ミライちゃんとメロちゃん
どくん、どくん、どくん、どくん。
――――みんなが先に歩いていく。
遠ざかっていく。
呼吸がおぼつかない。心臓が暴れている。
苦しい。胸が痛い。
こわい。
なんで……なんでこんなに、恐いんだろう。
ココロが、吸い取られて、消えていくみたいな。
真っ白な――――
体が、動こうとしない。
(震えてる……)
――――ミライちゃん!
――――ミライちゃん!
――――ミライちゃんミライちゃんミライミライミライちゃん!
ぷつりと理性が切れた途端に、急速に真っ白になっていく視界。
ミライちゃん、には「誰かが手を引いている。呼んでいる」
こと以外がわからない。
「誰?」
なにも、わからないよ。
なにも、見えないよ。
なにも、聞こえないよ。
なにも、
「ミライちゃん!!」
ぴょこん、と何かが膝に乗った。
いつの間にかしゃがみ込んでいたらしい。
「ミライちゃん、消耗しすぎだよ、大丈夫?」
突然視界に映る、ふさふさの長い耳、
白い、肌。
あのおじさんが渡していった、なんだか暖かい波動を感じる、ぬいぐるみ。
――――あれ。
メロちゃんだけ、見える……?
「メロちゃん」
ぎゅうぅうう、と、ミライちゃんはメロちゃんを抱きしめた。
「メロちゃん、うわぁ、メロちゃんだぁ、メロちゃん、メロちゃん、メロちゃんて喋るんだー! すごーい!かわいー!」
「喜んでる場合じゃ、ないでしょー!」
腕の中で、ジタバタともがくメロちゃん。
「ミライちゃんてば、私が話しかけなきゃ気が付かないレベルに消耗しちゃってさ。やっぱり、あとを追って来てよかった」
ひょこひょこ、長い耳を動かしながらメロちゃんが言う。
「消耗? なんの」
確かによくわからないが、なんだか疲れている気がする。
メロちゃん以外の風景は未だぼやけたままだ。
急にどうしたんだろう。
どうしてか、そんな世界でもメロちゃんだけは視認出来た。
「その話は後で良いよ、それより、下に降りるよ!」
「ええっ、マオちゃんは?」
「それどころじゃないんだってー! 侵入者!侵入者! さっき、コトから連絡があったんだって」
「そうなんだ……」
ほっとする。
あの部屋に、こんな気持ちのまま入らなくて済んで……ほっとしている。
みんなに、あの部屋を見られなくて済んで――――
(え……?)
自分で思って、動揺する。
なんで、そんなことを思ったんだろうか。あの部屋に行った事無い、はずなのに。
「メロちゃん」
廊下に立ち止まったまま、ミライちゃんは呼ぶ。メロちゃんはすぐに反応した。
「はいはい?」
「メモ帳」
2023年4月15日18時09分




