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260話 カイトの体 2


 な、なんだろ……なにがわかったの? なんだか緊張感が増してきた気がする。


「……姿形を変えはる事ってできます? さっきの傷跡だけって事ではあらしまへん」

「……ん?」


 また魔法とかを聞かれると身構えていたので、一瞬言葉の意味が理解できなかった。

 

「んー……けったいなこと言ってかんにんえ。言いたいのは……例えば、体を全然違う形に変えたりとかどす」

「……あ」


 もしかして、“身体操作”のことかな? 


「思い当たりがありはります?」

「うん……し、身体操作っていうのが出来るよ」

「……それは、“まほう”ではあらしまへんの?」

「え、えっと……魔法とかじゃないよ。あ、そうだ。魔法じゃないから見せられるよ」


 そうだ、身体操作は魔法じゃない。それならここで使っても大丈夫なのか。


「今から見せるね」


 そう伝えて、“ミウ”の姿になる。髪は伸び、白髪へと色が変わる。そして鏡がないから確認はできないけど、顔つきも女の子っぽくなるはず。

 なんだか、久しぶりにこの姿になった気がする。


 その変化を見て、朔夜さんは驚いている。

 しかし、思ったより反応が薄い。


「あらぁ……ずいぶんとかいらしくなりはったねぇ。身体操作って言いはりました?」

「うん、これは魔法とかじゃなくて……特技? みたいな……さっきの傷跡もこれでやったの」

「そうなんどすね」


 彼女の表情が驚きから感心に変わった気がする。

 腰あたりまで伸びた白髪をサラサラと撫でながら、まじまじとこちらを見てきた。

 

「もしかしたら……」

「……?」


 そこまで言いかけ、彼女は口を紡んだ。その様子に首を傾げる。

 

「……もしかしたらって、なに?」

「……もしかしたら、かいとはんってうちらみたいな“神”はんに似た存在なのかもしれへんね」

「……は?」


 思考が停止した。彼女の言っている意味がわからない。 

 

「ふふふっ、かんにんえ。突然そないなけったいな事言われても、なんぎよね」

「……ぇ……うん……」

「まぁ、つまりはこういう事どすえ」


 そういうなり、彼女は自分の頭に両手を乗せた。そしてすすっと撫でるように前へ動かすと、彼女の頭にあった立派な狐の耳が消えてしまった。


「えぇ!?」

「ふふっ」


 今の彼女は尻尾を除けば人間にしか見えない。


「ほしたら、この手をかいとはんに」


 今度はその両手を俺の頭へ乗せる。そして、撫でるように手を3往復ほど前後に動かした。

 しかし、俺の頭には耳なんてない。そもそも鏡もないし見えないから、どうなっているのかもわからない。


「ぇ? ……え?」

「ふふふっ、頭、触っておみ」


 言われるがままに頭へ手を乗せる。



 ふわっとした感触、天井へ伸びる三角のものがある。



「……え!?」

「はい、鏡どす。見とーみ」


 差し出された手鏡を慌てて受け取り、覗き込む。

 そこには、狐の耳のようなものが頭に生えている俺が映っていた。

 髪の毛と同じ白色で、感情の変化に合わせて激しく動いている。


「えええ!? み、耳が! え!?」

「落ち着きよし。大丈夫どす、怖くなんてあらしまへんえ」


 鏡と彼女を交互に見ながら、口をパクパクと動かす。しかし、驚きの声以外は出なかった。


「ほら、こうすれば」


 彼女はもう一度俺の頭を撫でる。すると、元からそこには何もなかったかのように耳は消えてしまった。


「ええ……」

「はい、これで元通りどす」


 自分で触って確かめてみるが、やはりそこに狐っぽい耳は無い。だが、見間違いでは無かったと思う。


「か……神様だから出来るの……?」

「……そうとも言えはるし、そうとも言えまへん」

「……?」


 首を傾げ、彼女へ答えを求める。


「まず、うちが神はんだから出来る事には変わりありまへん。そやけどね、誰に対しても出来る事ではありまへんえ」

「そ、そうなの……?」

「そうどす。かいとはんだから出来たんどす」


 俺だから出来た……? なんでなんだろ?


 再び首を傾げる。そんな俺に、彼女は答えを聞かせてくれた。


「かいとはんの体……なんとなくなんやけど、普通の人間はんと違う気がするんどす」

「……え?」

「かいとはんの体って言いますか……なんだか、うちらと似てるような気がするんどす」


 彼女は説明に身振り手振りを付け加えて話す。先程の曖昧な言葉から読み取れるように、彼女自身も俺の体の違和感についてあまり分かってはいないらしい。


「……正直、言葉では伝えにくいことさかい、さっきみたいにさせてもらいました」


 本当はもう少し詳しく説明をしてもらいところだけど、実際に今までなかった耳がいとも簡単に頭に作られたんだ。納得するしかない。


「えっと……」

「はいはい」

「さっき、僕の体だから出来たことって言ってたけど……それはどう言うこと? 朔夜さんのに似てるのに関係があるの?」


 俺に耳を生やす前に、彼女は自分の耳を消していて今もない。どんな原理なのかが気になった。


「あ、そうどすね。説明もしてへんかったね」


 すると、彼女は手のひらをこちらに向けて話し始めた。


「うちら神はんって、実体があらしまへん。この事は、さっきも話しましたやろ?」

「うん」

「そやけど、実体は無くとも体は構成されとるんどす。そうやね……人間はんみたいに、決まった体の元の形が無いんどす」

「……?」


 説明の意味がいまいち理解できず首を傾げる。


「そうやねぇ……街の人間はんが、土でお皿とかを作りはることは知ってますかえ?」

「え……あれ土から作ってるの?」


 その事実に軽く驚く。


「そうどす。あくまで例えとして、うちら神はんもそんな形を自由に変えられる土で体ができてはるって考えはったら、分かりやすいかも知れまへんね」


 な、なるほど……粘土? みたいなのでイメージしたら分かりやすいかも。


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