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266話 ひさしぶり

こちらのミスで前回(265話)で展開ミスをしてしまいました。そちらは既に修正済みです。

大変申し訳ありません。


 ー カイトside


 この国に来て2週間。田植えは終盤を迎え、今日か明日には全ての田んぼに稲を植え終わると言うところまで来た。

 

 今日もポチと別れた後に街を歩き、こたつちゃんと待ち合わせしている場所へ向かう。街の真ん中あたりにある屋敷の間の狭い道だ。子供の体の俺達はそこからが田んぼへの近道になっている。


「……」


 視線を軽く横へ向けると、枠組みだけの“屋台”がいくつか並んでいる。中には組み立て中の物もある。

 話には聞いていたけど、田植えが終わったタイミングで“お祭り”があるらしい。田植えが終わったことのお祝いと、その苗が無事に育つことを願ってとのことだ。


「……」


 お祭りの準備をしている人達はみんな笑顔。なんとなく耳に届く会話は田植えの話題。

 

 この街の人達は、田植えが無事終わりそうな事がすごく嬉しいみたいだ。


「ふふっ」


 俺もその田植えよお手伝いをした。それだけでなんだか感謝されている様に感じてしまう。

 足取りが軽くなった様に感じ、待ち合わせ場所にはあっという間に到着した。


「あれ……今日はまだ来てないんだ」


 いつもはどれだけ早く来ても先にいたこたつちゃんの姿が見えない。

 

 何かあったのかな……? 心配のしすぎ?


 この平和な街で何かあったわけではないだろうけど、やっぱり不安は感じる。

 駆け足で街道へ引き返し、左右を見渡した。


「……!」

「あ、やっぱりかいと君でしたね」


 目当ての女の子は見つからなかったが、見慣れた女性が視界に入った。その女性は俺の元へ小走りで近づいてきた。


「瀬音さん……?」


 王国からの知り合いと会えて、そこまで時間は立っていないがなんだか懐かしく感じた。


「お久しぶりです。お元気でしたか?」


 彼女はしゃがんで俺と視線の高さを合わせ、にこりと微笑んだ。


「うん、ぽちは毎日心配してくれてるけど、元気だよ」

「そうでしたか。ふふっ、ぽちさんらしいですね」

「うん」


 返事をしつつコウさんの姿を探す。しかし、背伸びをして辺りを見渡しても見つけられない。


「……あれ? 功さんは……」

「あ、功さんと美音さんはまだ都にいます。私だけ先に帰ってきたんですよ」

「そ、そうなんだ。何かあったの?」


 2週間くらい帰ってきてないし……少し心配でもある。


「いえ、悪い事があったわけではないんです。ただ、情報集めと解毒薬の収集に手間取ってて」

「あ、そうなんだ」

「はい。なので、一応私だけ先にこっちに帰ってかいとさんの様子を見に来たんです」


 解毒剤かぁ……。ポチも毒に耐性があるため犯された事がないからなんの毒かまでは分からないって言ってたし……。


 俺もなんの毒か分からなければポーションなんて作れないし……とりあえず作ってみようかな? あ、でも今材料がないや。


「……それじゃあ、瀬音さんはまた都に行っちゃうの?」

「いえ、功さんにはこっちで待機するよう言われてるので」

「そうなんだ」

「総一郎さんの助けになるように色々動かないといけないです」


 総一郎さんの屋敷の方向を一瞥し、こちらへ視線を戻した彼女の表情は申し訳なさそうにしていた。


「なので……申し訳ないんですけど、功さん達が帰ってくるまでは孤児院で過ごしててもらえませんか?」

「……ぇ、あ」


 孤児院という言葉に一瞬疑問を感じるが、慌てて表情を取り作る。そういえば俺、孤児院にいる事になってるんだった。


 ……朔夜さんの事話すべきかな? でも、神様だし……なんだか、人に話しちゃまずいような気がする。


「う、うん……分かった……」

「……ごめんなさい、もしかして孤児院はもう嫌でしたか?」

「ぁ、いや……大丈夫。こ、こたつちゃんいるから……」


 焦って彼女の名前を出してしまった。いや、悪いことではないんだけど。


 焦っていや汗をかく俺に少し不思議そうな顔をする瀬音さんだったが、不意にニコッと笑った。


「こたつちゃん……ふふっ、お友達が出来たんですね」

「……へ?」

「お友達です。違いました?」

「え……その……」


 と、友達……? 俺とこたつちゃんって友達だったの? 


「こたつちゃんとは遊んだりしていないんですか?」

「……い、一緒に遊んでる……田植えも一緒に……」

「それならもうお友達ですよ」


 ……え? こたつちゃんってもう“友達”だったの? いつか友達になれればいいなって思ってたけど……。


「……」

「……なにか不安な事があるなら、きっと大丈夫ですよ。そうだ、3日後の夜にお祭りがあるじゃないですか」

「う、うん」

「そのお祭りにその子と一緒に行って、もっと仲良くなっちゃいましょう」

「も、もっと……」


 なんだか、友達って事を考え始めたら急に緊張してきた。いつ友達になれるかなって思ってたから。


「……」

「……あ、お祭りのことで、功さんからこれを」


 彼女の懐から小さな布袋が取り出される。中からはなにやらジャラジャラと音が聞こえた。


「自分達はお祭りに間に合わなさそうだからと渡されました」

「……?」


 布袋を手渡される。見た目から想像した重さより少し重い。


「それほど多くはないのですが、子供がお祭りで遊ぶくらいなら十分なはずです」

「……! お金……」


 紐で止められた口を開けると、中にはこの国のお金が入っていた。

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