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メモリーメドレー  作者: 秋猫シュガー
一章・失くした君へ
1/7

メモリーロスト

家に帰るとすぐに自分の部屋に行く。

うるさい妹がいるからではなく平均ギリギリで高校入学した俺に愚痴を言う母親から逃げるわけではない。

俺が何故リビングに行かないのか、それは


わからないのだ。


自分が本当にここの家族なのか思い出せない。

思い出が全て消えたのではなく思い出そうとするとほんの少ししか出てこない。

しかしテストなどには影響は無く。

受験生だった俺は高校に入り入学式を終えた。


自分が記憶が出てこなくなった日は約1ヶ月ぐらいの時気付いたら回りが段ボールで散らばっていた所だった。

まず、俺はダンボールの中を見てどうしてここにいるのか、そして自分の名前を知りたかった。

ダンボールの中を探っていると教科書や参考書がありしっかりと名前が書かれていた。

白坂 灯夜(しらさか とうや)

たぶんこれが俺の名前か。

そう思い他に何か無いか探した。

しかし見つかったのは、教科書や白紙のノート位だった。

家族にも話そうと考えたが何かに遮られるような感じになり喋れなくなる。

しかしそれ以外の情報は手に入ったのであたふたしなくて済んだ。

妹の明花めいかに色々と教えてもらった。(え、ド忘れ?って顔をされたが)


まず、俺の通う学校は中高が合わさった学校である事。

そして俺は高校一年で明花は中学三年である事。

以上が俺が教えてもらった記憶、俺が思い出した大切だったはずの記憶。


朝、ベッドの上から降りると顔を洗いに洗面所に行く。

顔を洗い前にある鏡を見る。

黒い髪、黒い目、何かに怯えるような顔、これが今の自分。

記憶が失くなる前の俺もこんな顔をしていたのだろうか?

