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素晴らしきささやかな出血

少々生々しい表現があります、ご注意ください。

生まれて初めて鼻血を出した。血液というものはどうしてこう、嫌悪感を抱かずにはいられない雰囲気を持っているのか。体が生きていくうえで必要不可欠な媒体なのだから、もっと神秘的な見た目をしてもよいと思うのだが。たとえば日光に当てると虹色に光るとか。そんなくだらないことを赤い血液に、そして正体不明の液体に全身を包まれながら空想していた。分厚いガラスの向こう側に、白衣を着た頭のよさそうな人影が妙に鮮明に見える。

「もっと同調率を上げられないのか」

 白衣群の中で一番威張っていそうなのが、不満そうに同意を求める。

「出力を上げてみます」

 水の中にいるのにどうして音が聞こえるのか、どこかにスピーカーでもあるのか。顔の半分を圧迫するシュノーケルに似た器具をぶくぶくと鳴らして不思議がっていると、体中に電流が走った。脳を嫌悪感が襲う。ああ、ちくしょう、なんだよこれ。これのどこが安全な検査だ、どう考えても危険しかない。

「もっと上げられないのか」

「これ以上は危険です」

 ほら、思いっきり危険って言ってるし。あの出っ歯野郎、適当なことばかりぬかしやがって。鼻血は止まらない。もはや視界は薄い赤色のベールに包まれていた。目が痛い、もしかしたら眼球が充血しているのかもしれない。指先がびくびくと脈打っている。見ると人差し指の傷が開いていた。この間うっかり紙で切ってしまったところだ。

「いけません、このままだと深層記憶領域にまで達してしまいます」

「くそ、やむおえない。実験は中止だ」

 嗚呼、俺はどうして見知らぬ世界で、謎の人体検査もとい実験を受けているのか。これがもし地獄の罰だとしたら、神様もなかなか趣味が悪い。

私個人の意見として、鼻血は数ある出血の種類の中でも、一番軽視されやすい、しかし油断ならざる出血だと思っています。

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