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259話 カイトの体 1


「あ、ほんまにそうなんどすか。なにか……なんやろ、口で説明するには少し難しいどす」

「……えと、それじゃあ神社のなかで……」

「……そうやね。せわしなくってかんにんえ、今はゆっくり泥を落としやす」

「うん」


 俺が再び体を洗い始めると彼女は足元が良く見えるよう提灯を高く掲げてくれた。目を向けると、にこりと微笑む。

 

 そんな彼女の疑問に早く答えてあげたいという思いが生まれ、体を洗う手を早めた。

 

 さっぱりし、もらった手ぬぐいで体を拭いて神社へ戻る。


「さて、どないしはります? 先にご飯食べはりますか?」

「あ、えっと……」


 尋ねられ、お腹をさする。お昼のおにぎりは大きかったとはいえ、それから何も食べていない。

 やっぱり結構お腹は減っている。


 しかし、先ほども思ったように彼女の疑問に早く答えてあげたいという気持ちも強い。

 その2つの葛藤の末、1つの答えを導き出す。


「さ、さっきの傷跡の事、ご飯食べながらでもいい……?」


 自分でも厚かましいことを言っているのはよくわかる。しかし、それが最善の答えなような気がした。


「……ぷっ、ふふふ。もちろんどす。そないに心配しはらなくて大丈夫どすえ」


 それを聞いた朔夜さんはクスクスと笑いながら答えた。


「ほんなら、ごはんにしまひょか。さっきの事は、ゆっくりしてからでええどす」

「う、うん」


 お言葉に甘えて、まずはお腹を満たさせてもらうことにした。彼女から貰ったおにぎりにかぶりつく。


 腹を満たしたところで彼女に話を切り出した。


「ごちそうさまでした」

「はいはい。足りはりました?」

「うん、お腹いっぱい。……そ、それで……」


 背中を気にしつつ話す。すると、彼女も俺が話そうとしていることを察したのか、隣に座り込んできた。


「さ、さっき言ってた傷跡の事……なんだけど……」

「ええ、えらい不思議な傷跡ね」

「えっと……その……」


 なんて言ったらいいんだろ……たしか、前は特技みたいなのって言ってた気がする。


「と、特技みたいな……」

「……特技?」


 その回答を聞いた彼女はキョトンとした表情を浮かべている。その表情を見て冷や汗が背中を伝った。

 朔夜さんは視線を上に向け、回答に驚いている様子を見せた。どうやら予想外だったようだ。

 

「……うちはてっきり、海の向こうの国の“まほう”? かと思ってたんやけれど……」

「ぁ、ううん。魔法じゃないよ。……そ、そうだ」


 実際に見てもらったらいいんじゃないかな。


 そう思い、背中を見せるため服を脱ぐ。そして背中を彼女へ向けた。


「……特技……」


 そう呟きながら、また傷跡に指先で触れる。ちょっとくすぐったい。


「……え? ちょっと待っておくれやす。特技ってどう言う事どすか?」


 我に帰ったかのように、ハッとして彼女は言った。珍しく困った表情……というか、「何言ってるんだ?」みたいな表情だ。

 

「えっと……」


 ……あれ? どう説明したらいいんだろう……今まで特技って答えてさらに聞かれることなんて無かったから……。


「……こ、こんな感じで……」


 答えが思いつかなかった俺は、結局そのまま見てもらうことにした。

 背中の傷跡を消したり、別の場所に傷跡を出したりする。


「はぁ……驚きました」


 それを彼女はまじまじと見る。


「不思議な事もあるんやねぇ。人間はんが来ないなこと出来はるなんて……」

「う、うん……」


 まぁ……俺は転生してきたんだしこれぐらいなら。


「……ほんに不思議やねぇ。そうや、“まほう”と言いはる術も見せてもらえたりします?」

「うん、分かっ……あ、いや……」

「どないしはりました?」

「ご、ごめんなさい……この国にいる間は魔術と魔法は使っちゃダメって……」


 事情を説明すると朔夜さんは「なら仕方ない」と理解してくれた。

 

「そうやねぇ。その“まほう”はこの国ではあんまりええ見方されはれんやろうからね。かんにんえ」

「う、ううん」


 すると、彼女は再びなにか考えるような様子を見せた。今度はかなり深刻そうな表情だ。


「……かいとはん」

「は、はい」


 名前を呼ばれ、反射的に返事をする。


「ほんの少しだけ、体を触ってもええどすか?」

「……え?」

「ダメどす?」

「あ、いや……だ、大丈夫……です……」

「……おおきに。それじゃ、少し失礼させてもらいますえ」


 そういうなり、彼女はひょいっと俺を持ち上げ自分の膝の上に乗せた。


「……?」


 この行動の意味が分からず彼女の顔を見上げる。多分、ポカンとした表情だったと思う。


「ふむふむ……なるほどなるほど……」


 そんな事を呟きながら彼女は俺の体を触り始めた。

 頭を撫でたり、両頬を痛くない程度に摘んだり、腕を肩から手の甲まで滑るように撫でたり。

 少しくすぐったいけど、朔夜さんは真剣な表情なので我慢した。


「はぁ……そないなこともありはるんね」


 しばらく俺の体を触ったのち、そう言った。


「な、何のこと?」

「……ええ、まぁ、気になってた事が分かった……と言いますか。予想が当たってたと言いますか」


 そう答えながら、俺を膝から下ろす。何のことだかさっぱりだ。


「かいとはん、もしかして……なんやけれど、聞いてもええどすか?」

「う、うん……」

大変遅くなりました、申し訳ありません。これからはまた定期的な投稿を目指して頑張ります!

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