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【音闇クルフィ】  作者: たくひあい
ミライとめぐめぐ
146/241

痛み




・・・・・




――どうして、いつも…………なの……











知ってる……




この光景。


昔も、観たことがある。




「……」


光に包まれて、一切の前後感覚がわからなくなって――







あの子の声がする。




「――私は、平気、傷付いたって、何度、抉られるような想いをしたって……それは、みんなも同じでしょう?」




「――……」


なんて応えたんだっけ。


何か、答えたんだっけ。




「傷ってね、あればあるだけ、痛く無くなるんだよ。だから、もう平気」




 そう、彼女がやっぱり、笑っていて、だけどちょっと困惑していて……


 痛みも悲しみも、本当は何処にも無いみたいに。自分が守るものも、戦う理由も、本当は何処にも無いみたいに。






「傷を避けるなんて、不可能なんだよ。心の痛みを避けるなんて出来やしない。みんなそう。


どう戦っても、何をしても、私はきっと同じように傷つくし……その度に、貴方が無意味に傷付く必要がある?」






嘘だ。


無意味な戦いなんか、





「無意味だよ。馬鹿で、間抜けだ。傷を数えたりしなければ、わざわざ嘆いたりしないで済むんだよ。ね?」





全部、面白いなぁ、全部、全部、





「傷ってね、あればあるだけ、痛く無くなるんだよ」








・・・・・







「あ、起きた」




声がして目を覚ます。


――どこかの通路のようだった。


ミライちゃんが、コトを覗き込んでいる。


腹の上にニワトリのぬいぐるみが乗せられていた。


「――――?」


さっき、ドアを開けていたはずじゃ……


ニワトリを撫でながら考えて居ると、彼女も不思議そうに答える。


「さぁ? わからないけど、私もみんなもさっきまで、此処に倒れてたんだ」


「そうなんだ」




  普通のドアじゃなさそうだったし、移動するときの環境の変化で体への負荷があるのかもしれない。






「でも良かった、ちゃんと起きてくれて」


ミライちゃんがほっと胸を撫で下ろす。




「コトちゃんって無茶ばっかりするんだもん……って、私がさせてるのかな。……もう少し心配かけないように、ならないと」




 目の前で彼女がなにやら呟いているけれどよく聞き取れない。


 ゆっくりと身体を起こす。




辺りは柱がいくつも立ち並ぶ……床も壁もツルツルした光沢のある真っ白い空間だ。少なくとも、キメラの国ではなさそうだけど……




 通って来たドアはというと、穴が開いた反対側の壁際で、佇んでいる。


とりあえず、あそこから出てきた場所が此処のようだ。





「――なんか……昔もこんなことを言った気がするなぁ」


ミライちゃんがクスクスと笑っている。


「俺も……昔、聞いた気がする」


ニワトリを抱えて立ち上がりながら、コトも呟いた。


「えー、なにそれ」


変なツボに入ったのか、ミライちゃんは更に笑っている。


「他のみんなは?」


辺りを見渡すが、自分たち以外、誰も居ない。やけに静かだ。


「もう少し先に行ってるよ。私はコトちゃんを呼びに来たの」


ミライちゃんは、平然とフロアの奥を指差す。




「――前から言いたかったけど、なんでちゃん付けなんだ?」


「え、呼び捨ての方が良かったりする? それともコトコトの方が、良い?」


「カレーやシチューみたいに言うな」


「我が儘だなぁ、じゃあ、30字以内。はい、今コマンドが出現~」


「してない」


「……。聞かれてもわかんないよ。ナントカ君って、幼稚園のときにずっと使ってたし、子どもっぽいかなって。ちゃんもそうだけど……そんなに嫌かなぁ」






はぁ、と至極どうでも良さそうにため息をつきながらミライちゃんが歩いていく。


が――途中でくるりと振り返り、嬉しそうに言う。





「あっ。いっそ『きゅん』か『たん』にしよう」


「悪化させないでくれ」


「えー、いきなり呼び捨てにしたら、なんか逆になんかあったとか疑われない? コトさん?」


「…………、好きにしてくれ」


「やったー!」


ミライちゃんが両腕を上げて喜んでいる。


そこまで大喜びするようなものでも無いだろうに。




 フロアを進んで行く。


と、言っても特筆するような事は特にない。


何もない場所。


誰の気配も感じない。





――……




「なにか、言った?」


ふと、彼女がこっちを振り向く。


何も言っていないけど、自分が何かを考えているのがわかるのかもしれない。


コトはいつも通りの様子で呟いた。




「……ちょっと、思い出したことがあるだけ」










>>>







――それとも……貴方がそうして欲しいのかな、貴方の願いを叶えたいから、私に言うのかな? 


痛いところがあるから、私が気になるのでしょう?


痛いうちは、痛いものね。 


アハハハハハハハハ!!





(――わかっている)


君が言いたいのはこれだけだ。


『放って置いてくれ』


『同情的になる必要は無い。治してあげる、だから――』




悲しいくらいに、その拒絶がわかってしまう。





「傷を避けるなんて、不可能なんだよ」






だから、あればあるだけ痛くも怖くも無くなるんだ。





2023/11/22/3:11

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