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100話 家庭教師 3


「ラカラムス王国国王、ライナ・ラカラムスの名において、グローラット家へ多額の金銭補助を行う。それに加えて王命を下す。ミフネ・ヤマト、『龍殺しの英雄』カイト・グローラットの魔術の教師を務めよ」

「……分かったわ」



 ……と、いう事でミフネさんが俺の教師になったわけだ。


「ちょっとどうしたの? 変な顔してるわよ」

「えっあ、すいません……ちょっと、お城で起きた事を思い出して……」

「ふーん……」


 すると、彼女は俺から目をそらし、特に何も無いところを見つめ始めた。


「……ミフネさん?」

「……良い? よく聞きなさい。あのクソジジィが言ったことは間違ってるわ。あんたは兵器なんかじゃなくて人間なんだから、ちゃんと自信を持ちなさい」

「……!」


 ……これは、彼女なりの励ましの言葉か。少し話し方に威圧感感じるが、彼女の優しさがよくわかる言葉だ。


 というか、俺が兵器って設定の事すっかり忘れてたな……なんか、思いのほか重く受け止められてて、ちょっと驚いたんだよね。


 そんな事を考えているうちに、裏庭に到着した。


「ほら、着いたわよ。じゃあ、早速始めるわね」

「はい。よろしくお願いします」


 ミフネさんの指導の元、魔術を連射する練習が始まった。

 彼女の教え方は分かりやすく、すでにかなりの短時間で魔力をまとめられるようになっている。


「全く……何をどうしたら、そんなに早く上達するのよ」

「……ミフネさんの教え方が上手なんです」

「なっ……せ、世辞はいいから集中しなさいよ!」


 相変わらずな反応を見せる彼女だが、教え方が上手なのは本当だ。

 それに、彼女の魔術の連射はお世辞なしで凄まじい。


 お手本として何度かここでも見せてもらったが、やはり機関銃のような速度だった。

 どれほどの努力をしたら、あれほどになれるのか……俺には到底見当もつかない。



「じゃあ今日はここまでね。お疲れ様」

「はい。ありがとうございました」


 始めてから数時間たち、今日の練習が終わった。

しかし、今日はお開きというわけでは無い。


「ん、それじゃあ……」

「はい。今日はなんですか?」

「今日はこれよ」


 彼女は1冊の本を見せてきた。これは研究をまとめた自作の物らしい。


 開かれたページは、何やら凄い文字量と綺麗に書かれた魔法陣が記載されている。

 そして、その冒頭には“召喚術”と書いてあった。


 これからする事は、彼女が俺に魔術を教える事に対して条件として協力を求めてきた事だ。


 内容は、“魔法の研究”。


 世の中には使える者はいないが、書物に記されている魔法が沢山ある。

 言わば、『データのみ残されている魔法』だ。彼女の条件は、その魔法の実演をして欲しいという事。


 最初は当然、『報酬に条件?』となったが、俺に対してはメリットしか無いのでコウさん達も許可を出した。


 あの時、『あんたって見ただけで魔法とか覚えられるでしょ? なら、どういうものかさえ理解できれば習得できるんじゃないの?』と指摘されてしまい、否定も出来なかったので俺も引き受けることとなった。


 ちなみに前回で、俺は“結界魔法”を覚えている。今度機会があれば、使ってみよう。


「準備はいいかしら?」

「はい。大丈夫です」

「じゃあ始めるわ。まず、召喚術は通称“召喚魔法”と呼ばれ、数百年前に確認された魔法だそうよ。で、記録によれば召喚魔法には“魔力召喚”と“実態召喚”があって……」

「……」


 今何をしているのかというと、これから実際にやってみせる魔法の説明を受けている。


 正直なところ、魔法の名前さえ分ってしまえば“賢者”で習得は出来る。

 しかし、その事は親にすら説明していない。

 だから、“実際に見るか、理解をしなければ習得出来ない”という体にしている。


「……って感じね。どう? 理解は出来たかしら」

「え、あっはい! 大丈夫です」


 やばい、ボーとしてあまり聞いてなかった。


「……ほんとに大丈夫?」

「は、はいもちろんです」


 誤魔化すように笑い、急いで“賢者”を発動させる。そして、習得したい魔法の名前を思い浮かべた。


 召喚魔法 Lv5


「し、習得出来ました」

「ええ、みたいね。早速やってみて……って言いたいところだけど、体に異変はないかしら?  

