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スライム倒してゲットした称号は?②

「あっ、板が出て来たわ!? これに称号が書いてあるのねって……。嘘、何よこれー!?」

「ルーナお姉ちゃん、なんて書いてあったの?」

「ひょ、ひょっとしてほんとに大聖女の称号が出ちゃったのか?」


 アルトが恐る恐るルーナに確認の声掛けをすると、ルーナが目を三角にして怒り出した。


「そうよ、出ちゃったのよ! もー! アルトが変な願掛けするから本当に大聖女の称号が出ちゃったじゃない!? どうしてくれるのよ!?」

「え、えっと、そのぉ〜、ご、ご愁傷様?」


 怒り狂ってるルーナに戦々恐々なアルトはちょっと現実逃避してルーナが「うっそぴょーん」と言ってくれたら良いなぁと思いながらそんな言葉を口にする。


 けれど、大聖女の称号が出たのは嘘でも冗談でもなかったらしく、


「ご愁傷様じゃないわよ、この馬鹿! 大馬鹿! ほんとにどうしてくれるのよ!? 大聖女なんてバレたら、あんたと一緒に魔王討伐に行かなきゃいけなくなるじゃない!?」


 とルーナが涙目でポカポカ叩いて来るので、アルトはものすっごく罪悪感を覚え、必死に謝った。


「わ、悪かったって!? ちょっとした冗談のつもりだったんだよ!? まさか勇者に続いて大聖女の称号が出るなんて思わないじゃん!?」

「ル、ルーナお姉ちゃん落ち着いて! バレなければ大丈夫なんだよね! 僕、絶対に誰にも言わないから安心して? ねっ?」


 大好きなお姉ちゃんとお兄ちゃんがケンカし始めちゃったので、ナユタは慌ててルーナに抱き着いて(なだ)めの言葉を掛けていく。


 すると、その効果は抜群でルーナはすぐに大人しくなり、ご機嫌になる。


 泣く子に(あめ)、泣くルーナにナユタであった。


「ナユくんから抱き着いて来てくれたぁ!? ナユくん、ありがとぉ〜♡ 絶対に秘密にしてね? 誰にも言っちゃダメだからね♪」

「うん、僕誰にも言わないよ!」

「た、助かったぁ〜。ナユタありがとな! お前は俺の命の恩人だ!」


 けれど、アルトのその言葉を聞いて、ルーナの機嫌が急降下する。


「はぁ? 何言ってるのアルト? 私、アルトのこと、まだ許してないからね?」

「えっ? 許してくれないの? うそーん……」


 ルーナから白い目で見られ、アルトは意気消沈する。


 そして、 そのしょんぼりしてる姿を見て『噂をすれば影が差す的な感じで大聖女なんて称号を引き寄せてくれたアルトに責任を取ってもらうには今が攻め時かも』とちゃっかり思ってしまったルーナが強気な態度でアルトに要求を開始する。


「当たり前でしょ? アルトのせいで私に大聖女なんて称号がついちゃったんだから、あ、あなたはわわ、私に一生尽くしてくれるぐらいの、げげ、下僕になってくれないとダメなの! い、一生懸命尽くしてくれたら許してあげるから頑張って励みなさい! いいわね!」


 実に願望ダダ漏れな要求であった。


 そしてそれを、


「ルーナお姉ちゃん、それプロポーズ?」


 と弟に突っ込まれ、


「そうなのかルーナ!?」


 とアルトにも追撃されてしまい、ルーナは激しくテンパった。


 プロポーズをしたつもりはないけど、プロポーズに近い言葉を言った自覚はある。自覚はあるけれど、それを認めることが出来たらこんな風に強引に押し切る形で話を進めたりしていないので、ルーナは挙動不審になりながらもそれを否定する。


 乙女心は実に難しいのである。


「ち、違うから!? プロポーズなんかじゃないから、アルトはその期待しまくりな顔やめて!? 思わず『うん♪』って言っちゃいそうになるでしょ!? それは(みそ)ぎが終わったあとの話なんだから、まずちゃんと私を大聖女にした責任を取りなさい!? いい、分かった!?」


 否定してるのに、きちんと否定しきれてないアホの子、それが大聖女ルーナであった……。


「責任取れって、やっぱ俺と結婚したいんじゃ──」

「アルト、今何か言った!?」


 ルーナにギロリと睨みつけられたアルトは即座に口を閉じ、謝罪した。


「いえ、何も言ってないです! きちんとルーナの下僕やるんで勘弁してください!」


 余計なことを言って今の話をなかったことにされるより、こう言ったほうがルーナの心象が良くなると思ったアルトであった。


 そして、その考えは見事当たっていた。


 アルトにそう言われたルーナは実にご機嫌な笑顔を浮かべながらこう口にしたのである。


「もうしょうがないわね! 許してあげるから、ちゃんと私の下僕をやるのよ! (えへへ♪ アルトが私の下僕になってくれるんだって〜♪ しかも、一生だよ、一生! それってもう結婚してるのと、おんなじことだよね♪ ナユくんとアルトと一生一緒にいられるなんて幸せすぎるよぉ〜♪)」

「(俺が下僕になってあんなにも喜んでるってことは、ルーナは俺に貴族の専属執事みたいなことをやらせたいのか? 一生懸命尽くせとか言われたし? でも、専属執事って何するんだ? 紅茶とか入れるのか? はっ!? ひょっとして着替えとか体を洗うのを手伝えって命令されちゃったりするのか!? それって罰じゃなくてご褒美の間違いじゃないのか!?)」


 なんと言うか、()(なべ)()(ぶた)な2人であった……。


「──ちゃん? ねぇ、アルトお兄ちゃんってば!」

「な、なんだナユタ?」


 妄想にトリップしてたら何度も声を掛けられていたようで、アルトがナユタのほうに顔を向けたら、ナユタが可愛く頬を膨らませていた。


「もー、やっとこっち見てくれた! ねぇ、アルトお兄ちゃん? 下僕になって命令されるのとルーナお姉ちゃんのお願いを聞くのって何が違うの?」

「な、なんでそんなこと聞くんだ?」


「だってアルトお兄ちゃんって、いつもルーナお姉ちゃんのお願い聞いてるでしょ? だから、なんでルーナお姉ちゃんがあんなに嬉しそうにしてるのか僕よく分からなくてアルトお兄ちゃんに教えてもらおうと思ったの!」

「そっかー……。べ、別に大きな違いはないと思うぞ、うん! 下僕なら確実にお願いを聞いてもらえると思ってご機嫌なんじゃないか? あっ、あんな所にスライムがー!」


 露骨に話を逸らそうとするアルトであったが、それに引っ掛かるナユタではなかった。


 幼い子だからと言って侮ってはならない。


 幼い子はよく見てるし、意外と鋭いのである。


「アルトお兄ちゃん、なんか誤魔化してなーい?さっき鼻の下伸ばしてだらしない顔してたし、ひょっとして下僕への命令ってなんかえっちな──」

「あー!? あー!? ほら、ナユタ! スライムが逃げちゃうから解体ナイフをしっかり握って、えいって切ってこい! スキルが手に入るぞ!」


 アルトは大きな声を出して話題を逸らし、ナユタにスキルを入手して来るよう促した。


「はーい。(あとでルーナお姉ちゃんに、えっちな命令は出しちゃだめだよって言っておこうっと)」


 ナユタはそんなことを考えながらスライムの元へと移動して解体ナイフで「えぃっ!」と切りつける。


 すると、スライムがパシュっと音を立てて破裂し、1枚の黒い板がナユタの顔の前に表示された。

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