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204話 謝らなきゃ 1


「今日の予定なんだけど、俺達3人は行かなきゃ行けないところがあってね」

「それはどこですか?」

「君達にはもう話したけれど、俺達は海の向こうの国から9年ぶりに帰ってきたんだよ。で、その事を国のお上に報告しなければならないんだ」

「と言う事は……みやこに行くんですか?」

「いや、この街と都の間に街があるだろう? そこに幕府直属の施設があるから、そこに報告しに行くんだ」


 あ、そっか。そりゃあ偉い人達に報告しなきゃ行けないよね。功さん達は王国で偉い人になったわけだし。


 すると、今度は秀幸さんが話し始めた。


「でだ、残念な事に今日は私も外に用事がある。屋敷は私が信用するものに警護させるから、そのもの達以外は入れなくなってしまうのだ」

「……というと?」

「すまないが、今日1日はそとで過ごしてくれ。君達が何か悪さをするとは思っていないが、昨日今日の付き合いにここは任せられんからな」


 ……たしかに、昨日会った人ばかりは完全に信用はできないよね。


「分かりました。それじゃ、私とかいとは今日1日、街へ降りていますね」

「うむ、そうしてくれ。ゆくゆくはこの街に住む予定なのだろう? ならば、今日は身を置ける場所を探すといい。だが、別に功君達が世話になった君達を追い出したいわけではないからな。住めるところが見つかるまではここで寝泊りしてくれても構わないぞ」

「ありがとうございます」

「あたし達は、報告の手続きが問題なく終われば、夕暮れには帰ってこれるはずよ」


 そんな会話をしてからしばらくして、朝食を食べ終わって片付けを始める。

 朝食を食べている最中から、今までずっといつあの事を美音さんに話そうか……そう考えていた。

 その時だった。


「かいと、ちょっといいかしら?」

 

 美音さんに呼びめられた。彼女は手首を上下に動かして「こっちへ来い」とあいずしてくる。

 

 心拍数が一気に上がった。体が震え始め、汗が噴き出してくる。部屋の中を見渡しても、ポチの姿は見えなかった。きっと、お皿を片付けにいったんだ。

 ポチがいないと不安で仕方ない……でも、美音さんが来いと言っているんだから、無視するわけにもいかないし……。


 歯を食いしばって立ち上がり、彼女の元へ向かった。


「……ねぇ」

「は、ひゃい!?」


 情けない声が出た。

 

 頭の中は約束を破ってしまった事でいっぱい。そして、その約束を破ってしまった相手は目の前にいる。


 目の前がどんよりと暗くなり、どうしたらいいのか分からなくなってしまった。

 今すぐ逃げ出したいという感情に、逃げたとしてもなにも解決しないという思いが混ざり合って、気分が悪くなり目眩すら感じる。


「ちょ……どうしたのよ」

「ぁ……ぅ……」


 声をかけられ、反射的に顔を逸らしてしまった。


「あ、かいと君。ちょっといいかい?」


 尋ねられても答えることができずにいると、彼女の向こう側から、功さんが俺に声をかけてきた。その声に、びくりと体が大きく震える。


「君に話が……って、どうかしたのかい?」

「……功、ちょっと待っててくれないかしら? かいとはあたしに用があるみたいだから」

「あ、そうなんだね。分かったよ、かいと君また後でね」


 しかし、美音さんにそう言われた功さんは部屋を出て行った。

 なんだか、一瞬救われた気分になった。


 

「あんた……何か隠してるわよね?」

「ぅっ……」


 き、気づかれた……どうしよう……どうしよう……?


「……ほら、こっち来なさい。あたしもあんたに話したい事があるから」


 美音さんは俺の手をつかんで廊下を歩き、誰もいない部屋へ案内した。近くには誰もいないみたいだ。

 そして、しゃがみ込んで震える俺と目線を合わせてきた。


「……で? なにを隠してんのよ。別に話したくないことなら話さなくていいけど、あんたのその様子じゃ、そういうわけでもないみたいだからね」

「……」


 や、やっぱりお見通しなんだ……で、でも……。


「……」

「……」


 美音さんは俺に目を向けたまま、俺が話すのを待ってくれている。しかし、その俺はその目を合わす事もできず、ただ床を見つめるだけ。


 どうしようもなく、“恐い”。頭の中はそれだけ。

 ……もう耐えられない。

 

「ぅ……ぅええええ……」

「はっ!? ちょっ、なんで泣くのよ!?」


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