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【音闇クルフィ】  作者: たくひあい
ミライとめぐめぐ
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軍事用衛星/ゲシュタルト



その頃。


「そんなぁ……」

 キャノはタワーの前で立ち尽くしていた。

一度外に出て、リンゴを置きに行って、そのあと管理センターに連絡を入れたり、上に侵入者の報告をしたりして――戻って来たものの、

再び戻ろうにも入口のドアのセキュリティーが反応しないのだ。

 認証されている筈の自分が弾かれているなんて、どうしたんだろう。


こんなことは初めてだった。

 ――――なんだか此処数日、嫌な事が重なる気がする。

鈍く痛み出した腕を擦りながら、ため息を吐く。


 まぁ、落ち込んで居てもしょうがない。

報告しようと再び端末を開くと、リルからメッセージが残っていた。

タワーでなにやら問題が起きているらしい。

 ヘンゼルとグレーテルを思い出すような、古の魔女の一人が現れたとも書かれている。

ときどき出没しているようで、前にも一度会ったかもしれないらしい。

 今回、依り代にされた蛇を倒すと消滅したようだが、依り代をすぐに用意出来てしまう程強い念がまだ残っているという事実は衝撃である。



――と。

『働いてない家族、寝る時間も起きる時間もバラバラなの見てて酷い!』



頭上の音声通信が入った。

これは、以前バニラちゃんのときに管理会社に仕掛けた盗聴器からのものだろう。

 一般男性のような声で、

ところどころ、ハァハァと荒い息が聞こえる。


『そのクセ、起きたのが遅すぎて何もする時間がなくて凹むとか言ってるのほんと笑えない。もういい歳なんだから自己管理くらいちゃんとしろと。時間通りに起きないから割いてる時間が無駄すぎる』

(……んん?)

『ずっと張り付いて見てるんだけどさぁ、あぁァァァ ぶち殴りてぇ!!』

『1回ホントに人の気持ちを考えれるようになった方がいいわ』

誰の事だろう……

 家族が居る人を見張ってるようなので、

単身で来ているキャノ達の事ではなさそうだ。

いや、いつも居るメンバーでせめて家族が居て、バラバラに生活してるというと、当てはまるのはコトくらいか……まだ彼と決まったわけではないが、そんな風に考えてみる。


『いやー、奴はとにかく大量に作る、かの人が当番の時は毎食満漢全席、私たちは二人でルームシェア、テーブルとカウンターには見た目が茶色の大皿がズラリ』

『奴はやっばいですよー! バケモノ!

作り置きのような量をそのまま食卓に並べる。一食でキャベツ一玉と豚肉800グラム消化、すごい大家族で育ってきたのかなぁと思いましたから。

これで「フードロスが」「エコな暮らしが」「節約が」とか言ってるから失笑

とりあえず箸を付ける前に半分の量を保存容器に詰めることから、夕飯が始まる。いやーご実家のこととやかく言いたくないけど、やっぱり問題のある家庭で育ってきた人って、どこか歪んでいるね』



パリーン、と何か割れる音が響く。

 何かが勢いよく腕にぶつかったらしい。

マグカップがぁあ、という悲鳴。

数秒の沈黙。やがて


『食への執着がすごい通り越してヒドイんすよ!奴!』と続けた。


 (――満漢全席?)

コトの家は、中華料理の宴会様式なんだろうか。

どこか……盛られているような気もしなくはないんだけど。


『今回もこれ入れて書く。「荒廃した世界の魔物は彷徨う」お金無い時の天引きってやつだ』


通信が途切れる。

(お金無い時の天引き、監視……)

まるで、随分昔から監視を続けてきた常習犯のような言いぐさだけど。

書くというのは、いつも監視した内容を小説か何かに取り入れて作品を作り続けて来ている……そんな作風が存在しているということだろうか。

 発達した科学技術を悪用してスパイを繰り返し、

 映像作品や本などの媒体にまで情報操作の手が及んでいる……

 有り得る。なんてチートなのだろう。

 (んー、近くに怪しい監視衛星やカメラが無いか今度キャンディに聞いてみよう……)

 軍事用の衛星って事も考えられるし……


キャノは再び手を伸ばし、タワーに触れる。

「結界には、入れる……んだよな」

と、いう事は。認証はあるってわけで、でも、ドアが開かないってことは、内部のシステム側の問題ってことで……何らかの変化が在ったのだろうか。


と、今度は、タワーからけたたましい警告音が鳴り出した。

「侵入者!?」

振り向くと、堀の深い俳優のような出で立ちの男性が立って居た。

「そう、侵入者!」

ニッ、と歯を見せて笑った。



 ナナカマドさんから、通信が入る。

それによると、なにやら、タワーの異変を嗅ぎ付けられてはまずい連中が集まっているようだ。「イカボウズ」「LPの東成くつお」「ベヨネッタ」

魔女狩り《ハンター》組織が分離して先鋭化したものに属するようだが、

LPに関しては指名手配犯である。そして、こいつは――


「東成くつお……」

「ゲシュタルトに仕掛ける物量作戦パワーゲームってことで」

東成は迷うことなく真っ直ぐに歩いてくると、

「先日は、ウチの南瓜が世話になったね」と、キャノに囁いた。



キャノは彼を睨み付けた。


「──あんな風に、公共放送で示し合わせて番組を流すなんて! 迷惑してるんだから!」

「おや。まるで、まだ続いてるかのような言い草だ」


君とはもっと仲良くしたいのだけど……と彼は残念そうにため息を吐いた。

「そうね……その可能性があれば良かったけど、現状、難しいかな」

 キャノもなにか、『あの日』の事について情報を持っていないかなと期待したかったけれど、

直接的にテロリストの相手をするのも厄介である。向こうからも目を付けられていては面倒でしかない。


「たまたま料理番組のスポンサーが切れただけじゃない。どうせまだ続いてるんでしょう!」

東成は、どうかな、とニヤニヤするだけだった。


「今度はタワーを乗っ取って、電波ジャックってわけね」

中芯タワーは、込神町随一の電波・魔力塔だ。街中の電波を乗っ取っるにはちょうど良く、テロリストの標的になっていても不思議ではない。



2023年5月3日23時53分






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