って!」


「ナユくんに『頑張って!』って声援もらっちゃった♪ あぁ、幸せ〜♪」

「ほら、ルーナ? 幸せに浸ってないで早く魔法使わないと気付かれちゃうぞ?」


 敵が側にいるのにいつまでものん気にしてるルーナにアルトがそう注意すると、ルーナも自分の行動がマズいことに気が付いて、すぐに魔法を使おうとする。


「そ、それもそうね! じゃあ、さっさと魔法を使って……。ねえ、魔法ってどうやって使えばいいのかしら?」

「ルーナお姉ちゃん、魔法ってなんか呪文を唱えないと使えないんじゃないかな? 絵本に出て来る魔法使いさんは呪文を唱えて魔法使ってるよ?」

「あの黒い板出して魔法の名前ん所、指で触ったら呪文が分かるんじゃないか?」


「や、やってみるね! 黒の板さん出て来てください!」


 ルーナがそう呼び掛けると、ルーナの眼前に魂の黒板(ステータスボード)が表示された。


「それでこの≪聖なる槍(ホーリーランス)≫の部分を指で触れば、あっ、呪文が出て来たわ!? えっと、ふむふむ。オッケー、分かったわ!」

「あっ、ルーナお姉ちゃん!? ゴブリン達が気付いちゃったみたいだよ!?」

「マジか!? じゃあ、ルーナ! 俺が突っ込んで(おとり)になるから、上のゴブリンアーチャー達が俺を狙い撃ちしてるところに魔法をぶちかましてやれ!」


「ふぇえええ!? だだ、大丈夫なの!?」

「腕盾で頭の防御に専念するから平気平気!」


 アルトはそう言いながら地上にいる1匹のゴブリン目掛けてダッシュした。


「ルーナお姉ちゃん! 早く呪文! 呪文唱えないと!」

「そ、そうね! 呪文唱えなきゃ! えっと、聖なる槍よ、我が前に立ち塞がる者を討ち滅ぼせ! ホーリーランス!」


 ルーナが呪文を唱えると、ルーナの周囲に2本の聖なる槍(ホーリーランス)が出現し、洞窟の上の方にいた2匹のゴブリンアーチャー目掛けて飛んでいった。


「グギャ!?」

「ギャー!?」


 崖上にいた2匹のゴブリンアーチャーは胸に風穴を開けられて絶命し、地上へと落下する。


 黄金の光を纏った槍は2匹のゴブリンアーチャーの胸を貫いて洞窟の壁に突き刺さったあと、無数の光の粒子になって虚空に消えていった。


「ルーナお姉ちゃん、すごーい!? 2匹もいっぺんに倒しちゃった!」

「うん、お姉ちゃんもびっくり! 大聖女の魔法って凄いのね! あっ、アルトぉ〜! 上のゴブリンアーチャーはもう倒したから安心してソイツを倒しちゃっていいわよぉ〜!」

「了解! そんじゃま、神魔覆滅剣の威力を試してみるとするかな。神魔覆滅剣!」


 アルトは剣を握る手に力を込めながらスキル名を叫んでみた。


 すると、アルトの剣が2色の光を纏ってうっすらと輝き出す。


 1つは聖なる黄金の光。


 もう1つは邪悪な紫の光だった。


「なんかすげーな、これ!? じゃ、いっくぜー! くらえ、回転斬りー!」


 アルトはスキルを発動させて跳躍した!


「グギャブッ!?」


 ゴブリンは剣を構えていたが、アルトの動きに反応できずモロに回転斬りを喰らって体を斜めに切断され、絶命した。


「うおっとっと!? 俺、父ちゃんみたいに重くないから途中で止まると思ったのに最後まで斬れちゃったよ。すげー斬れ味だな、このスキル」

「アルトお兄ちゃんすごーい!」

「アルト! すっごくカッコ良かったわよ! まさか一刀両断しちゃうなんて思わなかったわ!」


「俺も一刀両断できるとは思わなかったよ。でも、このスキルがあれば1階で戦う分には余裕で戦えるんじゃないか? 父ちゃん、1階には強い魔物はいなかったって言ってたし?」

「そうね、私の聖なる槍(ホーリーランス)も1発で1匹倒せたし、なんとかなるんじゃないかしら?」


「じゃ、このまま1階を探索して魔物達を倒していこうぜ! 村に魔物が迷い出ちゃったら大変だからな!」

「ええ、いいわよ。聖なる槍(ホーリーランス)があれば、ナユくんを危険な目に遭わせることもなさそうだし。ナユくんもそれでいいわよね? お姉ちゃんが守ってあげるから♪」

「ぼ、僕も戦うのー!」

「にゃっ!?」


 戦闘力があるようには見えない幼な子のご主人様が戦うなんて言い出したので、黒猫は思わず驚きの声を上げてしまった。


「あれ? ねえ? 今、猫ちゃんの鳴き声が聞こえなかった?」

「そうか?」

「きっとさっきの黒猫ちゃんが側にいるのかも! 黒猫ちゃーん! 怖くないから出ておいで〜! 近くにいるなら一緒にいたほうが安全だよぉ〜!」


 シーン……。


 ナユタが黒猫に呼び掛けたが、黒猫は岩の後ろに隠れたまま姿を見せなかった。


「黒猫ちゃん出て来ないね? ルーナお姉ちゃんの気のせいだったのかなぁ?」

「かもな? いるか分からない猫を待っててもしょうがないから先に行こうぜ」

「はぁ……猫ちゃんが恋しくて幻聴が聞こえちゃったのかなぁ……。ナユくん、お姉ちゃんを慰めて〜」


 ルーナはナユタにむぎゅ〜っと抱き着いてその頭を胸に(かか)え込んだ。


「ル、ルーナお姉ちゃん、息が出来ないよぉ〜」


 大きな胸に圧迫されてもがくナユタ。


 けれど、ルーナはナユタ成分を補充しているので彼女の耳にナユタの抗議は届かない。


「はぁ〜♡ 癒されるよぉ〜♡」


 そして、至福の表情を浮かべて(とろ)けているルーナの姿を見ていつもの如くアルトが愚痴をこぼす。


「くそー! 羨ましくなんか、羨ましくなんかないぞー! ゴブリンはどこだー! 八つ当たりしてぶっ殺してやるー!」


 そんな光景を大岩の後ろから覗き見していた黒猫は『あやつら、ここがダンジョンの中だと忘れておるのか?』と心の中で思い、


「にゃあ……」


 と呆れの溜め息を吐いた。


「うん♪ 十分ナユくんに癒してもらったから先に進むわよ!」

「ぷは〜、やっと息が出来るよぉ〜」


 肺活量が日々成長していくナユタであった。

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