表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

憧憬

作者: 南方黎

体が、妙な具合になる。

この世の、大きな悪戯が通り掛かる。

今、僕の目の前に生まれて、やがて消えていくだろう感覚。

あれは僕と違って、地に足つけ、世界の色を知っているだろう、名も知らない彼女の、血色のよい肌だ。

 彼女になりたい。彼女は僕にそう思わせる。彼女のもの見る顔に、僕は心からあこがれを抱く。だけど、心地は重くなった。できた映画を観ているようだと思ってみても、そうはいかない。彼女の色は、僕の胸のうちに重く溜まり込んだ。どうしようもなく辛い。僕は精一杯道化て、厭世的な表情で、全てのものを慈しむように演じる。でもそのうち疲れて、その場にへたり込む。

 もう逢えないのだ、僕の感覚すべてが、ゆっくりと一つに収縮していく。僕はそれをすぐ側で見ている。どうしようもなく強大で冷淡なものに背中を脅かされる。仮に提げられた「世界」の名のもとで動く、全てのものに愛おしさを感じる。彼女が消えた曲がり角から跡を引く余韻も、僕の心に少し色を映して、僕はそれをずっと持っている。その暖かみも、僕の腕の触れないところから少しずつ冷めていって、結局僕はもとの世界に戻るんだ。人々は忙しなく動いている。互いに、その目に誰も映さないうちに。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