イレイ
なんだったんだ、と口々に言いつつ、下の階を目指す。
降りるにつれ、上がって来る時に使った謎空間はなくなっていることが判明した。とはいえ、階段を地道に降りるのもキツい。
いざとなったら瞬間移動しても良かったが、力の消費が大きく、付加が掛かるので出来るだけ温存しておきたくもある。
途中で、キャンディの持っている端末が鳴った。
「はい……」
受話器に耳をあてると、聞きなれた女性の声がした。
――――古の魔女に会ったようね。
「あぁ。はい、そうです」
内心ドギマギしながら、どうにか言葉を紡ぐ。
――――そう。もう、時期なのね。
彼女が、例え蛇を伝って出て来たとしても、やはり……結界を新しくするしか……
なんだかため息まじりに、ぶつぶつと、何か言い始めた【彼女】に、キャンディはおずおずと質問する。
「あの……? あれって、やっぱりこのタワーが関係してたんですか。その、一体、あれは」
――――そうねぇ、これは貴方たちにもいつか、お話しようと。
コトが揃っているときに言おうと思っていたんだけれど……
どうしようかしら。
でも、まずあれと関わった貴方たちに話しておくべきかしら。
この塔の役割は、実は大きく分けて3つあったの。
ひとつはテレビ等の電波塔。
ふたつは貴方たちもご存じの通り、魔力制御塔。
みっつめは、実は、『イレイシステム』の為のものだった。
「イレイ……?」
――――えぇ。古の血を鎮め続ける為の、慰霊碑。
なぜ電波塔と融合しているのかとかは、今は、ちょっと複雑すぎるから、おいおい話そうと思う。
此処が昔森だった頃に……私が、この大地に降り立ったときに、
ちょっとあってね。
……悲しいことが、あって。
それで、彼女を封じたこの場所に塔を建て、込神町で一番高いこの場所を、彼女の安息の地とし、彼女はこの町一体の神になった。
神様の込められた地。
それが――――今でいう込神町の始まり。
――――だけど、塔を壊そうとしたり、彼女のことを否定しようとする人が出るたびに事故が耐えなくて。
自分のことのように、彼女の痛みに少しでも共鳴出来たら。
彼女の為により強く結界を張ろうと思えると、思ったの。
込神町を守ってくださる代わりに結界に神様の名を組み込んである。
彼女を受け入れ続け、一心同体のように痛みを感じる為。
だけど本当は神罰の危険もある。
だから、あちこちにイレイシステムを作った。
それで、その蛇は……
彼女が何かを言いかける。しかし、通話は切られてしまった。
「なんだって?」
テネがすぐ後ろから聞いてくる。
「さぁ、でもなんか、込神町で一番高い此処に慰霊システムを組み込んだ事に、古の魔女が関係していたみたいだ」
2023年5月19日




