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トレーニング


 望、久保、遠藤、中沢、小西。この五人が左のロッカー側に。

 仲村、阿部、小鳥遊。この三人が右のロッカー側に。

 桜峰サッカー部の部員達が、中央のベンチを境にそれぞれ二つに分かれて並ばされていた。


「こちらの五人は陽。三人の方は陰だ。まぁ割合としては妥当なところだね。ただ、小鳥遊君だけは陰陽どちらなのかまだ掴み切れていない。彼女も非常に珍しいタイプなようだ。ふふ。これはなかなか観察しがいがあるね」


 サッカー部の狭い部室内に作られたこの二組の選考基準を言い当てられる人間は、おそらくいない。


「え〜? 私って陰なんですか〜? ちょっと複雑です〜」


 納得がいかない様子の仲村が右頬をぷくっと膨らませる。あざとい。


「皆んなのことはよくわからないけど、僕個人については、まぁ納得かな……。むしろそうじゃないとおかしいって言うか、ね。でも、この二人が陰ってのはちょっと……。なんか並んでて悲しくなってくるんだけど」


 うんうんと頷きつつも徐々に劣等感に苛まれていく阿部。この子は息をするようにネガる。


「……」


 そして、この異常空間においてすら、興味関心の一切が表情に浮かんでいない小鳥遊。

 謎のカテゴリー、「陰」にチョイスされた三人は、三者三様のリアクションだった。そんな彼女達のどこがツボだったのか、酒井の陰陽の話が嬉々として進んでいく。


「あぁ、そこは安心して欲しい。別に陰は悪いものではないんだ。血液型に良し悪しなんてないのと同じでね。要は個人の性質に過ぎない。実は陰の人間の方が社会的成功者が多かったりするのだよ」


「へぇ〜。なら陰でも良いですね〜」


「良いですねぇ、じゃねぇよ。練習前に何やってんだ君らは」


 俺がこのカオスな部室に到着してとうとう10分。やっと話に割って入れた。


「ごめん、コウちゃん。私らもよくわからない……」


 望が目元に影をつくりながらぽつりとこぼした。唸るような低い声にその心労が窺い知れる。

 チームを引っ張る久保、冷静に仲間を助ける遠藤、場を盛り上げる中沢、常にマイペースな小西など、陽に割り振られたこちらのメンバーの方が普段は活気がある。だが、今に限っては、何故か彼女達の方がテンションが低かった。声の出し方を忘れてしまったみたいな顔つきで所在なさげに立っている。

 仲村や阿部はごく普通な様子でお喋りしているのを見ると、本当に陰陽の性質が何かしらのケミストリーを起こしているのかもしれない。


「ハァ……。酒井。もうその辺にしておいてくれないか。こっちの話がまるで進まん」


 いつも話の進行を手助けしてくれる久保や望が絶不調なので、俺が一人で場を作らなくてはならない。非常に面倒くさい。


「おっと。これは申し訳ない。小鳥遊君と言う新たな発見に、つい我を忘れてしまった。今後は自重するよ」


 とは言え、酒井はこの通り、こちらの言うことはちゃんと聞いてくれる。我が道を行く人間ではあるが、自己中心的と言うわけではないらしい。


「ぜひ頼む。それと、なんで君はまだ制服なんだ?」


 やっと話がレールに乗ったことに安堵したせいか、細やかな疑問が口をついた。他の部員達はすでに練習ができる格好になっているが、酒井だけはまだ制服のままなのだ。それにしても、学校でもその貞子みたいな髪型で過ごしていることには仰天させられた。身嗜み検査とか引っかからないのか? 


