プロローグ
かつて人類は滅びた。
恒久の平和は終ぞ訪れることはなかった。
誰もが戦いたくないと願った。
死にたくないと叫んだ。
仲間の死を悼み、戦争の恐ろしさを訴え、人を殺すことは悪だと謳った。
それなのに、まるでそうあることが遺伝子レベルでプログラムされているかのように、愚かな人類は戦争を繰り返した。
平和を守るために。
誰かを守るために。
何度も何度も何度も何度も束の間の平和と戦争を繰り返した。
そうして──第12次世界大戦まで懲りずに戦い続けてきた人間達は、しかしその戦争の果てに、ついに生きることをやめた。
諦めたのではない。
このままの人類では、永遠に『恒久の平和』が訪れないと悟り、自ら滅びることを選んだのだ。
そして新しい世界を作った。
今度こそ戦争が起こらない世界であれと。
今から約700年前の話である。
人間は馬鹿ではないが、愚かだった。
人間は一度滅びた程度では生き方を変えることはできない。
きみはそれを知ってどう思うだろうか。
やっぱりね、と目尻を下げて困ったように笑うのだろう。
ぼくには無理だ。
きみの犠牲の上にできたこの世界が、それでもなお同じ間違いを犯そうとすることに、
心から絶望している。