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236話 街から離れたく無い



「その件については今日中に話すつもりだったけど、話も聞けたしこれでよしとするよ」

「ぁ……は、はい。分かりました」

「でだ、急で申し訳ないけど、今後の方針について話させてもらうよ。大事な話だからね」

「は、はい」


 今後の方針って……。


「予想はついていると思うけれど、今後俺達は今回のこの街の問題解決に向けて動かなければならない」

「……」

「だから、君もある程度こちらの行動に合わせて動いてもらわなければならないんだ。君の事を任せられているからね」


 た、確かにそうだね……まさかこんなことになるだなんて思ってなかったけど……。


「……まだ本部からの連絡を待っている状況だから、これから俺達がどう動くかは分からないけど……」

「……?」

「もし、俺達がこの街を離れることになったら、君にもついて来てもらいたいんだ」

「……ぼ、僕も……ですか?」


 ……あ、そっか……さっき俺の事を任せられてるって……。


「この街を離れる時、君をこの街に置いて行くことは良い選択とは言えないよ。魔術と魔法を禁じられた君はただの子供だしね」

「ぅ……」

「それに、君が過ごす家がない。宿に泊まらせると言ったって、その分のお金を1度に渡したら何が起こるか分からないし、なにより不審だ」


 ま、まぁ……子供が大金持ってたら怪しいよね……。

 あ、でも……。


「……そ、総一郎さんの家は……」

「1番だめだよ。今回の事件の中心なんだから」

「ぁ……」


 そ、そっか……そりゃそうだよね……。うーん……どこか他はないのかな……。


「……かいと君、どうかしたのかい?」

「……え?」

「そんなに俺達と一緒に行動したくない?」

「……え!? そ、そんなわけ……」


 ……あれ? じゃあなんで……。


 考えると、今俺はどうにかしてこの街に居られないかを考えていた。別に彼らと行動するのが嫌なわけではない。


 な、なんでそんなこと考えてたんだろ……?


「ご、ごめんなさい……」

「謝る必要はないよ。なんだか悩んでいるみたいだし、この街に残りたい理由でもあるのかな」

「ぁ、いや……り、理由……?」

「そう、なにかあったのかい? 思うことがあるのなら早めに聞かせてくれると助かるよ」


 お、思うこと……? なんだろ……この街から離れたくない理由……。

 離れたくない……。


「……」


 しかし、いくら考えても思いつかない。

 そんな俺に、コウさんはアドバイスする様に言った。


「この街で何かしたい事があるのかい?」

「……」


 しかし、傘を返す以外特にやりたい事はない。

「……離れたくない“人”が、誰かこの街にいるのかい?」

「ひ、人……?」

「そう、人だよ。君はこの街に思い入れがあるのかって言えば、そうじゃないだろうし。だとすれば、誰かそばにいたい人が居るのかなって思ってさ」


 ひ、人……離れたくない……。


 そう思うと、脳裏に1人の顔が浮かんだ。


「……ぽち……?」


 それはポチだった。


「……そっか、そうだと思ったよ。早めに君の気持ちが聞けてよかった」

「き、気持ち……」

「そうだよ。ぽち君から離れたくないっていうのが、君の本心だ。まぁ君は子供だから、寂しいとか、色々あるんじゃないかな? それは君にしか分からないけどね」


 俺がポチと離れたくない……って、ポチの事が心配だからだと思ってたけど……。

 

「寂しい……のかな……?」


 疑問に思った事が、口から出てしまった。

 すると、コウさんが微笑みながら言った。


「きっとそうだと思うよ。まぁ、君の事は君にしか分からないけど、“子供”の考え方なら少しは分かっているつもりだからね」

「……子供の考え方……」

「そうだよ。ほら君、王国を出る時に家族との別れを渋っていただろう? きっと、今の状況も同じだよ」

「……」


 そ、そうなのかな……。


「……」


 でも、確かにお母さん達と別れた時は寂しくって……ポチと別れた時は……不安だった?

 これって、同じなのかな……。


「まぁ、今後のことはどうなるのか分からないけれどね」

「……!」


 彼の声でハッと我に帰る。少し考え込んでしまっていた。


「それに、むしろ俺はこの街に残る事になるんじゃないかって思ってるからさ。そこまで思い詰めなくても良いよ」

「わ……分かりました……」


 そ、そうだよね。コウさん達がこの街に居るんなら、俺もここにいても良いわけだし……。


「……ふぁ……」


 ……な、なんだろ……急に眠気が……。


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