「あぁ、これかい? 今日は新しいメニューを選手達に伝えると言っていただろう? なら私は一歩引いた位置にいた方が良いかと思ってね。今日は見学だ」


「なるほど」


 言っていることは理性的で正しいし、場の空気もちゃんと読んでくれている。ただ、自分のキャラが濃過ぎると言うことだけは計算に入れられなかったらしい。もう君の登場だけでうちの部員達はいっぱいいっぱいなんだよ。ほら見ろ。久保のあの脳がショートしたおバカさんみたいな顔。耳から煙でものぼっていきそうだ。


「ゴホン」


 空咳如きで場面転換できるとは思えないが、一応はやっておく。部員達もまだ別の世界との境界線に立っているが、それを何とか引き戻す。


「では早速。君達もとっくに気付いているだろうが、まずはこれについての説明を」


 俺の手の甲がコンコンと叩いたのは、ずばりテレビだ。これは桜峰女子高等学校の視聴覚室の備品で、俺が先程この部室までえっちらおっちら運んできたものだ。半分箱型の二世代は古い型なので、結構重くて苦労した。


「もちろん、これはテレビ番組を見る用の物じゃない。見てほしいのはこっち、俺が中学高校の頃に使ってたDVDだ」


 テレビ台の棚には、すでに半透明のDVDボックスが二つ収納されている。これらのDVDは俺が自ら録画、編集したもので、一枚につき一時間程度の長さのものが合わせて四十枚ある。


「トラップ、パス、ドリブル、シュートなど、それぞれのプレーの前後五秒間のみを録画してある。プレーの中でもいくつか種類分けされていて、例えばトラップでは、足元にピタっと止めたもの、相手のディフェンダーから離れた場所に止めたもの、スピードに乗るためにわざと大きく蹴り出したもの、相手の逆を突いたものなど、試合で使えるものを選りすぐってある」


 技術的上達を果たすためには、完成形のビジョンをイメージできることが重要な入り口となる。このDVDにはそのお手本とすべきプレーが詰まっている。世界トップレベルのプレーを見て、覚えて、真似る。このDVDを見ることは、部員達の上達の手助けになってくれるはずだ。


「断っておくが、私生活のあらゆる時間をこのDVDに捧げろと言う訳じゃない。練習前の準備中や、練習後の帰り支度の際に横目で流し見する程度で構わない。君達のイメージを構築するためにこのDVDを使ってくれればそれで良い」


 良いプレー、凄いプレーを見ればモチベーションが上がり、練習にも力が入る。これはそう言う効果も狙っているものだから、強制すると意味が薄れてしまう。


「てなわけで、これはもう俺には必要のないものだから、君達にやる。好きに使ってくれ」


「い、良いの!? こんなにあるのに!?」


 すると突然、久保がもの凄い勢いで食いついてきた。いつもは俺の発言に白けた視線ばかりを向けてくる久保が、こんなにも瞳を輝かせるとは。


「あぁ、やる。持って帰っても良い」


 何なら処分してくれて良い。ぶっちゃけ、このDVDボックスがアパートの押し入れの奥から出てきた時は渋い顔をしたのだ。何でまだコンナモノ持ってるんだよ、と。だが、


「おぉ、兄ちゃん太っ腹やな!」


「あの、あの……! 私、このターンのDVD持って帰って良いですか!?」


「僕もこれ! うわぁ! コーチっち意外なとこでマメだね! 何の役に立つの!」


「キーパーのプレーが一つも無いのはなぜですか。PKを一本も止めれないヘボキーパーの私への当て付けですか」


「……キーパーは仕方ないだろ」


 他の者達もこんなノリで乗っかってきた。小西がいつもとは違う方向に面倒くさくなっているので、俺としては早めに話を切り替えたい。だが、早速どのDVDにどのプレーが収録されているのかを探し始めた少女達に水を差すのも、何ともどうかと思ってしまう。


 ーーいや、やっぱこの子らおかしいわ。


 ジャニーズのDVDじゃあるまいし、よくもそんな喜び方ができるよな。普通ならもっと嫌そうな顔をするだろう。何のエキサイティングもないこんなDVDを見せられるのなんて、普通の人間なら苦痛でしかないはずだ。実際、俺は半分は嫌がらせのつもりだったのに、何とも肩透かしされた気分だった。


