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ブリキの心臓  作者: 着津
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(13)

けれど、説明の途中で遮ったり、説明をよく聞いていないと判断すると、容赦なくお説教もするので、間合いが難しい時もある。私はしっかり聞き終えてから、そわそわした気持ちを隠さずに伝えた。


「……今日のラディ殿下のことは知っているでしょう?レイナ」

「はい」

「それで……、覚悟を決める前に、知りたいことができてしまったの。なんだか落ち着かない」

「ティ様は決断がとてもお早いのですね……。私なら、きっと何日も考えて考えて決めると思います」


レイナはそう言って、花瓶から離れてベッドの上の私に向き直った。


「もうお心が決まっているなら、どっしり構えていてもいいと思います」

「……どっしりと……?」

「はい!これ以上何もできない、しないと決めたのなら、考えたり焦ったりしても意味はないです。だから、のんびり過ごしましょう?」

「……!」


そんな考え方があるのだ、と私が感心していると、レイナはいいことを思いついた、とばかりに手を打った。


「そうです、ラディ殿下から許可をもぎ取ってきますから、本などをお持ちしましょうか!何かお望みのものはありますか?」


突然の事のように思えて驚いてしまったけれど、暇で暇で、落ち着かないときに余計落ち着かないのも事実だったので、私は笑顔を浮かべた。


「ありがとう……。無茶はしないでね」


それから、読んだことのある本の名前を告げ、それ以外のものを、と言うと、レイナは嬉しそうにまた部屋から出ていった。


まだ読んだことのない本を思い浮かべ、心が浮き立つのを感じる。ラディ殿下は許可をくれるだろうか。もしかしたら、くれないかもしれない。そんなことを考えて、心が沈む。


自分の感情と言うものをきちんととらえ始めて日が浅い私は、そんな些細な心の動きですら、新鮮で。


翌日の話次第ではもしかしたら死んでしまうということを、全く気付きもせず、ただ、今ある幸せをかみしめていた。

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