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ショートショート4月~

クソジジイ

作者: たかさば

息子が嫁を連れてきた。


海の向こうから来た嫁。


「はじめまして、父の尚安です。」


「※▽♯?!◎□・・・!」



何言ってんだかさっぱりわからん!!




「父さん、はじめまして、イディリーヌですって言ってるんだよ。」


「なんだそれは。日本に嫁に来たなら日本語で話さんか!」



日本に嫁いだなら、日本語で挨拶するもんだろうが!


何という無作法な嫁なんだ!!


これだから国際結婚なんぞ反対したんだ!!




「お父さん!イーちゃんはまだこっちに来たばかりなのよ!!」


「それがどうした!」



かみさんが息子の嫁を擁護する。


何言ってんだ。お前も何言ってるか微塵もわからんくせに。


ガタイのいい息子の嫁が、なにやら息子と話をしているようだが・・・。



「お前!!日本語で話さんか!!」



息子は聞いたことのない言葉を次から次へと話している。


お前がそんなだからこの娘は日本語を覚えようとしないんじゃないのか!!



「父さん!!僕の愛する人を馬鹿にするのは止めてくれよ!!」




愛するだと?!はっ!!子供の癖に何を腑抜けたことを。


夢見がちで、やりたいことをやって、自由気ままに生きてきたお前が何を偉そうに!


留学なんかさせるんじゃなかった。


こんなわけのわからん嫁連れてくるくらいなら、見合いさせたほうがよかったわ!!







「▽?※☆、◎○△♯・・・?」


「ええ、そう、※▲□$☆・・・。」



このところ、かみさんまでもがおかしな言葉を話すようになって来た。


俺の家で、おかしな言語を話すんじゃない!!!


ここは日本だ!!!


日本語をはなさんかっ!!!




「父さんもいい加減ドイツ語覚えたら?」


「はい、あいん、つばい、どらい・・・言ってみて?」



息子とかみさんが二人がかりで俺に意見をしてくる。



「何で俺が覚えなくてはならんのだ!!!」




嫁が日本語を話すべきなんだ!!!


ここは日本だと何回言ったらわかるんだ!!!




「イーちゃんはまったく日本語知らないのよ?かわいそうじゃないの。」


「俺がぺらぺらだから、日本語話す必要がなくてさ。今勉強してるんだって!」




勉強してるだと?


一言も話さんじゃないか!!


目上の者に対する礼儀がなっとらんわ!!!


これだから外国人は!!!





俺は息子の嫁が来るたびに、日本語で話しかけた。


何言ってるんだかさっぱりわからんが、言いたいことを日本語で言ってやる。


飯がまずい、邪魔だからあっちに行ってろ、ニヤニヤするな、テレビをつけろ、新聞もってこい、犬の散歩に勝手に行くな・・・。


しかし相変わらず、息子の嫁は、おかしな言葉を発するばかり。


何なんだこの嫁は!!!





今日も頭の悪い、日本語を知らぬ息子の嫁がやってきた。




「▽※☆△※♯○★!!」


「何を言ってるんだ!!さっぱりわからんわ!!!」




勢いよくふにゃふにゃ言っていたが、ふと、黙り込んだ。


反省しているのか?


ふん!


日本語もわからんくせに!!


俺より背の高い息子の嫁を見上げて、睨みつける。




「クソジジイ!!」


「!!!!!」




なんだと・・・?!


この俺に、父親に向かって、クソジジイだと・・・?!




「何だお前は!!失礼すぎるだろうが!!!」


「父さん!!」


「お父さん!!子供じゃないんだから!!!」




息子とかみさんがすっ飛んできた。




「こいつが失礼すぎるからじゃないか!!!」


「俺の愛するイディを指差すな!!!」


「お父さんのほうが失礼じゃないの!!!」



この家の中に、俺の味方はいないらしい。


くそう・・・。


こうなったら・・・。




ドイツ語で嫁の悪口を言ってやらねば、気がすまない!!!



俺は老眼鏡をかけて、ドイツ語の入門書を読み始めた。




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[良い点] クックックッ罠に掛かりよった。
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