「はいはい! それはもう後にしろ! ここからは本格的な練習メニューについて説明していくからな!」


 俺の発した練習メニューという単語に部員達はピリリと反応した。手早くDVDボックスにテープを仕舞い込んで再び整列する。


「君達が今の戦力、人数で試合に勝つために必要なことは何か、と言う思考から導き出したメニューだ。まぁ、別に勿体ぶるような大したことじゃない」


 桜峰サッカー部に決定的に足りないもの。それすなわち人数だ。新入部員である酒井灯美を加えても、こちらは八人。それに対し相手チームは十一人。誰がどう見ても不利で、逆転は不可能なほどの戦力差がある。

 故に、このチームが試合をする上での大前提は、相手チームよりも走力があること。足りない三人分を、一人一人が走り回り、走り勝つことでカバーするしかないのだ。


「君達に必要なのは一にも二にも走力。走力を付けるためには、それはもう走るしかない。これからは走って走って、走りまくってもらう」


 「走り」と言うこの言葉が好きな人間は、あまりいない。だが、これは上に行くためには避けては通れないメニューなのだ。嫌だろうが苦しかろうが、やってもらうしかない。

 途端に仲村は露骨に嫌そうな顔をするし、遠藤も先程までの頬を上気させた表情から一転、身体を硬くしてしまっている。この二人がこうなるのは予想通りだったが、加えて阿部も緊張したのは意外だった。おそらく、強豪烏沢学園での厳しいメニューを思い出したのだろう。


「君らの1000m走のタイムを叩き台に、ダニエル式ランニングメソッドに基づいたインターバルメニューを作った」


 昨晩、酒井に見せたノートを取り出してペラペラさせる。これには選手達のスポーツテストのデータが記されている。


「1000m走の時点でかなり個人差があったから、タイム上位のA組、下位のB組に分けた。Aには久保、阿部、中沢。Bに小鳥遊、仲村、遠藤、小西。ちなみに、タイムだけ見れば小西はA組なんだが、ここは中沢に行ってもらう」


 A組は1000mを3分台で走る者達で、B組は4分台。仲村と遠藤はさらにその下、5分台となっている。


「ここのグラウンドは一周400mだ。A組はこれを1分38秒以内で一周する。そして1分40秒で半周。これを連続して毎日5本。この1分38秒って数字は1000m走で最も速い久保のペースで出したものだから、阿部、中沢はそこそこキツいぞ」


 ダニエル式ランニング。これはアメリカの著名なランニング指導者である、ジャック・ダニエルズ博士が作ったトレーニングメソッドだ。彼のこの理論は書籍として発売されているので、ランニング界ではすでに広く知られている。これを参考にすればランニング初心者から上級者まで、自分の実力に合った練習メニューを作ることができる。


「メニューには五つの強度があり、普通は一番下から順を追ってトレーニングしていくものだ。だが、今回は君達がすでに基本的な走力を有しているものとして、二つほど順を端折った。繰り返して言うが、そこそこキツい。まぁ、説明はこの辺にして、実際に走ってみよう。グラウンドに出るぞ」


 このインターバル走の総距離は2800m。ただ走るだけならそこまで長い距離ではないが、インターバル走となると話は変わってくる。部員達もそれをちゃんとわかっているのだ。雰囲気がガラリと変わり、口をへの字にしてグラウンドに出て行く。文句の一つも出てくるかと思っていたが、意外と素直だった。


「それじゃあ皆んなー。朝礼台の前からスタートするよ!」


 先に準備していた望が片手を挙げて選手達を呼ぶ。見学の立場にとどまると言った酒井以外のメンバーが走り出しの位置に着こうとする。それを、


「ちょっと待った」


 俺は止めた。全員ではない。小西と小鳥遊、仲村と遠藤。B組の四人を、だ。


「君らは別メニュー。A組が走っている間、B組はラダートレーニングをする」


 A組とB組では規定タイムがまるで違うので、同時に計測することができない。ストップウォッチを二つ使うとか、高性能のものを部費で買うとか、ランニングする選手達に計らせるとか、同時にやらせる方法は色々とあるのだが、今回はあえてグループを分けることにした。


