夢のタイアップ!
(ヨウたちの作戦。放送依頼で私たちの印象を悪くして支持率を下げ、人間側につかせようって言ったって、現実は、私たちのやることや言うことに則ってそれを貶してるだけ……まるで選挙だ)
ぼんやり、今は閑散としているステージを眺めると、在りし日の様々な記憶が甦ってくる。
なるからには夢を与えたくて歌ったはずだが、そうでない人たちが放映や会場全体の主導権を握っている。
(思惑なんか民間にわかるわけない。雰囲気の悪い現場だ、としか思わないだけなのに……それとも、一部の権力者が観るためだけに?)
権力者以外がチャンネルを観れない国は、未だいくつかある。ほとんどが独裁国家で報道規制が厳しいらしい。そこと繋がりのある局だったら、権力者に届きさえすれば良いのかもしれない。
カボチャだって、昔は、あのときなら、発動する前に消せたはずだ。歌で──
いや、今も、少しは、効力を発揮している、のか……
(プロデューサーやナナカマドさんが言ってたこと──途中で、休んじゃったの……やっぱり気になるな)
自分だけのせいじゃないとわかっている。
けれど、休止し話題がハリーやカフカに移るのと同時に、魔物の出現率が上がった。
キャノがイコライザーを発動させていたときの倍だ。食い止めるものが、奪われようとしている。
(暴走件数、増えてるのに、名誉とか歴史のことばっか気にして……それだって、同じ暴力で同じ痛みがある以上の成果なんかないのに)
「おい、大丈夫か?」
ぼんやりしていたら、ふいに声がかかる。舞台の裏から出てきたキャンディだ。
手にしているハンマーは、さっきまでカボチャを焼き払っていた為にまだ熱く熱を持ち、ほんのりと周囲が赤くなっていた。粗方片付いてるのだろう。
「……うん」
何を言えばいいかわからず、ひとまず相槌を打つ。
「ごめんね、ちょっと休憩してた」
「いや、大した敵じゃなかったし、三人もいるから余裕だわ」
無駄にかっこつけて言うので、相変わらずだと思いながらも、ただ「それなら良かった」とだけ返す。
「また何か考えてたんだろう?」
キャンディは、彼女がステージをぼんやり眺めていたことを察してか、心配そうに踏み込んできた。
「──そう、だね、うふふ」
「大丈夫だって。今はちょっとどたばたしてるけど、そのうち風向きが変わる」
彼なりに励ましてくれているらしい。そうだといいなとキャノも思った。と、同時に。ふと、試したいことが出来る。
「ねぇ、キャンディ」
「ん?」
「昔──ね、昔も、歌ってたことがあったよね。森の中で……私たちと、その、あの事件のあとで」
「あぁ」
キャンディの表情が僅かに寂しそうになる。けれどキャノはそこにはあえて触れなかった。
「今は、森に、精霊がいるかわからないけど──、」
「え……」
「あ、ううん。ステージ見てたらちょっと歌いたくなってきた! そうだ、ねぇ、昔みたいにバヨリン弾いてよ!歌うからさ!」
「いきなりだな」
キャンディはやや恥ずかしそうにはにかんだが、やがて何かを懐かしむように、小さく笑う。
「良いよ。楽譜は?」
ハンマーの大きさを変え、ポケットに収納すると、今度は空間から『バヨリン』を取り出した。年季の入ったものだ。一度顎を乗せて構えて──から、そうだったと顔をしかめ、どこかから松ヤニを取り出すと弓に丹念に塗り始めた。
キャノは用意が出来るのを待ちながら話しかける。
「わあ、やっぱりそういうのやってるからか、背筋、綺麗」
「……」
特に意味のない言葉だったが、キャンディは思わず耳が熱くなる。
「いつもライブで歌ってる曲!とか言っても、わかんないよね……」
実際そんなこともないのだが、キャノは知らなかった。
「そうだなー。なかたのごんすけのレモンティーとか」
「知らん」
「じゃあね、えっと……」
12/1211:57
××××年前――――
昼間だと言うのに、木々の鬱蒼と生い茂る森の中。
「う、うぅ」
横倒しになっている木に座って、少女が泣いていた。
のを、キャンディはなんとも言えない気持ちで眺めている。
何にしたところで、森だって夜になれば一気に冷え込むし、どんな獣や害虫が潜んでいるかわからない。浮浪者や行く当てのないアウトローだっている。
昼間のうちに街に出るべきで、此処でじっとしている場合ではない、
「私、姿を見せない方がいいのかな」
座り込んだまま、少女が弱弱しく呟く。
「なんで」
キャンディはじっと見降ろしたまま、これからのことを考えて居た。
「……あ、えっと……違うの」
「何が」
キャンディはぶっきらぼうに答えながら彼女のすぐそばに立って腕を組む。
