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・・・・
――――ごめんなさい、笑っちゃった。
笑い声。
笑い声がする。
――――自分に理解出来ない物が好きな人って、どうしてか、……ふふふふ、どうしてか、笑っちゃう。
笑い声。
笑い声がする。
笑い声。笑い声がする。
――――だから、晒すのか? だから、晒して鑑賞する為に皆でこんな事。
――――ふふふふ。だぁって、貴方が好きなんだもの。だからみんなに見て貰いたくて
皆がAIに苦戦する中。
彼女は、一人、廊下を歩いていた。
行く当てもなく……もしかするとあったのかもしれないけれど、今はとにかく無意識に歩いていた。
――――ねぇ。あの場に居ないんだ? みんなが大変な目に合っているのに
『何者か』が、少女の背中に囁く。
彼女はそれを知覚していながらも、特に振り向くことなく首を横に振った。
「無理だよ。だって、あんなところに居たら、私、また……」
血を思い出す。
流れる血。沸き立つ血。指先を伝う、あの赤色。
――――だから殺したんだ──人殺し!
『人殺し』
「此処で全員を、殺しちゃう」
独り言。
不安に揺れる幼い子どものような頼りない声音が、ポツリと廊下に零れ落ちる。
笑い声。
笑い声がする。
笑い声。笑い声がする。
――――あのときもさ、名前を、身分、意味付けられる総てを全部変えちゃえば良かったのに。
そいつらが、貴方を助けてくれるわけでもないんだし。
誰も得をしないのに、なんで縛り付けてるの?
だってほら。結局、笑ってただけだよ。
真実を告げても、笑ってただけだよ。
酷くない? 酷いよね? 要らないっていったモノは押し付けるのに、
なんで受け取らないんだって言うのに。
彼女は、声に何も答えない。
やがてその目の前、右手をついた廊下の壁が歪み、暗くぽっかりと開いた穴が出現した。
――――ね、良いの? 本当に、良いの?
だってこれから、みんなが『あちら側に行く』んでしょう?
そしたら貴方のこと……
「あぁ」
やっぱり、と壁の穴を確認するように撫でて、彼女はその中に向かう。
声には応えない。
「通じてたんだ」
――――ごめんなさい、笑っちゃった。
――――ごめんなさい、笑っちゃった。
――――ごめんなさい、笑っちゃった。
真っ暗な闇の中。彼女も笑ってみた。
2023年7月9日22時58分