そして俺はキッチンに行きサラダを冷蔵庫から出してコンロに火をつけてフライパンを置きその上に卵を落とし2枚の食パンをトースターに入れた。

なぜか朝起きると必ず朝食を作る。

自分でも驚いているがたぶん前から作っていて体に染み付いているのだろう。

両親は俺が起きる前から起きて仕事に行っている。

朝食を作り終えると二階からゴトっと何かが落ちる音がした。

そして明花が階段から降りてきた。

「お兄ちゃんおはよー」

「おはよ」

そして二人で朝食を食べ始めた。


東川ひがしがわ中高学校は、俺と明花の通う学校だ。

前の学校はどんな感じだったのだろう。

そう思いながら俺は教室に入った。

周りには中学からの友達と喋っている感じだ。

チャイムが鳴り担当の教師が入ってきた。

見た目はキリッっとした目とメガネでブラウン色の髪が背中まで届いている。

「みなさんおはようございます。今日からこのクラスの担任になった奥原おくはらりんです、よろしくお願いします」

そう言うと、教科書を配られて学校のルールなどを聞いて今日の授業は終わった。

俺が帰りの支度をしていると教室の開いた窓から一匹の黒猫が入ってきた。

一瞬驚いたが、周りの生徒達は全く気にしていない様子だった。

この辺りだと普通なのだろう。

俺は帰りの支度を済まして教室を出た。

中高共通の学校だが終わる時間は違うようで自分は一人で校門を出た。

少し道を歩いているとさっきの黒猫が立ってこっちを見ていた。

「?」

俺がこっちを見たのがわかったのか黒猫は狭い道に入ってまたこちらを見た。

「来いってことか?」

まさかと思ってそう言ったら黒猫が頷いたような仕草をした。

後々考えるとほんとにそうだったかわからない程だったのにこの時の俺はそう思い込んでいた。

そして俺は黒猫の後を追いかけていった。

黒猫はちょくちょく俺の方を見ながら奥に進んでいった。

黒猫は塀の上を歩いたり人が通れるギリギリの道を進んでいった。

俺はその道を進む前に制服をカバンにしまい続いていった。

そして数分後狭い道から出ると目の前に古びた家の前に出た。

黒猫はその家に近づいて器用にインターホンを鳴らした。

少しかすれたチャイム音がして中から俺より5~7cm位でフードを目が少し見えない程に被っている小さい子供が出てきた。

「なんだクロすけ、客か?」

その声は高く少女だとわかる。

少女は言って俺を見ると少し驚いたような顔をして。

「なんか用か?」

「えっと、なんとなく黒猫についてきただけで……その、用とかはなく」

「黒猫」

少女はそう言うと黒猫を抱き抱えて。

「この猫か?」

「うん」

俺がそう言うと少女は黒猫と話をするみたいにじっと目と目を合わせてまたこっちを向いた。

「ねえ、名前は?」

「え?灯夜」

「東川中高学校の人か?」

「う、うんそうだけど……」

「よし、じゃあ明日の放課後、中学校舎の3-B教室に来てくれるか?」

「は、はあ」

俺がそう言うと少女はメモ用紙に何かを書いて渡してきた。

それを見ると。

『中学3-B 小川おがわ 真保まほ

「じゃあ、よろしくな」

小川さんがそう言うと俺はあることを思い出した。

「あの、通りに出る道ってどっちですか?」

「え?」

そして俺は帰り道を教えてもらい無事に家に帰ってきたのであった。

そういえば、3-Bって明花のクラスだったな。


次の日、俺は朝食を作り妹が起きてくる昨日と変わらない朝。

だが、それは俺の一言で終わってしまう。

「なあ、明花と同じクラスの小川真保ってどんな人だ?」

ぶぴぃー

明花が味噌汁を吹いた。

「はあ!?何で急に」

なんでだろ、何か明花の顔が怖い。

「いや、昨日帰りに会って話したら『明日、学校で』って言われてクラスが書かれた紙見たらお前と同じクラスって知って」

「で、行くの?」

何かますます怖くなってきた。

「まあ、行かなきゃいけないだろ?」

「……やっぱ、お兄ちゃんは年下が好きなんだ……」ボソッ

「何か言ったか?」

「いや、ぜーんぜん」

そう明花は少し怒った感じで学校へ行ってしまった。


そして、放課後自分は3-bの教室に向かった。

この学校は校舎が3つあり、中学生の教室がある校舎、図書室や移動授業などで使う教室がある校舎、高校生の教室がある校舎に分かれていて校舎の間には渡り廊下がありいちいち外に出なくても隣の校舎に行ける。

