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ハレゾラに星  作者: れもん
6/28

五分後

取り残された私と神楽君は、そのあと公園に寄った。


二人でブランコに座る。


もうすっかり日は落ちて、辺りは暗くなっていた。



「…あのさ、気持ちまだ変わってない?」



神楽君が今までと同じように接してくれるから、すっかり忘れてしまっていた。



「…ごめん。」



私は小さな声でつぶやくように言った。



すると突然、神楽君が上を向いて笑い出した。



私が驚いてそれを見ていると、いきなりこっちを向いて顔を近づけてくる。



「…俺、そろそろ我慢できないよ?」




息を吐くような、そんな声。



体が一気に熱くなる。



きっと今の私の顔は真っ赤だった。



暗くて本当に良かったと思いながらも、それでも私は動けないでいた。



「…あ、そーだ。じゃあ今度の日曜、デート行かない?もうすぐテストだから、一ヶ月先になっちゃうけど。」



するとさっきとはまるで別人のように明るい声で神楽君が言う。



「…二人で!?」


「んー、いや、千絵ちゃんが嫌なら、圭とか橙子ちゃんとか誘っていいけど?仲いいんだよね?今日喋ってたし。」


「うん、そうだけど…。」


「いい?」



神楽君が私をじっと見ている。


まるで首を横には振らせないと言っているようだった。


私は縦に首を振ったが、


気づかない間に、神楽君が言った名前に心が引き寄せられていた。












そして約束の日曜日。




あの日の翌日、橙子ちゃんが手を叩いたことを謝ってきた。


「ごめんなさい…。あの時の私、ちょっとおかしかった。気にしないでください。」


橙子ちゃんは、笑ってない笑顔で言った。



いや、ちょっとではなかった。



しかし橙子ちゃんがそう言うのなら、あまり深く聞かない方がいい。


そう思った。




そして今日は、私は断る橙子ちゃんを無理やり連れてきた。


どうしても、私は行きたかった。



橙子ちゃんと二人で待ち合わせ場所に向かうと、もう既に水野君と神楽君がいた。



「やっほー。」


「おっす。」


「おはよう。」


「お、おはようございます…。」



水野君の私服を見るのは初めてだった。


白のシャツと黒いジャケットを着て、すらっとした足にはジーパンがよく似合っている。



「よし!じゃあ行こっか!!!」



神楽君が今日一日の牛耳を執ってくれるらしい。


神楽君みたいな人がいてよかったと、今日の1日が楽しみになった。







...俺が今日のデートを二人じゃなくて四人にした理由。


それはもちろんあとで二人で、はぐれる計画を立てていたからだった。


圭と橙子ちゃんには悪いが、そうすることに決めていた。


もちろん告白OK出してもらってないのに、二人で出かけることなんか無理なことはわかっていた。


二人である状態を作るには、この方法しかない。


今日で絶対に千絵ちゃんを俺に惚れさせる。


そう俺は、意気込んでいた。








私達は都内に最近できた新宿にある大型ゲームセンターに来た。


「じゃ俺、これやる。」


大のゲーム好きな水野君が、こころなしかはしゃいでいるのがわかる。


「圭に言ったら、ここがいいって聞かなくてさ。」



神楽君が笑いながら言う。



「私も…、これ、やりたいかも。」



橙子ちゃんも意外と楽しそうだった。



「よし、私も頑張ろ。」


そう言って気合を入れる。



私達は何時間もそこで楽しい時間を過ごした。




「あ、そうそう、ここ、今開店イベントでお化け屋敷もあるんだよ。行ってみない??」



神楽君が行きたそうにしてこっちを見ている。


「俺はパスで。」


水野君はゲーム以外興味がないらしい。


「私もやめとこうかな…。怖いの、好きじゃないし。」


お化け屋敷は苦手だった。




「「えぇ!?!?!?」」




そんな私達を、神楽君と橙子ちゃんが悲しそうな目で見る。



…。




「「...わかったよ。」」



私と水野君は、しぶしぶ入ることになった。


何分か並んで、私達の番だ。



「ではどうぞ。行ってらっしゃいませ。」



そして私達は歩き始める。


時計を見ると、午後四時五十五分。


一刻も早く、私は出たかった。


お化け屋敷の中は真っ暗で、迷路のようになっている。


少し明かりがついていて、かろうじて周りが見えた。



「やっぱちょっと怖いかも。」



そう言って、神楽君が私の腕を掴んだ。


あんなに行きたそうにしてたのにと、思わず笑ってしまう。


水野君は、平気そうな顔をしていた。



少し歩くと、お墓のようなモノがある。


どうせ、うしろから何か出てくるのだろうと自分に言い聞かせ、怖さを抑えていた。



すると私達四人がそこに近づいていく途中で、





バンっ!!!!!!




大きな音がして、横の壁から手が大量に出てきた。


しかも、どの手も異常に長くてうねっている。



「うわっ!!!」



神楽君が大声を上げた。


うねった手が顔に当たって、気味が悪い。



私は掴まれていた神楽君の手を振りほどいて、顔に当たっている手をどかした。



すると一息ついた瞬間、また誰かの手に自分の腕が掴まれた。


そして、思いっきり引っ張られる。



「!?」



私はパニックになって、何も喋れない。


私を掴んでいるその人は、走って私をどんどん奥に引っ張っていく。


暗くて誰なのかわからない。


しかし私はその手を、なぜか振りほどけないでいた。



「ありがとうございましたー。」



お化け屋敷を出た。


何分走っただろうか。


一瞬の出来事だったから、よくわからない。



「え!?」




私を引っ張っていた犯人の顔が見える。



白のシャツと黒いジャケットを着た、犯人の顔。



「な、なんで…。」



私の頭の中はもうパンクしそうだった。



「…あの二人、二階の出口から出たみたい。」



水野君がぽつりと言った。




確かに、このお化け屋敷の出口は一つではない。


一階と二階の一角を使ってあって、どちらの階からでも出ることができる。


しかし、今の問題はそこではない。


水野君の行動が、考えても考えても理解できなかった。


私の頭は、今までになく混乱している。


「晃ちゃんに悪かったかな…。」



私はもう訳がわからず、うつむいていた。


そして顔を上げると、水野君と目が合った。


すると安心したかのように、水野君の顔は柔らかくなった。







時計の針は、午後五時〇分を指す。




私は、五分前には全く想像もしていなかった状態の中にいた。




6ー五分後ー


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