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【音闇クルフィ】  作者: たくひあい
ミライとめぐめぐ
114/241

気持ち悪い水性ペンと櫻子さん


数分後…




「メテト様?」

「でちたちはゲシュタルトの民──概念的亜空間外殻層、ゲシュタルトを通って来たでち。そしてこれがでちたちの身体」


 ミライが事情を話して欲しいと言ったところ、わりとすんなり事情を聞くことが出来た。


「ふむふむ」

 数年前にある事情で開いた概念経路……呪文の流れ道にたまに生まれるバグのようなものらしいそれが、タワーに生じた。

結界の綻び、共通点のような点在するポイントで、マモノが抜け穴に出来るらしい。

 メテト様たちはゲシュタルトから、この共通点を広げ、地上を支配する目的で、

ベツセカイにおけるゲシュタルトを支配する王──テールロネスの命により送り込まれている。

 蝙蝠のような羽としっぽを持ち、人型のキメラである。


 しかし、ゲシュタルトを増幅させ、共通点を広げるには物量作戦パワーゲームを組み込むことが必須。それでも成功率は低いのだが……



 少し回復したコトが、ニワトリさんを抱えたまま、

「それで、野望はともかく、今んとこ、メテトってのは何しに来たんだ?」

と聞いた。

「実は……、ベツセカイでも……いや、仲間でも無い奴に話すことは無い。これはでちたちの問題」

何か言いかけて、でちは顔をそむけた。

「じゃあ友達になろう、そしたら皆の問題になるかな?」

ミライちゃん、ははりきって挙手した。

でちは唖然として黙っている。


「用が済んだら絶縁するからさ!」

ミライちゃんはウインクした。

「極端!!」

でちは突っ込んだ。




「でも、まぁ、なんでもいいんだけど、私も探すよ、此処広いから、みんなで行くほうが安心でしょ?」

ミライちゃん、は改めて言う。

「それにさっきの人、怪我してたみたいだし、手当てしなくちゃ」

「怪我、してるのか?」

コトはぎょっとしたあと、何かに思い当たったように「そうか……俺……」と言ってややしゅんとなった。

「なんでだろう。心がなくなっていくのに自分じゃ止められないんだ。外にどんどん溢れだして、身体が勝手に動いてて」

「コト……」

「監視カメラに抜かれてたら危ないかもな。俺も覚えてないのに、貼り出されそう」

「……」

ミライちゃんは何か考えていたが、やがて

「不思議な偶然だけど──、あの人、ちょっと櫻子さんに似ていたな」と言った。

「え?」

「昔のご近所さん。趣味が合うのかな、図書館で会うといつも私と同じ本、借りてたんだよ」

「櫻子さん? 櫻子さんという人はどんな方でちか」

でちが唐突に興味を持ってたずねる。

「えっとねー、図書館行くと何故かいつも私と同じ本借りてて、手で三角みたいなポーズをするのが癖で、冷静で……『馬鹿だな』とか言ってて、」



呑気に語り合いながら、廊下を歩きだして────ミライちゃんは叫んだ。


「うわっ、水性ペンを水に浸したみたいになってて気持ち悪!」

水性ペンを水に浸したみたい、は言い得て妙だった。景色のあちこちが奇妙に歪んでぼやけて、変なグラデーションになっている。

────気持ち悪い


「いきなり立ち上がったから、まだ情報処理が追い付いてないんだ」

コトはコトで、似たような風景を見ていた。

「多少回復してきた、からなのかな」

でもこれはこれで、どこに焦点を置くべきかわからない。幻覚というより、心が不安定

で情報の最終的な軸が安定しないといった方が正確だった。


ニワトリさん、やメロちゃんが、率先してフロアを歩き始める。

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