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なろうラジオ大賞4参加作品

天才魔術師の究極魔法

掲載日:2022/12/10

本作は、なろうラジオ大賞4への参加作品です。

 王都のはずれの森の中に、彼は住んでいる。


 彼とは。

 元筆頭魔術師、天才マブロス。


 若くして得た栄誉職を棄て、もう何年も隠棲している。

 そんな彼の小さな住まいに、ある日一人の女性が訪れた。

 肩を震わせながら、女性は彼に依頼をする。


「忘却の魔法を、かけてください」


 マブロスは長く黒い髪をかき上げる。

 髪と同じ色の瞳には、彼女の依頼の目的が、既に見えている。


「断る。あれは身体への負担が大き過ぎる」


「でも……」


 女性は悲痛な声を出す。


「あなた様なら、あなた様にしか、出来ない魔法だと」


 それはそうだが。


「それほど忘れたい、何かがあるのか。マリノ侯爵令嬢」


 女性はびくりとしながら顔を上げる。睫毛が長い。

 王国でも有数の美女である。


「名も名乗らず失礼を」

「依頼は、王太子との婚約破棄と、関係が?」


 マリノは目を伏せ頷いた。


「何でも、ご存知なのですね……」


 噂は森にも届いている。

『真実の愛』に目覚めた王太子が、長年の婚約者を捨てたと。


 ぽたりと、マリノの目から涙が落ちる。


「十年、婚約者として過ごしていながら、わたくしは平民の女性に負けました。そんな自分を全て、忘れたいのです」


 マリノの言葉にマブロスの胸も痛む。色あせた過去の古傷だ。



(あのひと)を愛してしまったの!』


 あれは誰の声。

 その一言で、マブロスは筆頭魔術師を辞した。



「マリノ嬢」

「はい……」


「忘却の魔法には準備が必要だ。しばらく、ここに通ってください」


 マリノは指示に従って、それからしばしば、彼の元にやって来た。

 マブロスは特に何かをするでもなく、一緒にお茶を飲み、時には森の中を二人で散策し、花や小鳥を愛で、夜空の星を数えた。


 季節をいくつか過ごした頃、マリノは俯くことがなくなり、笑えるようになった。


「もう、此処へ来なくて良いです」

 

 マブロスは告げる。


「なぜです!」


「忘却の魔法、必要ないでしょう」


 そう、マリノの悲しみと痛みは、とっくに癒えていた。


「いいえ。また来ます」


 マブロスは首を傾げる。


「わたくしが今笑えるのは、殿下のことを忘れたからではなく、

 新しい幸せを見つけたから」


 マリノは大きな瞳でマブロスを見つめる。

 マブロスの顔が火照る。


「このままずっと、一緒にいたいのです。

 マブロス様と」


「私で良いのか?」

「あなただから、良いのです」


 マブロスの古傷は、その一言で消えていく。

 癒したつもりが、癒されていた。

 触れた指先が温かい。


 二人の結婚が王都で噂になるのは、このあとすぐである。


たくさんの作品の中から、わざわざお読みくださいまして感謝申し上げます!!


お話を少しでも気に入って下さいましたら、一番下の☆たちを★に変えて下さいますと嬉しいです!!

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― 新着の感想 ―
[一言] 奇跡も、魔法も、あるんだよ( ˘ω˘ )
[一言] 時間とコミュニケーションこそが、古傷を癒やす忘却魔法なのかもしれませんね( ˘ω˘) 素敵なハッピーエンドでした~(*´艸`*)
[良い点] 力とか関係なく、小さな幸せが実るホットする、お話でした。楽しく読めました。
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