万華鏡
5月の夜空に あなたが咲いた
初夏の生温い外気は煩いくらいに体にまとわりつく
僕は僕が好きであって あなたはあなたが好きじゃない
誰しも理解し難いものには 蓋を閉ざすもので
そうして 万華鏡を覗くように真の姿など どうでもよく 単に綺麗に造られた 目が痛くなるような色彩に埋もれていたいのだ
あなたはあなたが好きであって 僕は僕が好きじゃない
また僕は僕という狂気に気づかぬ振りをしながら そういう思想を退屈なおセンチと称して
酔いしれて 道化を演じ 愛というものに興じて
あなたは尚の事 僕という人間を賞賛し 崇め讃えて それで勝手に壊れていく僕に失望するのだ
僕とあなたは日常というありふれた狂気にのみこまれながら 幸福をたらふく腹一杯に食し きっと それでも満足できないと笑うだろう
それこそ 万華鏡を覗いた時の 輝く小さな装飾品が互いに戯れるみたいに
5月の夜空には 一層美しくあなたは咲き乱れ
星々などまるで比にならないような輝きで 僕をまた狂気に落とすに違いない 何でもないとでも言うように
そんなあなたを堪らなく 狂おしいくらいに 嫌いなのだ