教室に着くと中には明花と真保がいた。

「明花帰らないのか?」

「お兄ちゃんがクラスメートに何するのか気になってね」

明花は怒りながらそう言った。

「……話は終わった?」

すると近くで話を聞いていた真保がそう言うと、明花の怒った顔で真保の方を見て。

「んで真保!お兄ちゃんに用って何!」

「幽霊探し」

その時何かが切れるような音がした。

「んなもん誰が信じるかーー!」

「明花!?」

いきなり明花が真保に飛び付こうとした所を押さえつけて真保の方を見た。

「で、幽霊探しとはどういう事だ?」

「こいつみたいなのを探す」

真保はいつの間にかいた黒猫、黒すけを掴み上げた。

「猫探し?」

「え、猫って?お兄ちゃん何言ってるの?」

すると、いつの間にか 落ち着いていた明花がそう言った。

「今、今川さんが持ってるだろ?」

「真保ちゃん何にも持ってないよ」

「……え?」

真保はまだクロすけを持っている。

明花は見えないと嘘を言っているのか、俺の幻覚なのか。

「あの、今川さん猫持っていますよね?」

それを決めるのは真保の一言で決まる。

「猫じゃない幽霊」

「「幽霊!?」」

俺と明花が言うと真保はうなずいた。

「……えっと、どうゆう事だ?」

「この子は幽霊だから普通の人は見れない」

真保がそう言って説明すると、明花は俺より早く頭の整理が終わったらしく落ち着いていた。

「じゃあ、私だけ見れないの?……二人ともずるい!私にも見えるようにはならないの!?」

明花はずるいずるいと今にも暴れそうだった。

「出来ないわけじゃない、けどそれには条件として()()()を一つ失なわないといけない」

「初めて?どうゆう事?」

明花がよくわからない顔をしてると真保が教えてくれた。

「『初めて何かをした』という経験を失う事になる」

「え、それって選べるの?」

「いいや、ランダム」

そう言われ明花は少し悩んで。

「いいよ!やって!」

「……ほんとにいいの?」

「いいって言った」

明花がそう言うと真保カバンから一枚の紙を取り出した。

「それは?」

「幽霊が見えるようになるお札、このお札を額に当てればいい」

そして真保は明花の額にお札を貼るとお札から光が出て何かが浮かび上がった。

その浮かび上がったのを明花が見ると。

「゛ファーストキス゛を失いました……え?ふ、ファーストキス!?」

明花が膝から崩れ落ちた。

「大丈夫か?」

「うう、ありがとうお兄ちゃん。ねえ真保、私のファーストキスって誰に取られたの?」

「あ、それは自分で決めれるよ」

「え!?本当!?」

さっきまでの落ち込みが嘘のように真保の一言で明花の顔は明るくなった。

「どうするの!?」

「……顔が近い。お札の下のスペースにその名前を入れるだけ」

「やったあ!」

明花はそう言ってペンを取り出し何かを書き始めた。

「何書いてるんだ?」

「えへへ~内緒」

明花はちょっと頬を赤くしニヤニヤしながらペンを動かしていた。

そして書き終わるとお札をカバンの中にしまい込んだ。

「じゃあ、本題に戻るのね」

そしてまた真保の幽霊探しの話がはじまった。

「まずこれが見える?」

真保はそう言って足下にいたクロすけを持ち上げ明花に見せた。

「黒猫?」

「そう、そしてこいつが幽霊」

「はあ!?」

明花は猫にしか見えない幽霊を見て驚いた。

「まあ、こいつは幽霊の中でもおとなしくて見た目も気持ち悪くない方」

「「えっそうなの?」」

明花と俺の声は兄妹さながらに揃っていた。

「幽霊は強い未練などがあるほど姿は元の姿とは全く違う形になり周りの被害も桁違いになる」

真保そうは言いながら白いチョークで掃除の子が一生懸命にやったであろう綺麗な黒板に分かりやすい絵を描き始めた。

「そして長時間たっても成仏出来ない幽霊はやがて憎しみや怒りなどに体を取られ悪霊になる」

「ふんふん……ねえお兄ちゃん、この猫の名前なに?」

「クロすけだって」

明花は聞いているのかわからない返事をしながらクロすけを撫でていた。

「……そしてその悪霊を成仏させるのが私達徐霊師なの」

「私達?真保の一人じゃないのか?」

「私以外にも徐霊師はいる。けど年々数が減っていてスカウトをしているって感じ」

「そんなに減っているのか?」

「前まではまだ人材不足ではなかったけど三ヶ月前に多くの徐霊師が消息が絶ったままになりしかも霊界とこちらの世界を繋ぐ扉が開くという事が起って私とクロすけで幽霊が見える人を探していた」

よくわからない単語も出て来たがなんとなく大変な事だけはわかった。

「けど、だったら明花に使ったお札を使えばいいんじゃ?」

「あれは数多くの術式が書かれたやつだから量産出来ない」

「え?そんなにすごいのを私に使ってくれたの?」

明花は罪悪感な感じでそう聞いた。

「まあ、普通なら大量の術式で脳が焼き切れてたかもしれないけど灯夜の妹だから大丈夫かなって思って」

何か恐ろしい単語が出た気がした。

「「脳が焼き切れたかもしれなかったの……?」」

「うん」

「「怖い事させてんじゃねーー!」」


こうして明花は幽霊を見えるようになり真保から徐霊師にスカウトされて俺達は学校を出た。

「……ねえ、徐霊師になってくれる?」

「私は無理」

明花はきっぱりと言って。

「難しそうだな」

俺はそう言っておいた。

「そう……」

そして俺と明花は真保と別れて家に帰った。



この物語はカクヨムの方でちまちま出しているのをひとまとめにして出しています。

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