「ラダーですか?」


「そうだ」


「ラダーって、アップでやるあれですか〜?」


「そうだ。アップでやるあれだ」


「あのタルいやつですか〜?」


「そうだ。あのタルいやつだ。……その認識は今すぐ改めてもらうからな」


 ラダートレーニング。基本的にはステップのトレーニングだと思って間違いない。ラダーというのは、ハシゴ状の道具を用いることから来ている。ラダーがない場合はマーカーやコーンなどで代用する。と言うか、ラダーはかなり専門的な用具なので、普通の部活には無い。マーカーやコーンがデフォだ。


「その顔、君らはこれを『効果の薄いトレーニング』だと思ってるな?」


 サッカー経験者の三人がこくりと頷く。小鳥遊は全くもって興味が無さそう。

 まぁ、確かに、ラダートレーニングに対する懐疑的な視線はまだ一部で存在する。


「小学校の時、足が速くなると言ってやらされましたけど〜」


「そんなに、速くなったとは思えなかった……です。あ! でもこれはあの、私の努力が足りなかったのももちろんあると思いますが!」


「いや、良い。ラダートレーニングが効果が薄いってのは、ある意味では事実だからな」


 俺が説明する前に仲村が言ってくれた。「ラダートレーニングで足が速くなる」と言うのは、完全にデマだ。デマと言うか、これは、ラダートレーニングの目的をそもそも見誤っている。


「ラダートレーニングで主に鍛えられるのは敏捷性アジリティだ。これは速い動作を正確に行う能力のことを指す。決められたステップを決められた範囲内で素早く行う。これを繰り返すことによって君達の身体や、脳の神経が鍛えられる。『速く細かい動作を正確に行う』ために、脳と神経、そして筋肉を鍛える。それがラダートレーニングだ」


 ラダートレーニングで最も効果が期待できるのは、敏捷性の向上。次いで俊敏性の向上。そしておまけとして体幹の強化と股関節の柔軟性の向上と言ったところか。

 つまり、足が速くなると言うのはラダートレーニングの本質から外れている。敏捷性を鍛えれば多少は足も速くなるかもしれないが、それは「多少」であり、なおかつ「かもしれない」、だ。つまりは副次的なものに過ぎない。本当に足が速くなりたいなら、もっと適したトレーニングは幾らでもあるだろう。


「敏捷性が上がれば、ターン、ステップがより正確に、細かく、スピーディに行えるようになる。どんなにボール扱いが上手くても、それに足が付いていけなくては意味がない。逆に言えば、ステップを今以上に速くすることができれば、ドリブルも速くなる。細かくなる。キレが増す」


 インターバル走で単純な走力、体力、足腰を鍛え、ラダートレーニングでその鍛えた足をより上手く素早く使えるよう昇華させる。走れる体力、動ける敏捷性。この二つのトレーニングで、選手達の肉体構造をより精密に作り上げる。


「だから、ラダートレーニングでは一切の手抜きが許されない。常に自分の限界かその一歩手前でトレーニングすることで脳と神経が発達するからな。どれだけ頭を使っているか、必死でやっているかで明らかな差がつくトレーニングとも言える。だから、タルいとか言ってやってても全く意味がない。良いな?」


「は〜い」


 わざとしょんぼりした様子で返事する仲村。それに苦笑いする遠藤。仲良さそうなのは良いことだ。


「んじゃ、ここから具体的に種目を説明していく。まずは基本のクイックラン、ラテラルラン、シャッフル。次に少し動きを複雑にして、カリオカ、1イン2アウト、2イン1アウト、2イン2アウト。これらは全部、マス4つでやってもらう」


「4つ、ですか? 少し短くないですか?」


「敏捷性と俊敏性を鍛えるなら長くやる必要はない。その代わり、オンとオフの切り替えを明確に。ステップは全速力で、ステップに入る前、終わった後はリラックス。メリハリをつける」


