リーガルな茜ちゃんと!放送依頼大作戦
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そろそろ就寝の時間。
初老・マクネは、今、アジトの奥にある、ボロボロの木造スペース、寝室にいる。
欠けた壁から隙間風が吹いて居るけれど、それでもベッドの中は暖かい。
壁に吊るされたランタンが優しい光でひときわ瞬いて明滅を繰り返す。
その光を見ているとまるで、今日一日の自分を労わってくれているように思えてくる。
「今日も一日、頑張ったなぁ……」
布団に寝転がりながら、友達と明日のショッピングについておしゃべり中。ストレス発散にはこれが一番。思わず口元がにやける。
「え? いくらスポンサーでもカフカのキャラクター性を壊すなと苦情が来ている? 馬鹿なことを言う奴が居るんだな。どこだ? あぁ、その企業ならうちの傘下みたいなもんだ」
「訴訟は無理だよ、少しはしゃいだだけで、そんなに迷惑は掛かっていない。そもそも、本社は何も言っては来んのだぞ? 文句を言っても構わないのは本社だけだ。じゃあな」
通話を切る。
と。
突然、『部屋』のドアが開いた。
飛び込んで来た少女はテンション高く、ものすごい早口でまくし立てた。
「きいて! きいて!」
「なんだ、カフカ。少し落ち着け。そんなにバタバタすると埃が舞うじゃないか」
初老・マクネはゆったりとした仕草でベッドから起き上がる。カフカは飛びつくようにやって来て、改めてまくし立てた。
「街中に、南瓜の……ジャックオランタンがいっぱい、現れたって!さっき生中継しててニュースになってる! すっごい目立ってて、犯人探されてるみたい!」
「何ッ」
目立たぬよう、潜在履歴に残らぬよう、ツブシは慎重に行う。
そう何度も言っておいた筈なのに。
足が付くじゃないか。
なんで、俺たちが回りくどいか知ってるか?
コソコソ、本人にだけ気付く程度の工作を繰り返すか。
少し揺さぶって、ツブシとけば後々便利なんだよ。
気でもおかしくなったと言って、精神科に送れば良い。
その為に陰からやってるんだから。
「おのれ、やり過ぎだ……使えん愚図どもが」
幸い、まだハロウィンの時期だ。ハロウィンイベントを行って居そうな会社と提携して、うちの宣伝だったことにしてもらうか……
とにかく、話題の中心にならねば。マクネは作戦を練り直す。
焦るのはまだ早い。
とにかくなんでもいい、話題の中心にさえなれば、後はどうにかなる。
マユが開いて居るドアから飛び込んで来た。
「大変よ!」
「どうした」
初老・マクネが半分呆れた気分を引きずりつつ、声のした入口を向く。
「南瓜が街中で目撃された! ハリー・ヨウの広告まで打ち出して、徹底的に陽動しているのに、変よね! むしろ、ヨウ様が疑われてる!」
「お前も聞いたのか」
絶対兄機構に南瓜のオバケに対しての殴り込みがあった。それで、出資がバレる。魔法使いの集団で滅多打ちのリンチ。
表ざたにはなっていないが、あまりに、相手に都合が良すぎる。
大体の事は、これまで上がっている報告でもわかっているが、まさか、南瓜もあいつらが――――?
南瓜はアジトの旗印。
ハンターにとってのジョリーロジャー。
宣戦布告というわけか。
「しかし、どうやって。各家々に召喚するようになっていたはず……それはご家庭の各々、料理人のタイミングで行われる。それが、何故……どんなカラクリで兄機構に繋がり、うちの出資が暴かれて居るのか」
マユが心配そうに口元に手を当てた。不安を現す仕草だ。
「カフカよ」
ちら、とマクネはカフカを見た。
柔和な笑みを向ける。
「はい?」
声の高いぶりっ子女とやらと、目付きの悪い金髪の男――――
放送依頼で、誘き出せんものか。
何か、何か感情的になるような事。
修羅場とやらの情報はまだ集め切れていないが、急がねば。
「おまえには、期待しているぞ」
マクネが言うと、カフカははいっ!と元気よく返事をした。
うーん、素直でいい子じゃないか。
魔の者が出歩く程治安が悪化する、と世に印象付けて貰うには、どうしてもメディアを使った大規模な作戦が必要だ。
協定のバランスを裏側から打ち崩し、じわじわと規制を強化する。
人間の管理が必要だと主張し、政治家を送り込む。
民主主義を利用し、独裁国家を築く。
とにかく、話題の中心にならなければ。
人間が、イニシアチブを握っているのだと、世論に訴えかけ、その頂点に我々が君臨していなければ――――
「やっぱり、ハンターの出番やな!」
突然、アジトに溌溂とした声が響き渡った。
「誰だ!?」
いつの間にか、部屋ドアが開いて居る。
それに、知らない女が居る。
カフカとマユは『あの女』を意識した白髪なのだが、
今目の前に居るのは、赤い髪を赤っぽい髪を肩まで伸ばしている女。
知らない。
「どうも、リーガル統一人間会から来ました。瀬エ川 茜です~」
マユが茜の背中を押しながら紹介をする。
「こちら、来て貰ったの。瀬エ川さん。人間のリーガルな魔法社会をより深く広めて行く活動をしているわ」
「少し前は、リーガルって会社で、勧誘……いや、ビデオ販売等を行って居ましたが、今年からはハンター派遣に切り替えさせてもろてます~」
「は、はぁ」
マクネはたじろいだ。
――――あの女中。次々訪問者を通しおって。
「でもまだビデオ業界ともつながってますんで。監視カメラへのアクセスも用意できますよ。街のモニター権限、欲しく無いですか?」
「何が狙いだ」
マクネがなるべく威圧感のある声で言うと、瀬エ川茜はにっこりと営業スマイルで答えた。
「うちのハンターを使うてくださいな。そんで、何かあったときに、おたくのパイプを通してもらいたいんですわ。大丈夫、なかなか腕が立つと思います。また南瓜騒ぎみたいなんあると、面倒でしょう?」
「しかし……」
そいつらがヘマをすれば、今度は人間側も武力に訴えていると表沙汰になりかねない。
これまで――――気付かれぬよう、悟られぬよう、電話などで根回しし、モニターで魔女狩りを煽るなどすることで暴動を誘発。
あちら側の民度という悪印象を植え付けて来た。
それが、直接殴り合って居るなど、これまでの工作も揺らぎかねないが……
「ビデオに映っても、さくさくっと消しちゃいますんで」
この一言が、後押しとなった。
「うむ、わかった」
(2023年1月16日19時58分)




