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村人達との交流⑥〜ルーナとじゃがバター屋の4匹の猫〜

「癒しの光よ、かの者の傷を癒し(たま)え、ヒーリング!」


 ジャガーに大怪我をしている猫ちゃんの所に案内してもらったルーナは、体に包帯が巻かれているサバトラの猫ちゃんに両手を(かざ)して癒しの光(ヒーリング)の魔法を発動させた。


 元気がない様子でぐったりと横になっていたサバトラの猫ちゃんがオレンジ色の光に包まれる。


 すると、サバトラの猫ちゃんは体の痛みが急になくなって楽になったことが不思議だったのか顔を上げて、


「にゃあ?」


 と可愛く首を傾げたあと、むくりと起き上がって体の状態を確かめるかのようにくるりと小さく1周する。


 とりあえず動いても体に痛みを感じていないサバトラの様子を見てキジトラと茶トラと三毛猫がサバトラへと駆け寄り、


「にゃあにゃあ♪」

「みゃあみゃあ♪」

「にゃ〜お♪」


 と鳴いて仲間の傷が治ったことを喜んだ。


「おお!? こいつは(すげ)えな!?」

「ありがとうねルーナちゃん! シルちゃんの怪我を治してくれて!」


 サバトラの猫ちゃんが元気になったことに感激したジャガーの女房アイルロが、両手でルーナの手を取って感謝の言葉を言って来たので、ルーナは首を左右に振りながら、


「いえいえ、猫ちゃんがぐったりしてるなんて可哀想ですから助けるのなんて当たり前なので気にしないでください!」


 と言ってアイルロに微笑んだ。


 すると、今度は脚に何か柔らかいものがぶつかって来たので、なんだろうと思ってルーナは下を見る。


 そしたら、足元に4匹の猫達が集まって来ていてルーナのことを見上げながら、


「ごろごろにゃ〜お♪」

「にゃあにゃあ♪」

「みゃあみゃあ♪」

「にゃ〜お♪」


 と感謝の気持ちを込めているかのように可愛い声で鳴き始めたので、ルーナは幸せで卒倒しそうになった。(ちなみに、それはアルトが慌てて支えて、ことなきを得た)


