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134話 決定


 ポルアが元の情報と、新しく登場した もう1人の『子供』の噂。


 それらと、元々あった噂が合わさった結果、『黒髪黒目の少年と白髪の少女』と言う新たな噂が誕生してしまった。



「……そんなわけで、新しい噂が形を持ってしまった。おそらく、今偽の情報を流したところで効果は無い」


 ここでひとつ思った。

 なんか、情報の伝達がガバガバすぎない?


 だって、他にもポルアさんが救出部隊に参加するってことを、騎士団長のミフネさんが把握してなかったりしてたよ?

 

「私が王としてまだ未熟だったことが原因だ。言い訳をするつもりはない、申し訳なかった」


 あ、おんなじことを考えてた。


「そこでだな、また新しく案を考えたんだ」


 すると、王様は改めて俺へ目を向けて来た。



「君、1ヶ月ほど倭国へ行ってくれないか?」



「……倭国?」


 倭国って……コウさん達が来たって言う国?


「実は、最近コウ達が久しぶりに、故郷へ顔を出したいと言って来てね。彼らはこの国の重要人物だが、かれこれ10年くらい帰ってない。色々あって休息が必要だと判断して、1ヶ月間の帰省を許可したんだ」

「……あ」


 多分、それは俺がコウさんに生まれた場所の調査をしたいと言ったからだ。

 俺が関わっていることがバレないよう、帰省と言ってくれたらしい。


「君には彼らに付いていって、1ヶ月間倭国で身を隠していてもらいたいんだ」


 すると、それを聞いたお母さんが王様へ話しかけた。


「お話中すみません。なぜ、そのような考えに至ったかをお聞きしてもよろしいですか?」

「ああ、分かった。1つ目は、先程言った通り彼が世間から身を隠すこと。2つ目は今回のように、カイト君を狙う奴らから身を守るため」

「……なるほど……」

「今、鎖国している倭国なら噂が入る事もないだろうし、うってつけだと思ってな」


 王様の言う事ももっともな事だろう。 

 俺の噂で持ちきりの場所にいて、仮に人目についてしまえば大変なことになる。


 しかし、噂というのは時間が経てば勢いがなくなる。

 その間、別の場所で身を潜めていれば問題はないだろう。


「君をご両親と離れ離れにするのは気がひけるが、おそらくそれが1番良い解決策だ。カイト、どうだ?」


 確かに、彼の言う通り家族と離れ離れになるのは嫌だ。

 でも、テイルの依頼があるから早かれ遅かれ倭国には足を運ばなくちゃいけない。


 なら、これは良い機会だと見るべきだ。


「お母さん、お父さん」


 思いを伝えるために、2人を呼ぶ。


「僕……倭国に行ってみようと思うんだけど……良いかな?」


 すると、2人は少し驚いた表情を見せたものの、笑顔で答えてくれた。


「寂しいけど……あなたがそう言うのなら止めたりはしないわ」

「そうだな。今はカイトの身の安全が優先だ」

「……うん」

「よし。決まりだね、ありがとう」


 すると、王様が席から立ち上がり宰相の人から紙を1枚受け取った。


「それじゃあ倭国行きの船を……」

「その必要はございません」


 突然背後から声がした。

 振り向くと、いつの間にかポチがそこに立っている。


「わっ、ポチ居たの?」

「いえ、壁越しに聞かせていただいておりました。お許しを」

「あ、うん……大丈夫」

「ありがとうございます。実は1つ提案をばと思い、瞬間移動を使わせていただきました」

 

 ポチは微笑みそう言うと、王様の前まで歩いていった。


「お初にお目にかかります。カイト様より召喚されたブラック・ワイバーン。ポチ・シリウスと申します」

「……君が、例のか」


 ひざまつき、自己紹介をするポチへ、王様の鋭い視線が向く。


「コウとミフネから色々聞いてるよ」


 あ……まずい。コウさんの時と同じだ。


 しかし、俺のそんな思いは良い意味で裏切られた。


「うちの馬鹿が起こした事件で、命を張ってくれたのだろう? 礼を言うよ」


 あれ?


 王様は微笑み、ポチにお礼を言った。てっきり、コウさんと同じだと思ったけど……。

 すると、そんな俺の視線に気づいた王様が、笑いながら話した。


「私が彼を敵視すると思ったのか?」

「は、はい……」

「確かに、彼は警戒するべき相手だろうね。だけど、それとこれとは話が別だよ。うちの馬鹿の尻拭いをしてくれたんだからね。あと、コウとミフネからも『敵だとは決め付けられない』と聞いてるから」

「……!」


 コウさんもミフネさんも、ポチのことを分かってくれて来たみたいだ。

 そういえば、コウさんはあの時元々斬るつもりは無かったって言ってたっけ。


「……それで? 君の提案とは?」

「はい。先程の話では、倭国へ船で向かうとのことでした」

「ああ、そうだな」

「その船は、どれほどの時間をかけて倭国へ向かうのか、お伺いしても?」

「ん? 少し待ってくれ……」


 王様は紙を1枚めくり、該当する記実を探し始めた。


「あったあった。約1週間くらいみたいだな」


 長っ。ということは、往復に1週間ずつかけるとして、倭国に居られるのは2週間くらいになるのか。


「……1週間、そうですか……」


 ポチはなにやら顎に手を当て考えている。そして、若干勝ち誇ったような表情で言った。


「ならば、私は1日で飛んでご覧に見せましょう」

「……なに?」


 自信満々に宣言するポチ。当然その場の全員が驚いた。


「それは……どういう事だ?」

「説明させていただきます」


 すると、ポチは背中から翼をはやし、頭にツノを出した。

 ちなみにその時、執事服の背中の肩甲骨らへんの部分が破れたのは気にしない。


「先ほども言いましたが、私はブラック・ワイバーン。本来の姿は、この体の何倍もの大きさとなります」

「ほう……?」

「つまりは、倭国へ向かう皆様を背に乗せ、運ぶ事も可能です」


 ……なるほど。

 つまり、ポチが俺たちを乗せて倭国に行くってことか。


「帆船のように風に左右されるわけでも無いですし、今の体では休息もある程度までは不要です。移動手段として、私以上のものは存在しません」


 あ、言い切った。


「うーむ、そうだな。どうせ帰るのであれば、長い時間故郷にいた方が良いだろう……分かった。コウ達には私から説明しておく」

「ありがとうございます」


 そんなこんなで、俺達が倭国へ向かうための話は続いた。

 ポチに関していろいろな話が出たが、やはりポチの背に乗って向かう方が色々と都合がいいと言う結論が出た。


 倭国は鎖国をしているため、帆船と違い自由な場所へ降りたてるポチの方が良い。不法入国だけど。 

 でも、コウさん達は元々倭国の人だし、俺の見た目は倭国の人と同じらしいし。不法入国がバレることはないんじゃないかな。


「……よし。それじゃあ、出発は5日後だ。その時にまた会おう」


 王様はそう言い残し、王都へ帰った。 

 

 ……まさか、1ヶ月も倭国へ行くことになるなんてね。予想してなかった。

 というか、正直色々ありすぎてテイルの依頼を忘れかけてたから、ちょうどよかったのかも知れない。


 

 

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