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寒い、寒い、雪の日だった。
いや。寒いなんて今更だ。いつも、この山は凍えている。
それこそ雪に埋もれそうなほど真っ白な城壁から、開いている二階の窓を見上げる。窓際に雪のような白い肌をした、青白い髪の女性が腰掛けて、椀に入った氷のデザートを食べている。凍ったフルーツや木の実が添えられていて、氷にはたっぷりと蜜がかかっているというものらしい。
冷菓というのは人間の数える歴史で言えば、紀元前より存在すると言われている。
だけど此処で存在を見たのは彼女が食べているので初めてだった。こんな極寒の地でそんなものを試すのは変わり者の彼女くらいなのだろう。
(勿論当時、氷は貴重品だったということを除いても、こんな雪山ではさしてその調達に困らないが、それにしたって、人々の多くは体温を保つ為に暖かいものを好んだ)
「この寒いのに、よく、そんなもの食べれるねぇ」
呆れて言ったのに、彼女は高らかに笑い声を上げる。
「寒いから良いんだよ、アイスってのは。忌々しいとしか思っていなかった氷を、甘くて素晴らしいものだと、気付かせてくれた」
「そうかねぇ。暑い日に食べる方が、美味しいと思うのだけど」
「暑い日なんか、此処には来ない! だから、ずっと素晴らしい日々が続くだろう。今なら、貴方のぶんもあるけど、食べてみる?」
「それは、良かった、でも、私は良いや。これ以上体温が下がるとそれこそ身体が氷漬けになりそうだ」
彼女は、それこそ、可哀想なものを見る目で、ため息を吐く。
「軟弱なものなのね、人間の身体と言うのは」
それから、また、子どものように目を輝かせてそれを頬張り始める。
「うん。美味しい。いつか、子どもが生まれたら、その子にも食べさせたいわ」
寒い、寒い、雪の日だった。
なのに、そう言って笑う彼女の周囲だけは、まるで春のように暖かだった。
2022年7月2日16時35分




