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ハレゾラに星  作者: れもん
9/28

動き出した心臓

「…ただいま。」



私は家の玄関に入る。


お母さんはまだ帰っていない。



午後九時二十分。



私は家のリビングにある時計を横目に、台所へ行って冷蔵庫を開ける。


そこから大好きなミルクティーを出して、コップいっぱいに注ぐ。


それを一気に飲み干した。





「はぁ…。」





口の中に甘さが広がる。



私はなにか気持ちが晴れないことがあると、決まってミルクティーを飲む。


一気に飲み干すことによって、何となくでもスッキリした気分になる。


だけど今日はいつも以上にもやもやして、思っていたよりも気持ちが落ち着かない。


私はリビングの椅子に座って、さっき拾った指輪を眺めていた。



もしかしたら、女の人が外国人で、キスは当たり前だったのではないか。


そう考えてもみたが、無駄に思えてやめた。



頭が、混乱する。



一体これは誰とのなのだろう。




神楽君が、一気に遠く離れた存在のように感じた。




いつも完璧で、キラキラしてて、私が勝っているところなんてひとつもない。



しかしあの笑顔の向こうには、何かがある。



私は、どうにかして行ってみたくなった。






食欲がなかったので、私は冷蔵庫にあるお母さんの作り置きの晩ご飯をそのままにして、自分の部屋に行った。




お風呂のあと、すぐ布団の中に入る。




そして、そっと目を閉じた。







すると暗闇の奥の方に、星空が見える。



辺りは青い芝生がどこまで広がっていた。




〝千絵。見てごらん?〟




隣にいるお父さんが言った。


私は望遠鏡の中を覗く。



そこからは、綺麗な星がリボン型に並んでいるのが見えた。



〝あれは何?〟


私が尋ねると、お父さんは笑って言った。



〝オリオン座だよ。君のお母さんみたいに綺麗だろう。〟




私が、そんなことないと首を横に振ると、お父さんは私の頭を撫でて言う。



〝いつかわかる時が来るよ。〟




そして、周りの暗闇にまぎれるようにして、私の目の前から一瞬でいなくなった。



「待って!!!!」












私はそう叫んで、目が覚めた。





「まただ…。」



最近同じ夢をよく見る。






わかる時って、いつなんだろう。



すると時計が目に入る。



「…学校行かなきゃ。」


私は自分の重い体を起こして、制服に着替えようとした。



ガタンッ。



体が思うように動かない。


熱い。


私はそのままベットに倒れ込む。




体がおかしい。




「千絵ー!そろそろ起きなさーい。」


お母さんの声がリビングからかすかに聞こえる。



お母さんは私がなかなか返事をしないので、部屋に入ってきた。


「どうしたの?」



お母さんの声がかすかに聞こえる。



「熱っぽい…。」


するとお母さんは急いでリビングに戻り、薬と水の入ったコップを持ってきて、私の枕元に置いてくれた。


「しっかり休むのよ。じゃあお母さん仕事行ってくるから。」


「うん…。」


お母さんはそう言って、部屋を出ていった。


私は体を起こして、薬を飲む。



最悪だと思ったが、神楽君とどんな顔をして会えばいいのかわからなかったので、少しほっとした。



そしてだんだん眠くなってくる。



私はそっと、目を閉じた。










「千絵ちゃん休みとかまじつまんねー。」



昼休み、晃ちゃんと千葉が話している。



「千絵さん風邪らしいですね。昨日、私達が無理させてしまったのかも…。」



俺は隣でゲームをしながら、それを座って聞いている。



「…まぁ大丈夫なんじゃない。」



俺がそう言うと、晃ちゃんはちらっとこちらを見て、すぐまた目を逸らす。



「放課後見舞い行こうかなー。」


晃ちゃんはそう言いながら、自分の席に戻って次の授業の準備を始める。



晃ちゃんは昨日、俺が連絡を取らなかったことに怒っているらしい。


あのあと南とはすぐに別れたって言っておいたけど、納得していない様子だった。






ちゃんと、寝てればいいけど。





そんなことを考えながら、


俺はゲームをやめて、頬杖をつきながら窓の外を眺めていた。









枕元に置いてある時計は、午後十二時十五分を指していた。



私は暑くて、汗をびっしょりかいている。


ぼーっとしていると、目が覚めてきた。


体がだいぶ楽になっているのがわかる。



暇だったので、ふと目についた小学校の卒業アルバムを手にとった。



そして、そっと1ページ目を開く。


私の小学校は、人が少なかったから、各学年1クラスずつしかなかった。


そこで仲良くなったのが、あかりだった。


私が写っている写真にはほとんどあかりが写っている。



私はある一枚の写真に目を留めた。



記憶が、一気に蘇っていく。




それは小学六年生のとき、クラスのみんなで山へ遠足に行った時の写真だった。


それに写っている私は、目を真っ赤にして頑張って笑っていた。


その横で怪我だらけのあかりが、私の肩を組んでにっこり笑ってピースしている。




あのとき、



あかりは私にとってかけがえのない存在だということを、再認識したのだ。




私はゆっくりとアルバムを閉じて、机の上の棚に戻した。


そして私は眠くなってきたので、もう一眠りすることにした。



なんだか、部屋が冷たくなったような気がした。







ピンポーン。



私は、家のチャイムで目が覚めた。


時計を見ると、午後六時三十分。



こんな時間に誰だろうと思って、私はパーカーを羽織って玄関に出る。



そう言えば、昨日仕事で頼んだ物が今日来るってお母さんが言っていたのを思い出した。





ガチャ。


「え…!?」




ドアを開けた先にいたのは、業者の人ではなかった。





「…おす。」





ブレザーのネクタイが、少し崩れている。



ずっと休憩していた私の心臓が、急に全身へ走り出そうとする。







「水野君…。」









私の心臓は早く強く、脈打ち始めた。



9ー動き出した心臓ー



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