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【音闇クルフィ】  作者: たくひあい
ミライとめぐめぐ
104/240

長男の呪い

あぁ、別に、隠すほどのことじゃないから教えてあげる。

世界の、ほんの一部。







・・・・


 エレベーターが揺れる。

コトはその動きに身を任せたまま、端末を耳に当てた。その向こうからは、『彼女』の声が聞こえてくる。








「数年前────それとも50年くらい前かしら?」


彼女は語る。



「戦争があってね……その戦争は、表向き終わったんだけれど」




まだ終わっていないもう一つの戦いのこと。





「でもね、代わりに地上を覆うようになって居たのが、いわゆる『長男の呪い』」



 この呪い自体は随分昔からあって、戦国時代とかの念も混ざってるんだか、未だに祓えていない。

 神と関わる者たちによって鎮められていた……んだけど、全部じゃなかった。

 抑えきれない呪いの一部はやがて地表から顔を出し、人々に憑りついていた。



  いわゆる、ある条件をもつ血筋の、妹に濃く現れたようね。




「妹、ですか」


「そう、妹」



妹。


「──妹、それも、兄に殺されるか奪われるか、その運命の天秤にかけられる妹」


妹。



「とりつく、って」

「えぇ──だから、兄が豹変して襲い掛かるようになる、だとか」



「それって、兄が呪われてるんじゃ」

「うーん、言葉で上手く表せないけど、

大抵は妹が居るときに起こる異変でね、やっぱり妹に何かあると思われるの。

彼女たちは祟りなんて呼ばれ、お前は祟り神だ、狸が憑りついてる、そういう解釈をして酷い扱いを受ける事もあった。

表沙汰にならないけど、死亡例もある」


 口々に「め……ぐ……」と唸るように喋っていたとも言われるけれど、詳しく文献にあるわけじゃない。

第一何を意味する言葉かはわからないし……

「……」

「まあ、あまり此処では言えない事もあるけれど……暗に妹にしか通じないメッセージが、世界規模でメモリージングっていうのをされていたのもより強めた一因だと思う」

「?」

「ほら、情報操作。今もやってるやつ」

「なるほど……」


あの南瓜を思い出す。

 呪文が効力を持つこの町では、情報操作によってアレコレ出来てしまう。呪いそのものを操ることも、ハリーヨウやタレントを利用して呪文を他人の口から唱えさせることも。

それは、些細で単純なことのようで、とても危険だった。



「ある程度の攻撃性、効力は私が一次元に封じ、抑えたつもりだったんだけど……他の次元はコードが違うから、封じ切れてないみたい。

情報操作や呪文の書き替えを阻止しても、生身の人間の生体内に残る記述は、我々でも書き替えるのが難しいから」

「……」

「その次の世代ごとに、生まれてくる子ども。そこに、概念が残り、遺伝子レベルで妹にだけ作用してもいた」



妹にだけ……


「作用って、その、暗示みたいなものですか?」


「えぇ。それであちこちで、妹に現れる症状として、兄や周囲が凶暴化する、というのがあった。

突然暴れ出し、『とっとと成仏しろ』、とか喚き回って、『妹はうちの妹じゃない』、と騒いだり、……『うちは渡さない』『こいつがなぜ死なないんだ』とかあちこち、どの長男も騒いだり――――最後に彼らは決まって『なにも覚えてない』と言う。特に長男が豹変する、長男の呪い」

「成仏って、まだ死んでも無いのに?」


「えぇ、そう。この事実はかつて加害に関わった人たちが『意味を持つ、作られた者』と言って喚いた事からもわかる。

彼女たちは生れたばかりで既に、亡霊だとかなんとか恐れられていた。その真意は、この長男の呪いにあったの」

 






   あるとき、一人の『妹』が、生れる。

  聡明な彼女は気付く。

 『妹はうちの妹じゃない』『うちは渡さない』『こいつがなぜ死なないんだ』『とっとと成仏しろ』

 過去に向けられた言葉を聞いて居るのが現在の自分だという事、周囲が何も覚えていないままに襲い掛かって来る事。

 その起点が総て、長男から始まること。

      


「長男の呪いは、一番禁忌とされる、命をつかった呪いなの。……だから、払われることが無い。――――そして、同じ起点が揃えばまた陣になるでしょう。

「――――それって、いい事なんですか?」

「わからない。確かなのは、長男を偏って神聖視する集団が街に残ったように、そこまでして強引に根を張ったように、まだこれは続いてる」




 まるで自分のことのように胸が痛んだ。

彼女は居て、何処にも居ない。生れた時から。

オリジナルが、オリジナルで居続ける事すら無かった……





「その余波、という言い方も変ね。機械事故のとき、魔力を吸収してるこのタワーは、『妹』を柱に据えた」








 通話を切り、エレベーターの行く先を見上げる。

もうすぐ最上階のはずだ。

 確か、ミコ……ミライちゃんが、いつだったかそのような事を言っていた気がする。

俺の起点が何処にあるのか。

俺が俺である為の。そこから俺が始まった場所。

俺が俺で居続けた事が、心が在っただろうか?















――――あの子はね、わかって欲しいんだよ。


まだ、伝わってない想いが此処にあるって。


誰からも否定された、本当に存在したかった想いを、存在に託したの。


私達の中に、



私達の繋がる先に、 


「その想いを受け取れる、私達だから」




(4月25日AM9:30加筆)

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