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189話 倭国上陸 1

 

 ようやく倭国へ到着したカイト一向。ポチは人目につかぬよう身をかがめて、木陰に隠れている。


「よし、それじゃあミフネを出してくれるかな」

「分かりました」


 カイトが手を伸ばし、収納部屋からミフネを出す。彼女は収納された時と同じ体勢で地面へ立っていた。

 目を開けているが、何やらボーッとしている。


「……ミフネさん?」

「ミフネ? どうした?」

「……信じらんない……本当に一瞬だわ」


 声をかけると彼女は辺りを見渡し、目を見開いてそう呟いた。

 収納部屋に入っていたミフネからすれば、周囲の景色が青空から森の中へ一瞬で切り替わったのだ。無理もない事だろう。


「ミフネ、倭国についたから……」

「そんなこと言われなくても分かってるわよ。いつまでもほうけてるわけじゃないんだから」

「……そっか」


 辛辣に返答されたコウは、普段と違い少し寂しそうな表情をした。彼女が優しかった頃の話をした事で懐かしくなっているのかもしれない。


「それじゃあ、とりあえず街を探すわよ」

「うん、そうだね」

「分かりました」


 ミフネの一言で、彼らの目的が決まった。


「事前に決めておいたルートをポチがちゃんと飛んだのなら、ここはおじいちゃんの街の近くのはずだわ」


 王国を出る数日前、話し合いの際にライナが持参した資料には、かつて倭国と国交を結んでいた時の事が記載されていた。


 その中の1つの資料に書かれていた倭国の3つの港。そのうち1つが、総一郎の領地にかなり近い位置にあるらしい。歩いてもいける距離のようだ。


 つまり、その港へ向かえば、必然的に総一郎の領地に近い場所へ行けるという事だ。


「空から見たけど、ポチはちゃんとその港へ向かってたよ。もう使われていなかったみたいだったけどね」

「え、そんな港あったんですか?」

「うん、あったよ。だからここは、総一郎さんの領地の近くで間違いないと思う」


 カイトは見つけられなかったものの、コウとポチは目的の港を見つけていたようだ。


「港はそっちの方角だから、街は……あっちだね」


 コウが割り出した街の方角へ顔を向けるカイト。しかし、ミフネが突然彼を止めた。


「待ちなさいって、あんたセオト忘れてるわよ」

「……あ」


 カイトは「忘れてた」と表情に出した。


「い、今出しますね」

「あっねぇ、ちょ……」


 ミフネの静止に気がつかず、カイトはセオトを収納部屋から出した。


「ごめんなさいセオトさん、忘れ……」

「rロロロロロロ」

「え」


 奇妙な声とともに、セオトの口から大量のモザイクが吐き出される。

 それは、勢いよくカイトの腹部で飛び散った。


「わぁーーー!!!!」

「……ったく、吐いてる最中に収納したんだからそうなるに決まってるでしょ……」


 カイトの悲鳴がこだまする中、ミフネは呆れた声を出す。


「ズ……ズミマゼン……」

「あーあー……ほら、セオトはこれで口を濯いで。……カイト君は、あっちに見える池で体洗ってきて」

「……! ……!」

「ありがとうございまず……あれ? ここ、森ですか……?」


 口を濯ぎながら辺りを見渡す涙目のセオトの横で、声を出したくとも口を開きたくないカイトは、奇妙な歩き方で池への前進を始めた。


 そんな彼の後ろ姿を見て、哀れみながらコウとミフネは話した。


「……あれじゃあ、しばらくここからは動けないね」

「そうね……ったく、余計な手間増やしてんじゃないわよ」

「……?? す、すみません……」

「……ま、今回は仕方ないわね。それじゃあ、こうしましょう」


 ミフネが提案したのは、このような案だった。

 まず、カイトの代わりにポチを連れて行く。そして、ポチに彼用の和服を渡し、彼へ届けてもらう。


「ねぇ、ポチ。それでいいでしょ?」

「承知しました」


 ミフネが声をかけると、ポチは人の姿に変身して答えた。


「あんたはあいつと同じ魔法が使えるんでしょ? なら、姿を消す事も出来るんじゃないの?」

「はい、可能です」

「そっか、なら話しは早いね。カイト君に伝えてくるよ」

「あたしも行くわ」


 

ーカイトside


「カイト君、ちょっといいかな?」

「あ……はい」

「……災難だったわね」

「……うん……」


 小さな池で腰タオル1枚になって、体や服を洗っていると、コウさんとミフネさんが来て話しかけてきた。池のふちにしゃがみ込んで目線を合わせている。

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