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お知らせ
年末年始は更新しません。
「遺伝と言っていたな。ならば伝染病のように他者にうつるというわけではないのだな?」
「ええ。ですが……」
「それ以外に問題があるのか?」
ヴァルツは煩わし気に言ったラディに、咎めるような視線を送った。しかしラディは王子の威厳でそれを受け流した。
「あります……、殿下がティ様にどのような対応をなさるかで変わりますが、ノアル病の心臓は俗称『ブリキの心臓』と呼ばれます。些細な感情の揺れでも発作を起こし、心不全を引き起こすのです」
「感情の揺れで発作を起こす?」
「はい。ティ様はご自身がそうだともご存知なさそうでしたが、人のいない部屋にいたこと、会話がおぼつかない様子からおそらく人とかかわってこなかったことから、ノアル病の対処をされていたのでしょう。ノアル病の対処法は感情を揺らさないことしかありません」
ラディが口を挟まずにいると、ヴァルツは淡々と続けた。
「……、ノアル病が広く知られておらず奇病の一種であるのは、まず、赤子のころに発症すれば原因もわからずに亡くなってしまうこと、ある程度成長して発症した場合は感情の揺れが大きくやはり亡くなりやすいことが主な原因です。医者に診せる暇もないのです。原因が感情の揺れであるため、前兆も見つけにくい。つまり、ティ様があのお年まで生きておられるのは奇跡に近いのです」
「それで?」
「私の希望としましては、ティ様にはノアル病の研究の為に生きていていただきたいところです。――すでに処刑などが決まっていましたら、どうか、お考え直しを」
ヴァルツはあえて強く言い切った。ラディは冷徹な面があるが、それは合理的であるということでもある。価値があることはそれ相応の対応をする。あの可哀そうな姫を一先ず助けるには、合理的にラディを説得する必要があった。
「……。死ぬくらいなら役に立て、と言うところか。殺すのは簡単だからな……」
ラディは考え込むように呟くと、ヴァルツに背を向けた。ヴァルツは一先ずティを助命できそうだと胸をなでおろすと、ラディの背に一礼して退室した。
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