もしなにかあれば休憩挟むけど」

「あ、いえ大丈夫です」

「……そ、無理はしないでよね。……別に、あんたのために言ってるわけじゃないわ。あんたに倒れられでもしたら、あたしの責任になるんだから。そういう事よ」


 見事なツンデレだ……この優しさが少しでもコウさんに向けられたら、きっと喜ぶんだろうな。

 ……っと、余計な事を考えてる場合では無いね。


「それじゃあ、まず“魔力召喚”の方からお願い。“実態召喚”は何があるか分からないからね」

「分かりました」

「いい? まずは小さい動物でお願いね」


 両手を前に出し、召喚魔法を使う。目の前の地面に大きな魔法陣が出現した。



 “魔力召喚”は、『術者の魔力を元にした生き物を呼び出す』と言う魔法。

 つまり、術者……俺の魔力で体を構築した生き物を呼び出せるのだ。

 

 召喚体の力量は、構築に使う魔力に左右される。

 故に、召喚に使う魔力より、召喚体の構築に使う魔力の方が多いこともあるようだ。



 それに対して“実態召喚”は、『生きているものを目の前に呼び寄せる』という魔法。

 ラノベでよくある、“勇者として異世界に召喚された”の様な展開で使われる召喚魔法は、こちらの方が合っているだろう。(あくまで例え。実際は無理)


 実態がある生き物を召喚するには、その場で召喚体を構築する“魔力召喚”と違い『呼び出す段階』だけで多くの魔力が必要らしい。


 言ってしまえば、使用した魔力に見合わない生き物が召喚される事もある。



 いずれにしても共通するのは、何が召喚されるかは分からない事。つまり“ガチャ”であることだ。


 であれば、自分で召喚体の力量を左右出来る“魔力召喚”の方が実用性があると言える……のかな?


 これが、“賢者”によって得た“召喚魔法”の知識だった。


「それじゃあ、始めますね」

「ええ、いつでもいいわ」


 その返事を聞いてから、“魔力召喚”を使った。初めて見る1メートルほどの魔法陣が、目の前の地面に出現する。

 なぜ魔力召喚なのかと言うと、実態召喚を使かった場合、実際に生きている人を召喚してしまう可能性もある。

 そうしたら、少なくとも怒られるのは目に見えている。


 という事で、この場で生き物を生成する“魔力召喚”を選んだわけだ。


「まずは小さい動物……小さい、か……」


 小さいってことは、弱いってことだよね。それなら、使う魔力を少なめにして……基準はよく分からないけど。


 魔法陣に手を向けつつ、ミフネさんへ目を向ける。凄い勢いで手帳にペンを走らせる姿が見えた。


「よし……」


 魔法陣に魔力を流す。すると、魔法陣は列ごとに左右に回転し始めた。

 そして、一瞬光ったかと思ったら、その中心に小さな動物の姿があった。


「……ネズミ……かな?」


 その動物は30センチほどのネズミ。森でもたまに見る種類だ。


「凄いわ……」


 そんなミフネさんの声と、ペンが走る音が耳に届く。見ずともその勢いが分かるような音に、若干の苦笑いを浮かべる。


「ん……?」


 しかし、そのネズミの様子がおかしいことに気がついた。ピクリとも動かず、ただ出現した場所に留まっているのだ。


 このネズミのイメージは、森で見かけただけで一目散に逃げるような、臆病なものだったけど……。

 

 今俺は、かなり近く……というか、すぐ隣でしゃがみ込んでネズミを観察している。それにも拘わらず、一向に逃げようとしない。


 ……あれかな? 召喚体は召喚主の言うことを聞くとか、仲間になるとかなのかな。

 読んだことのあるラノベだと、召喚体を仲間にして戦ってたりしてたし。


「……っ!?」


 しかし、そう思ったのも束の間。突然、そのネズミに変化が現れた。


 小刻みに震え出したと思えば、全身の色がかすみ、生気が失われたような色へ変化。体毛も所々ハラハラと抜け始め、“腐ったような肉”が露出する。


「……え……」


 そのすぐ目の前で起きた異常な変化に、思わず口から声が出る。

 すると、ネズミはこちらに気がついたのか、ゆっくりと振り返った。妖しく光を反射するその目を見た瞬間、背筋が凍りついた。


 キシャァァアア!!


「う、うわぁ!?」

 

 目があったと同時に、ネズミが牙を剥き出しにし飛びかかってきた。

 ビクリと体が反応して、尻餅をつく。飛び上がったネズミが目の前まで迫る。


「わっ!?」


『重要なお知らせ』(2020/1/30)

 結論から言わせていただきますと、本日から“2日に1回投稿”とさせていただきたいと思っています。(次回投稿は2020/2/1です)


 毎日投稿を続け、ついに第100話まで投稿することができました。ここまで読んでくださった皆様、本当にありがとうございます。

 勝手ながら、学業との両立を図るために投稿ペースを1日遅らせていたくことといたしました。大変申し訳ありません。

 投稿ペースは変わりますが、活動は続けていきます。今後も家族愛をテーマに面白いと思っていただけるようなお話しを書けるよう励みたいと思います。

 今後とも、この作品をどうぞよろしくお願いします。

 

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