「あら、シルちゃん達がお礼を言いに来たみたいね!」

「だだだ、抱っこして頬擦りしても大丈夫ですかね!?」

「包帯取って傷がなくなってりゃあ大丈夫だと思うが、ちょっと待ってな」


 ジャガーがシルちゃんと呼ばれているサバトラの猫ちゃんの体に巻いてある包帯を取って傷の具合を確認する。


「何事もなかったかのように綺麗に傷口がなくなってるし、触れても押しても痛がる素振りがないから、ま、大丈夫だろ」

「ですってルーナちゃん! 好きに頬擦りしていいわよ!」

「ありがとうございますアイルロさん! じゃ、じゃあシルちゃん? 頬擦りさせてね?」

「にゃあ?」

「みゃあみゃあ!」


 サバトラの猫ちゃんが『何しようとしてるにゃ?』と尋ねると茶トラの猫ちゃんから『頬擦りにゃ!』と返って来たので、サバトラの猫ちゃんは『わかったにゃ!』と言って、


「にゃ〜お♪」


 と鳴きながらルーナに抱っこをせがんだ。


「きゃー♡ シルちゃんありがとぉ〜♡」


 ルーナはサバトラの猫ちゃんを抱き上げて抱っこし、幸せそうな表情を浮かべながら頬擦りをした。


「ルーナお姉ちゃん良かったねー♪」

「猫に逃げられずに連続して頬擦り出来たのって今日が初めてじゃないか? 快挙だな!」

「はぁ〜幸せ〜♡」

「にゃ〜♪」

「シルちゃんも嬉しそうね!」

「普通だったら治るまであと何週間掛かるか分からなかったからな。おーいアルト、店先にあるじゃがいも適当に持っていっていいぞ!」


「適当にって幾つまで持ってって良いんだ?」

「別に全部持ってっても良いぞ? 20個ぐらいしか置いてないからな。ちゃんとルーナんちと半分こするんだぞ?」


「そんぐらい分かってるよ! おーい、ルーナ! そろそろ行こうぜー!」

「あっ、うん! じゃあね、猫ちゃん達! また遊びに来るからね!」

「ごろごろにゃ〜お♪」

「にゃあにゃあ♪」

「みゃあみゃあ♪」

「にゃ〜お♪」

「猫ちゃん達またねー♪」

「にゃ!」


 3人と1匹は4匹の猫ちゃん達に挨拶をすると、顔を上げてジャガーとアイルロにも挨拶をした。


「多分大丈夫だと思うんですけど、シルちゃんの調子がもし悪くなっちゃったら教えてくださいね? また治癒の魔法掛けに来ますから!」

「その時はお願いね、ルーナちゃん!」


「はい、お任せください! 他の猫ちゃん達の調子が悪い時でも来ますから遠慮なく呼んでくださいね! 私、猫ちゃん大好きですから!」

「本当にありがとうね!」


「いえいえ、それじゃあまた!」

「アイルロさんもまたねー♪」

「アイルロさん、ルーナの奴がちょくちょく遊びに来て困るようだったら俺を呼んでくれよな! 引き取りに来るから!」


「ちょっとアルト!? 人聞きの悪いこと言わないでくれる!? 私、人に迷惑掛けるまで他人の家に居座ったりしないわよ!?」

「小動物が絡むと分かんないだろ?」


 アルトの言うことを完全に否定することができないルーナはちょっと動揺してしまう。


「うぐっ!? き、気を付けるもん!」

「ははは! ルーナちゃんは小動物が好きなんだな! うちは気にしないから遠慮なく来てくれていいぞ! 若い娘さんがいると元気が出るからな!」

「エロ親父め! ルーナ、じゃがいも貰ってとっとと帰るぞ!」


 ルーナをエロい目で見るな!と憤慨したアルトはルーナの手を掴んで家の出口に向かってズンズンと歩き出す。


 そして、子ども達が去っていったからこれで遠慮なくシバけるね!とこめかみに青筋を浮かして腰に両手を当てたアイルロが前傾姿勢でジャガーに顔を近付けながら詰問を開始する。


「ちょいとあんたぁ? まさか猫ちゃん達を出汁(だし)にしてルーナちゃんにちょっかい掛けようとか企んだりしてないだろうねえ?」

「ふにゃっ!?」

「にゃあ!?」

「みゃあ!?」

「にゃっ!?」


 4匹の猫達はいつもとまったく違うアイルロのただならぬ気配に恐怖を感じ、一目散に逃げ出した。


 俺も逃げたいと思ったジャガーであったが、逃げたらあとがもっと怖いので泣く泣くその場にとどまり言い訳を試みる。


「ごごご、誤解だアイルロ!? ちょっかい掛けようだなんてこれっぽっちも思ってないぞ!? 俺はただ猫と(たわむ)れる若い娘さんを見て目の保養にしようと思っただけで!? ほぎゃああああ!?」


 後ろからアイルロにしめられて悲鳴を上げるジャガーの声が聞こえて来たので、ルーナがジャガーのことを心配する。


「ジャガーさん大丈夫かしら?」

「あんなエロ親父、心配なんてしなくていいよ!」

「ルーナお姉ちゃん、目の保養ってなーに?」


「目の保養って言うのはね、ナユくん。美しいものや綺麗なものを見て癒されることを言うのよ」

「ルーナお姉ちゃん、美人さんだもんね! だからジャガーさんはルーナお姉ちゃんを見て癒されたかったんだ!」


「も、もうナユくんったら美人さんだなんて////」

「そうだぞ! ルーナはおっぱいが大きくて美人さんなんだから、やたらと俺達以外の男の前であんなだらしない顔すんなよな! ムラっと来た男に襲われちゃうかもしれないだろ!?」


「もうアルトは心配し過ぎよ! この村の人達はみんな良い人達なんだから!」

「でも、酒飲んで酔っ払ってたら分かんないだろ!?」


「それはそうだけど、でも前のお祭りの時にお尻触られてからは酔っ払いには近付かないようにしてるから大丈夫よ!」

「はあ!? 誰に触られたんだよ!? 俺がぶった切って来てやる!! がるるるるぅ!!!」

「んとねー」


「教えちゃダメよ、ナユくん? 勇者になったアルトに教えたら殺人事件が起きちゃうでしょ?」

「うん、分かったのー! お口閉じておくねー!」

「閉じるなナユタ! 閉じる前に誰か俺に教えてくれ! ぶっ殺して来るから!」


「もー、お馬鹿! だから教えられないんでしょ!」


 ルーナが自分の手を掴んでるアルトの手を振り払いながらそう言うと、アルトが、


「だ、だって俺だって触ってないのにー!」


 と口を滑らせたので、ルーナは白い目を向けながら、


「触ったら、あの酔っ払いみたいに股間蹴り上げて悶絶させるわよ?」


 と宣言する。


 すると、それを聞いて股間が縮み上がったのか、アルトが即座に白旗を掲げてこう口にした。


「嘘です! まったく触りたいと思いません!」

「ちょっと! 私のお尻に魅力がないって言いたいの!?」


 酷い逆ギレであった。


「いやいやいや!? ここで魅力があるなんて言ったら俺変態扱いされるじゃん!? なんて答えればいいんだよ!?」

「うふふ、冗談よ! でも、心配してくれたのは嬉しかったわ! ありがとねアルト♪」


 ルーナが表情を一変させて見惚れるような笑顔を向けて来たので、アルトは顔を真っ赤にしながら、


「べべべ、別に当然のことだし! あっ、俺先行って台車にじゃがいも載せてるから!」


 と言ってその場から逃げ出した。


 ルーナがめちゃくちゃ可愛く見えて抱き締めたくなってしまったがゆえの緊急避難であった。


「照れるからって逃げないでもいいじゃない……。ナユくんもそう思わない?」

「ルーナお姉ちゃんの笑顔が可愛くて、ちゅーしたくなっちゃったからアルトお兄ちゃん逃げたんだと思うよルーナお姉ちゃん?」


「えっ!? やだ!? そうなの!?」

「うん、そうなのー♪」


「そっかー、アルトは私にキスしたくなっちゃったんだ……////」


 ルーナは自分の唇を人差し指で触りながらポッと頬を赤く染めて喜んだ。


 でもキスはもっとロマンティックな状況になった時じゃないとしてあげないんだからね♪


 目の前を走り去っていくアルトに向かってそんな言葉を心の中で投げてしまうルーナであった。

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