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幕間 ウサミさんの優雅な朝(歌のお姉さん)

娘の成長は、男に様々な感情を起こさせる。

 ウサミさんはふるふると震える卵焼きを、温かい紅茶でごくりと流し込みました。テレビでは相変わらず、ニュースキャスターが堅苦しい顔を作っています。先ほどから、同じ事柄を繰り返し伝えていました。

[転生者ヤエヤママイカの、新たなる情報がバルエイス魔法科学研究所より表明されました。研究所所長モティマ博士による関係者会見を、ただいま中継しております]

 キャスターの清潔な顔が消え、それと入れ替わりに前歯の大きい、軟弱そうな男が額に汗を浮かべている映像が流れました。

[転生者ヤエヤママイカの身体魔力についてですが・・・]

 男が前歯を鳴らして言葉を言い終えるより先に、画面が暗転しました。かと思うと耳をたたくような軽やかな音楽と、女性のものすごく腹に力のこもった歌声が、ファンシーな画面とともに流れてきました。何時の間にか起きていたウサミさんの娘さんが、テレビのチャンネルを変えたのでした。

「こら、お父さんが見ている途中だったでしょ」

 奥さんが娘さんを叱ります。娘さんはまだ寝ぼけている顔を、むすっと膨らませました。

「だって、ヒメカちゃんのおうた、きかないといけないもん!」

「我儘言うんじゃありません!朝のチャンネル権は、お父さんが第一優先されるんですからね」

 いつの間にそんなルールができたのか、ウサミさんはとても疑問に思いました。ですが何も言わずに朝食を食べ終え、席を立ちました。お仕事に行くために、身支度をする必要があります。

 ウサミさんは、何となく娘さんの小さな頭を撫でました。娘さんは少し驚いて、不思議そうな顔をします。

「おとうさん、どうしたの?」

「うん?何でもないよ。今日も可愛いね」

「えー?なにー?きもちわるーい!」

 娘さんはぎゅっと顔をしかめました。

 おお早くも反抗期か。ウサミさんは感慨に耽りました。

「こら、お父さんにそんな酷いこと言っちゃいけません」

 奥さんがフォローを入れようとします。

「たとえ本当のことでも、そのまま言ってはいけません」

 そして見事に失敗しました。ウサミさんは、予想外に自分が傷ついたことに驚きました。

「言うんだったら、お菓子のクリームみたいにふんわりと包み隠しなさい」

 幼い子供に何を高度なテクニックを求めているのでしょうか。

「はーい、わかった」

 しかし娘さんは、ウサミさんよりはるかに速く、奥さんのアドバイスを理解してしまいました。

 ウサミさんは何も言わずに、洗面台へひたひたと向かいます。

 ああそういえば、娘さんも最近、物音をたてることなく起きるようになりました、まるで奥さんみたいです。

 ああ嬉しいですね、子供の成長はとても感動的ですね。

 ああでも少し怖ですね、あの純粋な子供が、この先どんどん奥さんみたいな油断ならない女性に成長するなんて。

「そうなったら、ボクの安息の地は完全に無くなるな」

 あるいは、最初からそんなものはこの世界には存在していない、のかもしれません。

 洗面台にたどり着いたウサミさんは、そんなことを考えながら蛇口をひねります。

ほかのキャラクターのバックグラウンドも、もっと真剣に考えればよかったと後悔しています。

今からでも、なんとか取り戻そうと必死になっています

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