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気持ち悪い笑い声

危険な実験の後、体中を襲う痛みに耐えながら泥水のように眠る男の話です。

「マイカ、良いことを教えてあげよう。鼻血、すなわち鼻出血は鼻の穴の最前線、キーゼルバッハ部位という所で発症するんだ」

 母さん、それのどこが良いことなんだい。鼻血を出しながら鼻血の話なんてしても面白くないよ。

「私はそのことを初めて知った時、とても感激したものだよ。人間は鼻の中にバッハがいるのかと、鼻の中には偉大な音楽家が潜んでいるのかと」

 母さん、鼻のバッハと音楽のバッハは多分別人だよ。

「さすが我が息子、察しが良いね。その通り、バッハはバッハでもバッハ違いだ」

 バッハがゲシュタルト崩壊しそうだよ、母さん。

「耳鼻科医のバッハと音楽家のバッハは同一人物ではない。全くの別人だ、名前も違う。だけどね、この二人には共通点がある。二人とも同じドイツ出身なんだよ」

 そうなんだ、確かに国が一緒なら名前も似るかもね。それで?

「ん?」

 それで何を言いたいんだい、母さん。

「私は別に何も言いたかないよ」

 嘘だね、母さんは何もないのに俺に話しかけたりなんかしない。

「やれやれ、君の中での私の母親としての安心性は地面より下にあるらしい。ふむ、そうだね、この会話から私が伝えたかったことは、私は音楽家より耳鼻科医の方が好きだってことだね。それを君に伝えたかったんだ」

 そうなんだ、母さん、教えてくれてありがとう。ほら、鼻血を拭いて。

「君は勘違いをしている」

 え?

「血を流しているのは私ではなくて、君だよ」

 本当だ、真っ赤だよ、母さん拭いてよ。生ぬるいよ、べたべたするよ。

「本当だね、真っ赤だね、林檎飴みたいだよ。あは、あはあは、あはははははははははははははははは」

 笑わないで、そんな顔をしないで母さん。気持ち悪いよ。

「さあマイカよ、目を覚ますんだ。君のルイーゼが待っている」


息を吐いて目を覚ます。額に汗が浮かんでいるのが分かった。ああ、くそ、ひどい夢だった。俺は人差し指を見る。傷がなかった。

もう少しで物語に華やかさがくわえられそうです。

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