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50話 早速つまずく 1


 ここは、ハンター協会依頼受付。

 今日も多くの冒険者が、依頼の紙を手に受付への列に並んでいる。


 そのすぐ横にある長椅子に1人、頭を抱えて燃え尽きている少女がいた。

 小柄な体躯で手には魔杖を持ち、腰まで伸びた白髪が目立つ。


 “ミウ”の姿をとっているカイトだ。


 なぜ彼が、そんな事になっているのか。時間は数時間前に遡る。




 数時間前、領主邸玄関。


「それじゃあカイト! 初仕事頑張って!」

「あまり心配はいらんと思うが、無理はするなよ」

「うん、大丈夫。行って来ます!」


 両親に見送られ、俺はハンター協会に向かった。

 せっかく冒険者になったので、依頼を受けてみることにしたのだ。


 もちろん“ミウ”の姿。平民を装うので、平民が着ていてもおかしくない服に身を包み、手には魔杖を持っている。

 魔女が持っている歪んだ木の棒のようなものでは無く、鉄製のかなり高価なものだ。


 要らないと言えば要らないのだが、一般的な魔術師は魔杖を持っているものらしい。ミフネさんも(あの時は使ってなかったけど)持ってたしね。

 表向きには魔術師を名乗るので、実力を隠す必需品だ。


 あと、両親からのプレゼントなので普通に嬉しかった。こういう物を“宝物”って言うのかな。


 魔杖を握りしめ、ハンター協会に到着した。

 建物に入る時、若い3人のパーティとすれ違った。ラノベの光景を見ているようで少しワクワクする。


「こんにちわ」

「その白い髪……ミウさんですね。冒険者カードをお渡ししますので、少々お待ちください」


 受付嬢さんはそう言うと、奥からカードを1枚持ってきた。


「こちらがミウさんの冒険者カードとなります。他の町へ行く際には、身分証明書となりますので、無くされないようお気をつけください」


 受け取ったカードには『ミウ 人族9歳』、そして魔術師と表記されていた。

 しかし、そのカードにはIランクと書いてある。


 以前の話ではBランクと言われたが、これにはちゃんとした理由がある。




 試験終了後、応接室。


「では冒険者カードの発行を……」

「あ、そうそう。あんたのランクについてなんだけど」


 ミフネさんが何かを思い出したようだ。


「なんとなく思ったんだけど、あんたってあまり目立ちたく無いと思ってるんじゃない?」

「は、はい。そうです」


 徴兵が嫌な大きな理由もそれだ。変に目立って両親といる時間が減ったらいやだ。


「それならBランクはやめといて、普通にIランクからにしときなさい」

「……? どうしてですか?」

「いきなりBランクから始めたなんて、異例すぎるわよ。それであまり有名になりすぎても面倒臭いだけでしょ」


 あ、確かに……。


「それに試験でセオトが負けたって事はもう噂になってたから、下手すれば徴兵とは別に呼び出されて、面倒くさいことになるわよ」

「……!」


 彼女の言う事は正しい。

 あまり目立ちすぎて、目をつけられたりしたら大変だ。


「……でも、いいんですか?」

「何がよ」

「僕、を騎士団に入れようと……しなくても」


 俺の“騎士団”のイメージは、強い人がいたらどんどん勧誘すると言うものだ。

 しかし、彼女は勧誘するどころか、むしろ俺が騎士団に入らないようにしてくれている。


「……確かにあんたは強いけど、別に欲しいだなんて思わないわよ。あたしは騎士団を執拗に強化しようだなんて思ってないし。正直、この国に忠誠心とかないし」

「そ、そこら辺、ミフネさんは昔から変わりませんね」

「あったり前でしょ。あたしだって好きで騎士団長なんてしてるわけじゃないんだから。ライナがどうしてもって言うから、仕方なく引き受けてあげてるだけよ。それなのに、騎士団を強化するのに尽力しなきゃいけないとか、たまったもんじゃない」


 お、おおう……それは、言ってもいい事なのかな……?


「とりあえず、他は知らないけどあたしとコウはあんたを騎士団に入れようなんて、考えてないから安心していいわよ」

「あ、ありがとうございます」

「子供が国に利用されるだなんて、見たくもないしね」


 そう言った彼女はハッとして顔を背ける。おそらく、最後の一言が本音なのだろう。


「分かりました、会長……Iランクから、お願いしても良いですか?」

「あ、はい。大丈夫ですよ」


 会長は紙を取り出してBに横線を入れて、Iと書き直した。

 しかし、危ないところだった。あのままBランクになっていたら面倒ごとになるのは目に見えていた。容姿のこともあるし。


「ミフネさん」

「ん? なに?」


 しっかりと目を見て、お礼を言った。


「ありがとう、ございます。僕の事を気にかけてくれて……」

「なっ……」


 彼女は明らかに照れた様子を見せる。


「べ、別にあんたのためじゃないわ。勘違いしないでよね」


 そっぽを向いてそう言われてしまった。


「たっただ、あんたみたいな子供が面倒事に巻き込まれるのが夢見悪いだけよ」

「……はい」

「ほっ本当よ!」


 ほんと完璧なツンデレだなー……。


 

 そんなことがあり、俺はIランク冒険者となったのだ。


 なににつまずいたのか、次回判明。

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