空洞の二人
それを確認して、一度フォルダだけ閉じる。
とりあえず、コトの身が心配だ。
何があったかは知らないが、回復するまでのしばらくの時間、喋ったり見たり聞いたりに障害が生じるだろう。
「取り出すこと、出来るよ?」
足元でメロちゃんが呟いた。
「取り出す事、出来るけど……する?」
「取り出す、って」
首を傾げるミライちゃん、にニワトリさんが近付く。
「ミライちゃんや、コトは、普通の人と違って、自分の中がほとんど空洞だから。出来ると思うけど」
「メロたち、カオスの集合体。神の一部。ナナカマドさんは生れては否定される者達を、こうして、いつも、生まれさせてくれた……だから、コトが消えるの、悲しい、でしょ?」
「メロちゃん……ニワトリさん」
ニワトリさん、を抱え上げると、そっとコトの腹部に置く。
呼吸で上下しているのに合わせて、ニワトリさんも揺れていた。
「まだ、大丈夫。……でも、もしものときは、お願いね」
さて、みんなを探しに行こう。
コトは背負っていくべきか、誰かに任せた方がいいのか……
ミライちゃん、が考えているときだった。
「なぜ取り出さない!」
またしても、声が響いた。
「え?」
後ろの、さっきまで氷漬けだったスペースに見知らぬ黒ローブが居た。
「……あの、あなたは」
「そんなぬいぐるみが何になる! 貴様は酷い奴だ。取り出せ、こいつが回復する方が」
ずかずかと歩いて来るなり、コトの上に乗せていたニワトリさんを鷲掴んだ。
「やめて!」
ミライちゃん、は悲鳴を上げる。
「人間が先だ」
「酷いこと、しないで」
手を伸ばすも、彼女は手のひらから謎の波動を放った。
「きゃっ!」
「もっと悲惨な状態になるまで見定めるという事か……つくづく鬼だな」
砂埃が舞う。
壁に叩きつけられた背中が痛い。咳込みながらミライは立ち上がった。
「あなたは……何も、わかってない」
意識が揺らぐ。
視界がぼやけている。
「――――……」
心が、
「 」
なにを、言おうとしたんだっけ。
「 、ぅ」
なにか、言っている筈なのに自分にすら聞こえない。
真っ白だ。
感覚が足りない。
さっき、誰と話していたんだっけ。
話をしていたっけ。
イメージが、足りない。イメージも、座標も、わからない。
全てに靄がかかって、自分が何をしたいのかも、
起きてるのか寝てるのかもわからなくて、
「ぁ――――」
メロちゃん、の感覚をなんとなく捉えることにだけ集中する。
メロちゃん……
何処かでサイレンの音がしている。下で何かあったのだろう。
4月30日23:20‐2023年5月2日1時51分_5月3日14:51




