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【音闇クルフィ】  作者: たくひあい
ミライとめぐめぐ
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prologue;ミライとめぐめぐ

◆◆prologue;ミライとめぐめぐ◆◆










「未ー来っ!」


夕方。ほとんど夜に染まりそうな時間帯。

制服姿の肩までの髪をした少女が、目の前を歩いて居た少女を元気いっぱいに呼び止める。

彼女は二つ結びで、違う学校の制服を着ている。


 そして、呼ばれた通りに、ちょっと拗ねた様子で答えた。




「み・ら・い・ちゃん。ちゃんまで付けないと、時空的概念がですね」


 真面目な顔で言うミライだったがすぐに破顔し、二人でくすくす、笑い合う。


「ごめんごめん! 未来ちゃん!学校帰り?」

「そうなの。めぐめぐも?」

「うん。今ちょうど、ホームルーム長引いちゃってさ。私、今日は早く終わったんだけど、アクリルスタンドの販売バイトだったんだ」

「あぁ、あの、最近入った音街さんって人と?」

「そうそう! グッズショップの手伝い~、今、アクリルスタンドとプラモデルをいっぱい置いてるんだ。あ。音街さんの名前って、なんかこの街みたいじゃない? よく、いろんな歌が聞こえるし」

「うーん、そうかなぁ? 音街さんと、この街は関係ないと思うけど……」

「えーっ、この街、音街っぽいって!」

「何その拘り。ここは込神町って名前がある」

「うーっ、頑固だなぁ」




 鉄道のすぐ真下の道路。


頭上では電車が走り抜けて、時々二人の会話を遮ったりしていた。








「今日も、お兄ちゃんたら酷いんだよ!」


 二人は電車待ちの時に知り合って、それからよく学校帰りなどに駅に行く際出会うことがあり、度々会話をしている。

めぐめぐが高校の授業を終えて駅まで歩いてくる際、正面の駅側の道からはミライが歩いてくる。

下校時刻が重なると、または、たまに待ち合わせて、一緒に駅に行くのだ。


 話題は専ら『駄目な兄の事』だ。

家庭環境が似ているのか、不思議とウマが合った。中でも、『駄目な兄の事』になると特に話題が白熱した。

めぐめぐの話に、未来ちゃんが頷く。

※ちなみにこのニックネームは互いをなんと呼ぶかという際に、互いにノリで決めたものだ。

「わかるわ、家も、大体そういうとこある」

「ねー! 言った事全然覚えてない。やったこともすぐお前がこうだから、お前がって」

「兄の癖に責任感ってものが無いよね、すぐ人に押し付けるし、やらなくて良いことはやりたがるし」

「生まれた歳が古いからって、威張っちゃってさ。私とは違う種類の人間だわ」

「ほんとほんと、そのうえ、親とか親戚の前だといい子ぶって」

「あれむかつくよねー! お前普段皿洗いもせんやろがいっていう」

「あははは!」



少女たちにとって自我は何よりもかけがえのない、そして、繊細なものだった。


 兄の居るあの家に居ると、自我が消えてしまいそうな気がした。


――――わたしは兄じゃない。

兄も私じゃない。




 自分たちの味方は、自分たちしかいない。

親戚も家族もいない。

正確には、そう、『その立場』の少女が。

自分を守るには、兄という立場の醜悪さに対するはけ口が必要だった。


 接点を否定し、切り刻んで、確実に、宇宙的永遠の距離までアニトイウモノの価値を壊し、

自分の価値のぶんと分けて、自分の存在から   『あれらを』切り離す場所。

この世界から居なくならない為にどうしても必要だった。

『家族や親戚の後ろ盾のない』

 (知り合いなんて気を遣うから面倒だし……仲直りの握手させられても何の意味も無いのにね!)





少女たちの、脆くて、不安定なその場所を、保証してくれる絶対的な場所。





 




――――こうして出会った少女たちの、兄の脅威から、少女たちの存在意義を絶対守るための同盟!



『クズ兄同盟』が結成されたのである。












「あのね。最近ちょっと不思議なことがあるんだぁ」

「不思議?」

「そう。お兄ちゃんが、私の行くところ、先々に居るみたい……いっつも予定を知られてるんじゃないかって感じで続いてて」

めぐめぐが重いため息と共に零した言葉に、ミライは飛びつくように声をあげる。

「私も! 私もそう、前に学校の子と他の街に遊びに行こうとしてたときとか急にその地域に用事があるとかって予定被せて来て大事な用だからって、おかげでお留守番させられて。しかも、一度や二度じゃないの! ふざけんなって。そんな偶然あるわけない!」

「うわー酷すぎるよ! うちも、前に、先輩と出掛けるのも、知ってた。何にも言ってないのにメールの内容も知ってた。絶対バレないように、手帳とかに書かないで、学校の中で口頭で対策練ったのに……知ってるわけないのに」

「なんでぇ!? お兄さん、学校の中には入れないよね? なんでそんな予定まで被るの?」

「そう! きっもち悪い! なんなのかな?」 

「でも、私もそう。携帯ロックしても、突発的に用事決めてもなんか見られてる気がする。予定聞いて後から変えたりしても、ついてくるときある。

今日も一応GPS抜いて来たんだ」

「こわーい。二人で遊びに行ったりしても聞いてそうだね」

「だけど、聞いてるからなんだっていうの?そんなんに邪魔されて何処にも行けないなんて無理! 絶対嫌!兄貴たちは権力があるけど、

あの家で私には、私しかいない。誰かみたいに会社用意してくれたりもしないもん」

「うーん、理由はわからないけど、誰かと話し決めてる気がするんだぁ。

前に、お兄ちゃんが誰かと通話してて、社長って呼んでたの見た」

「社長?」

「わかんない。けどあれは絶対に何処かと組んで、行き先を広めて先回りしてる。わざとやってるよ! 学校はたぶん、監視してる人が別にいる……でも、携帯は」

「そうだよね、付けた瞬間、例えば、私の端末と同期して他の端末に連絡が行くようなものでも無いと……同時に、メールとかの予定が流せるとは思えない」




「お兄ちゃんに」「クズ兄貴に」

「権力を持たせたい団体が居る」


「私たちで、尻尾を掴もう」

「私たちが生き残るために」

「私たちが存在するために」








「……って、みてみて、みらいちゃん!」

「どうしたの、めぐめぐ」


 駅に向かっていた二人。

空を指さしためぐめぐにつられ、星が輝き始めている空を見上げる。

そこには、不気味なほどの真っ黒いカラスたちの群れが列を成して何処かに向かって行く様子が見える。

「なにあれ。なんか死んだのかな」

「うわ、ちょっと気になるねー!」

大体、鳥が集まっていくときは誰か死んだというものだが……それにしても、こうも、そこかしこに集まってきているのは、この町では珍しいことだった、

目の前の電線にもカラスが居る。

「……、今、なんか起きてるのかな」


2022年12月3日1時24分

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