彼女は視線を泳がせている。
「そうじゃ、なくて、」
「何が?」
「……うぅ」
何を言っているのかはよくわからないけれど、何かを嘆いて居ることだけが伝わった。さっきからずっと、何があったか聞いたところで、特に詳しく答えてはくれない。
彼の方を見て、何か言いかけては頭を振り、違うの、と言うだけだった。
何が違うと言うのだ。少し苛立ってきた。
「その、つらいとは思うけどさ。早く立って、キケルを探しに行こう。日が暮れちゃうよ」
(俺でも、大人や魔女みたいな大きな魔法は使えない。強い敵に囲まれたら二人ともまた捕まってしまうかも……)
だから、いかにも社交辞令的で適当な、上辺だけの慰めになってしまう。
「いいの、もう」
「はぁ!?」
苦労して助けたというのに、彼女は森から動こうとしない。
差し出した手が空を掴む。
「だっ、て、」
震えた声。戸惑っている。だから、何に。
「あのさ、とりあえず、此処に居ても、誰が来るか分からないんだ。森には魔物や動物以外にも、密猟者とか、怪しいやつだっている。動かないなら担いででも連れて行く」
キャノが口を開く。
「そんなこと、したら」
「だから、なんだよ!? 言いたいことがあるなら言え」
少しキレながらキャンディが言うと、やっと少し決意したように彼女は答えた。
「街の人、白化個体は高く売れるって言ってる、だから、当たり前だったの、私、変だから――声も、全部、怖がられて――だから、貴方は何も、悪くない……」
あぁ、とやっと合点が行った。
あいつらは自分たちを少しでも正当化するために、そんな風評まで撒いて居やがったのか。
実際は脅迫に使えそうなら誰でも良かったんだ。
それが彼女だっただけで。ただ、何でも言いたがるやつは何処にでも居て、面白がって吹き込んだのだろう。
『 ――――このときは分からなかったが、あのときに彼女が何も答えなかったのは、俺のことを想っての事だったのだと思う。 』
『此処で何を答えても、反射して、俺に返って来るのを、知っていたから。
だけど、 』
「俺も、そういうの、よく言われるけど、今となっては挨拶みたいなもんさ、殺すけどね」
不器用に励まそうとするキャンディ。
彼女は複雑そうな表情で彼を見つめた。
「……ふーん」
「なんだよ」
「いや。よく、考えたら、あんたには、女の子が大勢いるんだったわ。あの子たちに慰めて貰えばいいんだ」
私たちと違って。
「俺は!」
思わず大きな声が出た。
キャノがきょとんとする。
「好きだけど」
見つめられると思わず、小さな声になった。
「その、お前の、声……とか、」
キャノが不思議そうにキャンディを見つめた。
「え? 何? よく聞こえなかった」
2022年12月14日23時30分
♪
「ih larne nei sar a leus este──」
彼女の声に呼応し、バヨリンの音が少しずつ加わっていく。
ih larne nei sar a leus este
nah. ha leste marthoa?
ihist larne nei sar a leus este nah. ha leste fatszne?
al me nal ol a
al me na loa
es ist na lan est ena
almenalolan
este na la
is te na ha al ist nara esten.
間奏の間に、キャンディは彼女をちらりと見上げた。あの頃よりずっと逞しく、けれどあの頃と変わらない眼差しだった。
wouf dst a aleus son eneius
este na ha iste aloen ?
ya ges anea soam na leus
is darmeina fooejs!
al me nal ol a
al me na loa
es ist na lan est ena
almenalolan
este na la
is te na ha al ist nara esten.
salaciealeus
sa lua cuie l raus
sa lua cuiel raus
es das ist me en laus
salaciealeus
sa lua cuie l raus
sa lua cuiel raus
es das ist me en laus
salaciealeus
sa lua cuie l raus
sa lua cuiel raus
es das ist me en laus




