(17)
とりあえずの話を終え、ラディ殿下は先触れの方と一緒に出ていった。部屋の外にはさらに多くの人がいるらしい。
ラディ殿下の提案を飲む以上、これまでよりもたくさん学ぶことがあり、また、体力も付けなければならなかった。先のことを考えると少し気が遠のくような気がする。
「ティ様。私は他の仕事に戻りますので、失礼しますね。また明日参ります」
ヴァルツはそう言って退出し、残ったレイナはまた若干ぷりぷりしながら、気遣う言葉をかけてくれた。
「大丈夫ですか、ティ様……?これから詳しくお教えしますが、ラディ殿下の発言はとんでもないものです。無理だけはなさらないでください」
「ありがとう……。レイナ、たくさん教えてください」
レイナの心配ぶりで、これからがいかに大変かわかるというものだ。先ほどよりも気が重くなりつつも、自分で決めたことなのだから、やるしかないと気持ちを切り替えていこう。
一先ず、やるべきことへの準備から始めなければならないということで、今日はゆっくり休むことになった。食事をとり、定期的な運動をし、空き時間に勉強を兼ねた読書をする。
この平穏が今日限りかと思うと、名残惜しい気がした。その分、満喫しようと思う。
ふと、機械とロボットだらけの部屋を思い出した。陽の光さえ弱々しいあの空間は、人とかかわるゆえの煩わしさや喧騒から守ってくれていたのだと、今更実感した。
けれど、あの空間に再び戻って、ゆりかごのように守ってほしいのかと考えると、そう言うわけでもない。今のにぎやかでほんの少しだけ煩わしい人々とのやり取りが、とてつもなく楽しいものだと知ってしまったから。
詳しいことはわからないけれど、私はどうやら貴重な病気を持っているようだということを、ヴァルツから聞いている。それで命が危ういとも。
もしそうなら、早くに死んでしまうのかもしれないのなら、私は今を精一杯生きたいと思った。