 最初は誰にでも出来る簡単なステップだけにしている。順を追って複雑なステップ、トレーニングを追加する。


「んで、ここからはレクリエーション」


 ステップを踏んだ後、別の動きをさせることで頭を回転させる。


「三つのコーンを横に倒してあるから、それぞれ身体を180度ツイストさせながらジャンプして跳び越える。その際、両手は胸の前でクロスすること。ポンポンポンとワンテンポで跳べよ」


 ステップで弱疲労した脚を酷使させるツイストジャンプ。腕でバランスを取れないようにすることで体幹もついでに鍛える。


「次、マーカーを4つ、君達から見てダイヤモンド型に設置しているから、まず、一番奥のマーカーまでダッシュ。そしてタッチ。そのままクロスオーバーステップで左右どちらかのマーカーまで戻り、タッチ。サイドステップで対角に渡り、タッチ。そしてまたクロスオーバーステップで始発点のマーカーまで下がり、タッチ。そしてダッシュで最奥に抜ける。動き方としては、縦、斜め後ろ、横、斜め後ろ、縦。マーカーに触れた後はしっかりマーカーの外側を通ること。これを2周続ける」


 クロスオーバーステップで対人用の動きを鍛え、なおかつ地面にあるマーカーに触れさせることで足腰に負荷をかける。


「そして最後に、俺が持っているボールにタッチ。これはそのまま君達の後方に投げるので、退がりながらヘディング。俺はそれをキャッチして縦パスを出すから、君達はあっちのゴールにシュート。シュートはニアとファーにコーンでコースを作っておくから、どちらかを狙ってしっかり通せ」


 ヘディングを織り交ぜることで上半身も使用させる。そして最後はサッカーで最も重要なプレーの練習。脚が疲れた状態でシュートを打たせることに意味がある。ラストパスも強さやバウンド、角度などバリエーションを持ったものを送る。ついでにニアかファーかの打ち分けの練習もさせる。


「ここまでやって、一本。これを十本やってもらう。ちなみに、十本目はシュートをしっかり決められない限りリトライ。シュート方向も俺が指示するから、反応して打ち分けろよ」


 一本一本の合間の休憩は無し。呼吸が荒れた状態を長めに維持させる。これも様子を見てレクリエーションを増やす、複雑にするなどして負荷を強めていく。ちなみに、その段階はかなり早いから、これもまたどんどんキツくなる。


「A組が走ってる間に十本が終わらなかったら、それは君らがインターバル走を終わらせた後でリトライさせる。インターバル走までに少しでも休憩したければ、こっちのトレーニングを早く終わらせる必要があるな」


「「「「…………」」」」


 四人の沈黙が音になって聞こえてきそうだ。インターバル走をしている久保達の吐く息が近くに思える。


「日本一になると言ったのは君達だからな。目指すものと比べれば、こんなんではまだまだヌルい」


 当然、ボールを扱う技術のトレーニングもやらなくちゃならない。身体作りだけに練習の三十分もかけられないから、時間ではなく密度を高めることで補っていく予定だ。


「じゃあ、小西、仲村、小鳥遊、遠藤の順に開始。前の人間がラダーを抜けるタイミングで次が出ようか」


 このメニューは俺が机の上で作っただけのものだ。部員達に実践させてみれば意外に楽勝だった、と言う風になるかもしれない。


「これをしっかり終わらせてくれれば、ボールを扱うトレーニングもやらせてやれる。気張ってくれよ」


 それらは試合形式に近い形を取るつもりだから、体力が残っていればそこそこ楽しいはずだ。


 ーーまぁ、頑張れとしか言いようがない。


 小西がスタートした瞬間、俺はこっそりストップウォッチを押した。平均タイムを取り、それより著しく遅い場合はやり直しをさせるためだ。

 トレーニングには「理不尽」も必要だと、俺は思っている。試合は理不尽なことに満ちているから。理不尽にぶち当たった数だけ成長する。それを乗り越えられたらの話だが。


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