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【音闇クルフィ】  作者: たくひあい
番外編1
22/241

モーシャン


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「はぁいー容疑追加ぁー!

シバタの監視基地の1つ、ジミらが押さえちゃったらしいよぉ! 探偵に頼んで、波形の分析して証拠としてつかんだらしい……言い訳?だいじ? 社長への報告書が厚くなるねぇ」

 あるビルの内部段──のボールに囲まれた倉庫の一室で、デスクに向かいパソコンを操作していた短めのツインテールの少女は、そう言いながらロリポップを口から出してまた舐めた。(プリン味に限る)

 ぱっつんと揃えた前髪に、お気に入りのクローバーの髪飾り。パソコンにも、そばに置いた携帯電話にもじゃらじゃらとビーズやぬいぐるみのストラップをつけて居る彼女は、そこに居るだけである種の自分の領域を作り上げていた。彼女は今まさになにかを、調べているところ。

「ジミもえげつないね?」

一方で隣で壁に寄りかかりぼーっとしている少年はそれだけ答え、また、ぼーっと抱き枕に顔を寄せる。眠かった。

「逮捕のためとなれば盗聴すら証拠になる。

容疑が固まれば正式な証拠として提出されちゃうよ。

民意・世界を味方につけるには、犯人の肉声による犯行命令、わかりやすい証拠となるからね……むにゃ」



「以前も気をつけてって!

教えてやったのにぃ? 大バーゲンセール。またまたまたまた上役から恨みを買ってる、とことん追及されちゃーうよぉ!」


「ヤマモトたちがミスったから。恐らくすでに所有する基地はみんなあいつらに確認されている。何か言い訳したほうがいいぞ………命令ツールと繋がればアウトだ……ぐぅ……」

うとうとし始めた少年をよそに、少女の方は

「私にっ言わないでよー!」

と元気いっぱいに怒鳴った。

「ったくう、ハンター過激派活動、前は、なんとかなったじゃぁん……処罰発表も後に回されていたしぃ?」

ペロペロペロペロ、とロリポップを舐めながら

苛立ちを誤魔化す。彼女たちはハンターの過激派組織だった。魔女狩りは続いている。


「違うよモーシャン、あのとき庇って貰えたのは選挙が控えていたからだ……ジミの知り合いに犯罪者がいるとバレたら困る。だから選挙に不利にならないようにお偉いさんとして巣立ち……ジミのとこから引退、させたってだけだ」



以前、ある会社が起こした魔女狩りや準ずる迫害行為を表向き、責任者の職役引退で解決した。そしてその後の人間がこの組織の一味になっている。会社は退いたが事件の追及からは逃がしてやったということだ。

 世間にはやつは辞めた、今もある迫害行為とは関係がないんだ、を広めておいてある。よくある措置だった。


「わーかってるわよ! 後ろ楯には期待しない!

あのアイドルの炎上事件だって、報道されないだけで魔女狩り組織を疑ったり、陰謀論を唱える人が根強く居る……いまだにうるさいんだよねぇ。あれは消しきれなかったしぃ。

ファンの男が後から疑われて話題になりかけたけどさ。

 この疑惑も、何とかしないと……どうやって生き延びるのってときなのになぁ、まーた案件」


「あれは、本当ならすぐに犯人を出して処罰の発表をしたかったらしいが…………局が不自然な放送命令で悪あがきをした……と……聞いてる……そういう輩は恐らく退職した後も犯行をする…………すやぁ」


 一般的には大きな事件の後からは印象の回復を狙っていくのが基本なのだが、こういった組織の「そういった連中」は、その命の砦となる《現実を受け入れる力》がボロボロで、とてもとても、機能してくれる造りにはない。簡単に頭を下げたりはしない。


しかしこれ以上ここで時間ロスをし、工作を怠って自分たち側を最優先した対応をしたら……

国民から隠ぺい行為だと判断されたら、上役の信頼は地に落ちる。



「もぉ! また寝たぁ!!!」


少女──モーシャンはロリポップを口にくわえたまま、『基地』の1つのカメラにアクセスする。そのカメラには疲れた様子で働くバニラちゃんが映っていた。




「本当に、何度でも反省して欲しいものだねぇ。信じかけてた気持ちを、裏切って。

上層部の、信じる気持ちを、裏切って……つか、他のメンツはー? カメラ見張るのすごいだるーい。暇ぁーー! ねー、こーたいしてよぉー」 


「今は、別件で出払ってる」


寝たと思えば、声がかかる。どっちなんだこいつ、とモーシャンは心のなかで毒づいた。


「はー?」

「だから、その『調査』が入ったとき。魔女が現れていたらしい」

「カメラ、バニラちゃん以外何にも映ってないけど」

「いや……それは……とにかく社長が何処かから引き入れてきたゴリラたちが、怪しいやつを捕まえに行っている……。社長も本腰を入れ出したみたい。すやすや」

 ボソッと声があってモーシャン、はハッと背後を振り向くが、少年はまたも眠りに入っていた。まあ、いつものことだ。

「ゴリラってぇ、あの辺に最近うろつくバカチンピラじゃんん」


ガリッ、苛立ちにロリポップが齧られる。

モーシャンは最近いつもカメラ監視(退屈)だわ、同じく見張りをする少年は常に眠たいわ、イライラが収まらない。

イライラしている自分に言い聞かせるように

モーシャンは呟いた。


「でも君の得意分野でしょう?

観察結果を踏まえ、そうとも見えるような一般には浸透していない敷居の高く難しい専門用語大盛でそれらしい内容をこしらえる……自分は優秀ですアピール!!すると、もう1つ疑惑が晴れるコトがある……なーんだ?」

チッチッチッチッチッ、ピーン!

と、一人で時計の秒針の真似をして、彼女は独り言を続ける。こんな虚しい業務についていると、独り言くらいは愉快にしないとやってられないのだ。

「今まで言ってきた愚痴、苦言、ネットの書き込み工作が、追い出しパワハラになったっていう疑惑、汚名返上!」

迫害犯、差別主義の犯罪団体であるという疑いは少しでも減らさないと、保身は厳しくなってくるだろう。

「制限制度の改正は、データに基づき、専門性から鑑みた正当なる案だって説得出来たら世論を説得出来る、早いうちに工作を仕上げないとぉ!」


はぁーあ……彼女はため息を吐きながらぼんやりと窓の外を見上げた。

「フローさん、遅いなぁ……」


2021/7/102:11







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