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けれど、説明の途中で遮ったり、説明をよく聞いていないと判断すると、容赦なくお説教もするので、間合いが難しい時もある。私はしっかり聞き終えてから、そわそわした気持ちを隠さずに伝えた。
「……今日のラディ殿下のことは知っているでしょう?レイナ」
「はい」
「それで……、覚悟を決める前に、知りたいことができてしまったの。なんだか落ち着かない」
「ティ様は決断がとてもお早いのですね……。私なら、きっと何日も考えて考えて決めると思います」
レイナはそう言って、花瓶から離れてベッドの上の私に向き直った。
「もうお心が決まっているなら、どっしり構えていてもいいと思います」
「……どっしりと……?」
「はい!これ以上何もできない、しないと決めたのなら、考えたり焦ったりしても意味はないです。だから、のんびり過ごしましょう?」
「……!」
そんな考え方があるのだ、と私が感心していると、レイナはいいことを思いついた、とばかりに手を打った。
「そうです、ラディ殿下から許可をもぎ取ってきますから、本などをお持ちしましょうか!何かお望みのものはありますか?」
突然の事のように思えて驚いてしまったけれど、暇で暇で、落ち着かないときに余計落ち着かないのも事実だったので、私は笑顔を浮かべた。
「ありがとう……。無茶はしないでね」
それから、読んだことのある本の名前を告げ、それ以外のものを、と言うと、レイナは嬉しそうにまた部屋から出ていった。
まだ読んだことのない本を思い浮かべ、心が浮き立つのを感じる。ラディ殿下は許可をくれるだろうか。もしかしたら、くれないかもしれない。そんなことを考えて、心が沈む。
自分の感情と言うものをきちんととらえ始めて日が浅い私は、そんな些細な心の動きですら、新鮮で。
翌日の話次第ではもしかしたら死んでしまうということを、全く気付きもせず、ただ、今ある幸せをかみしめていた。