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【音闇クルフィ】  作者: たくひあい
番外編1
38/240

装置とマオちゃん





その日、森の奥から綺麗な歌が聞こえた。

高く、透き通った声。


「キャノ?」

俺は木々を掻き分けてその場所に訪れてみた。


「キャンちゃん? なんだ、あんたか……」

そこにいたのは、同じように白銀の髪と真っ赤な目。透き通った声の女の子。俺を見るなりがっかりしている。

岩に腰かけて、楽しそうに竪琴を弾いていた。


「なんだ、って。揃いも揃ってなあ、もうちっと俺さんに優しくてもいいんだぜ」

振り向くこともなく、彼女はツンとしたままで言う。

「この声は、私の声」

「悪かったよ。間違えたんだ」

「この声で、例えば歌手になりたいって言ったら……私の名前、呼んでくれる?

レイメアにそっくりな声で、私のことを、私の歌を呼んでくれる?」

確かに此処にある、私の姿も魔法も声も、生れたことすらも、いつか誰かが否定材料にする。


──悪かったよ。間違えたんだ。


「──俺には、」


「なぁんて、ね。ウフフフ」


202210/10PM7:31加筆





 ケーキ屋を訪れた足でタワー戻ると、コトたちに会わずに、そのままエレベーターに乗り込んだ。


最上階に着くや否や、キャノはモニターに話しかける。


 「制限装置の使用に関する分布を見せてもらいたいのだけど」

マオちゃん。

妹。の、カタチをした、ナビゲーションシステムの人格。


――――昔、事故で機械に引き込まれた彼女の妹。

 今はその存在がコアとなり、システムと一体化している。

 昔、ナナカマドに聞いたところでは、此処の設計者は、

『彼女』が特有の人格を所有することを意図していなかったようで、『彼女』が意識を持ってしまったのはこの計画の副産物のような――――ロマンチックに言うのなら、彼女自身の意思によるものなのだという。



 無機質なもののように接しながら液晶の奥に映る少女の姿を待った。

 (確か、記憶が確かなら設置には事前承諾を得る必要があったはず。

 契約書の違反に当たるだろう場所がどの程度あるのか――――)


『分布図ね……了解』

キャノとよく似た機械的な合成音声が、彼女の意思を読み取る。

中央のひと際目立つマップに、光の点が書き込まれる。

主要な場所を除いても、魔力波形に特定の動きがある場所がかなりの数存在していた。これは、本来想定される数の6,7倍はあるのではないだろうか。

(思ったよりも、多い……)


 空いているモニターを行き来しながら、ふわふわの白銀の髪の少女はあどけなく笑った。

『おっ! デートですか? デートですか。ウフフフ!』

後ろに突っ立っていたキャンディが赤面する。


 ……のにも気づくことなく、キャノは適当に「まぁ、そんなとこかなー」と言った。彼女にとっては、忌々しい事故を思い出す存在であり、同時に、どこか郷愁にも似た、嫌う事も出来ないもう一人の自分のような存在。

彼女自身も、どう受け止めたら良いのかよくわかっていない。

『良かったじゃん!』

 今は陽気に笑っているけれど、その笑顔を見ると何故か逆に『あの日』を思い起こしてしまう。

『キャノはいっつも気にしてたもんね、あのガラの悪い魔女のこととか、』

「あぁ……なんでこんなに多いの……あのおもちゃの数も気がかりだったし……まるでRPGの雑魚みたい、ハンターのせい? 屋根の上から見たときも……規約はどうなっているの? 目を通しているのかしら」

『ケーキ屋に居た時もー♪』

「え?」

「ちょっと、黙って!!」

「すみませんでした」

 キャンディは一人だけナビのいうことが気になってキョロキョロしているが、彼女はお構いなしに腕を引っ張った。何か言っていた気もしたが、細かく聞いて居たら平静でいられないような気がしてあえて聞かなかった。

どこから集めてくるんだろうというようなことを、よく、喋っている。

「見て、この数! 少なくとも6倍は使ってる! 信じらんない!」

「あー……軽く片付けるか?」

どこかそわそわしながら、キャンディは一応話に耳を傾ける。

 脳内は騒がしく考察に考察を重ねていた。ケーキ屋に居た時に一体何があったというのか。魔女が一体どうしたんだ。何を気にして――――

「それは保留。一気に減らすと、勘づかれそうだし」

「え?」

「え? って何よ! ボケーっとしちゃって!」 

「悪い。なんの話だっけ」

「この数はどう見ても申請なしで、規約違反で取り付けている数にしか思えないって話、してたでしょ!」


 突き放すように言いながらも、『マオちゃん』がどう判定しているのかも気になり、余計にイライラする。彼女の態度は今に始まったことでは無いのだが、それは必ずしも純粋な好意だけが含まれているわけではない。 

 マオちゃんはそれを知ってか知らずか、呑気に茶化していた。


「そう……だったな」

 キャンディも何故か不自然に静かになる。

マオちゃんは『まだ知りたいことはありますか?』と歌でも歌うように尋ねた。 キャノは、早く、ケーキを持ってリルたちに会いに行こう、と考えながら、気まずさをやり過ごす。

「契約書の規約って何処にあるんだ?」

「たぶん、幻影の大魔女が、この近辺の統括だから、彼女に聞くのが良いかも」


2022年6月13日3時51分

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