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誤字を修正しました。
「死にたくても死ねない、覚悟……」
いったい何を言われているのか、何を言われるのか、さっぱりわからない。
「考える時間をやろう。明日、また来る」
考え込む私を見て、ラディ殿下はそういった。座ったときと同じように静かに席を立つと、出入口の布をたくし上げて出て行ってしまった。
ラディ殿下と入れ替わるようにして、レイナとヴァルツが入ってくる。ヴァルツは少し表情を暗くし、レイナは心配そうな表情だった。彼らは訪問してきたラディ殿下に半ば追い出されるようにして、部屋の外で待機していたのだった。風通しの良いこの部屋での会話は、部屋の外からでもよく聞こえていたのだろう。
「全く……、殿下にも困ったものです。行き成りあんな話を聞かされては、ティ様の負担になると申しましたのに、直接自分で話すと言ってきかないのですから……」
ヴァルツはそう言って私の体調を気遣い、レイナは私の心情を心配してくれた。
「本当ですわ!私には詳しいことはわかりませんが、ティ様にあんな風にお話しするなんて」
それぞれ心配している内容は違うけれど、どちらも私を思ってくれている。じんわりとした何かが沸き上がってくるのを感じた。
「ありがとう、二人とも」
そのじんわりした何かが顔に出ていたらしい。二人はほっと表情を緩ませて、笑顔を見せれくれた。
「ようやく、ティ様の笑顔が見れましたな」
「ティ様、お可愛らしいです!」
二人の言葉に、私は初めて笑っていることに気づいた。これが笑うということ。なんとなく新鮮で、またじんわりした何かを感じる。
「……、笑っている、なら、二人のおかげ……」
ありがとう、と呟くようになったのは、なぜか声がうまく出なかったから。それを聞いて、二人の笑顔が少しだけ変わった。より優しく、温かくなったような気がする。それが嬉しくて、私の笑顔も深まった。
ラディ殿下の言葉は不安だらけだけれど、この二人がいるなら人と話すことが怖いとは思わなかった。